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第87話 人選

「ふむ、誰が良いのかね? 品評会というくらいだ。全員ではないのだろう?」


 一通り吟味した後、エドガーがカナリアに語りかける。


「一切そう言った感情は見られませんでしたけど、本来それは女性に対して大変失礼なことですよ。仮にも貴族たるものがやるべきではありません」


 そんなエドガーに対し、アンゼリカさんが注意する。似たようなことをカナリアもやっていた訳だが、そちらに関してはどこか諦めている節がある。


「あら、貴族なんて皆スケベな親父よ? あなたは少し貴族に願望を持ち過ぎじゃなぁい?」

「だとすれば真の貴族と呼べる人間が減っているということですね。嘆かわしい事です」


 カナリアの言い分もかなり偏見が入っているように思うが、貴族相手に商売をしている人間だ。全くの嘘でもないのだろう。

 だが、アンゼリカさんの方も毅然とした態度でバッサリとそれを切り捨てる。


「これは手厳しいね。失礼した。以後気をつけるとしよう」


 エドガーもそんなアンゼリカにあっさりと謝罪する。その後、カナリアの方へ再び向き直ると、先程の話の続きを促す。


「話を戻そう。それで、誰に参加して欲しいのかね?」

「そうねぇ、皆魅力的だから困っちゃうわね」


 カナリアはそう言いながら、その場の全員に視線を向けていく。はなから選ばれるとは思っていない、姉さんとリナリア、どこか期待している様子のアンゼリカさん、そして若干引いているその他の面々と、その反応は様々である。


 今の姉さんなら選ばれるなら可能性は十分にあると思うのだが、いや今の姉さんだと子供向けになりかねないか。


「じゃあリナリアとそっちの二人のどちらかにお願いしようかしら」


 そう言ってカナリアはタイムとルミナの二人を指差す。


「待て! なぜ私なのだ! 他にも大勢いるではないか」

「あら、嫌なのかしら?」

「嫌に決まっている。以前だって私は嫌だったのだ。それをエドガー様がどうしてもと言うから仕方なく」


 言い合っている二人を横目にしつつ、俺はエドガーに問いかける。


「あの二人、何かあったのか?」

「彼女の父親から社交界デビューさせて欲しいと頼まれてね。その際にカナリアに協力して貰ったのだよ」


 その話が本当なら、むしろリナリアとしてはカナリアに恩があるはずだ。意外に律儀なところのあるあいつにしては珍しいことである。


「うまく伝わってないようだが」

「その様だ。まぁ無理も無いことだね。なにせ騙し討をしたのだから」

「なるほど、それなら仕方ないな」


 エドガーのことだ、相当ひどい騙し討をしたんだろう。


「それで、そっちはどっちが出るんだ?」

「ルミナが」

「タイムさんが」


 俺の問に、二人が互いの名前を即答する。一瞬の間隙の後、互いの顔を見合わせた。


「あなた先程衣装が欲しいと言ったではありませんか」

「見世物になるのは嫌なんです。ルミナこそ普段からエセ宗教の教祖様やってるんだから良いじゃないですか」

「あなた言ってはならないことを言ってしまいましたね!」


 白熱し始める二人を俺はつまみ上げる。そんな二人を見てカナリアが、


「何なら両方でも構わないわよ」

「だそうだ。決まりだな」


 すると、二人は即座に腕輪に引っ込んでいった。普段ミントに付き添っているルミナは初めてのことである。


『あなた、中をこんなに散らかして!』


 などと頭に響いてくる二人の口喧嘩に俺は頭を抱えるのだった。



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