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第81話 商会へ

 俺達は屋敷を出るとエドガーに案内されるまま、衣装を誂えるために商会へと出向く。先をゆくエドガーは何やらやたらと荷物を抱えている。


「ところで、お城に見合う身形ってどんなのですかね?」

「さてな、パーティードレスとかじゃないか?」

「馬鹿も休み休み言い給え。パーティードレスと言うのはパーティーの際に着るからパーティードレスというのだよ。君たちに誂えるのは式典用のものだ」


 エドガーはそう言ってくるが、正直俺にはドレス自体がピンとこない。姉さんに視線を送るが、姉さんも首をかしげるばかりだ。


「ソルト君、聞く相手が悪いよ……」


 俺が姉さんに視線で問いかけたのを察したミントが、そう呟いた。


「式典用……そうですよね、でしたら私必要ありません」

「君は一体何を期待していたのだね……」


 式典用と聞いたアンゼリカさんが残念そうに肩を落とす。そんなアンゼリカさんに対し、エドガーが呆れ果てている。


「ドレスって今から作って間に合うんですか? いくら準備が必要と言ったってそう長くはかけられませんよね?」

「すでにあるものを仕立て直すだけだ。そう大した時間はかからんよ」


 リユゼルの問いにエドガーが答える。


 仕立て直すってことは、もうあるやつを直すんだよな? だとすれば、もしかしてエドガーが持っている荷物は全部その衣装だろうか。


「誂えるというからてっきり新しく仕立てるのかと思っていましたけれど、そうではありませんのね」

「当然だ、時間もなければ私にもそれほど余裕があるわけでもないからね。それにどの道君たち二人のものは用意する気はないがね」

「別に構いませんわ。元々神々とまみえる為の衣装です。王の前にたったとしても恥ずべきことではありませんもの」


 祭司の様な衣装をはためかせながら、ルミナが答える。一方タイムの方は村娘が着ているような衣装である。何やら裏切られたと言うような表情を浮かべていた。


「そんな! 私はどうすれば!」

「腕輪にでも入っていたまえ。そもそも君たち二人が姿を見せている必要はないのだよ。召喚されたのは人間の面々だけだからね」

「話を聞きたいと言われるかもしれないじゃないですか!」

「ルミナ君一人で十分だね」

「酷い! ソルトさん! なにか言ってやってください」

「俺も同意見だが?」


 正直な所、タイムが表に出ていると余計な事を言いかねない。不必要に腹の中を探られるくらいなら腕輪の中で大人しくしてくれていたほうがマシだ。


「フェンネルさん!」

「ほら、そこの屋台で飴買ってやるから大人しくしてな」

「わーい、私あの猫のやつが良いです」


 姉さんの提案に軽々に手のひらを返すタイムを見て、ルミナが若干引いている。


「……あの子、あれで良いんですの?」

「あれ、お前の同類だぜ」

「止めてくださいまし!」


 俺の軽口に対し、心底嫌そうにルミナが答えた。

 そうこうしているうちに、俺達はエドガーに案内され、目的の商会へと辿り着いた。

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