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第80話 セイバリー家

 エドガーに案内されて辿り着いたそこは、どう見ても宿と言うより一軒の屋敷だった。贅の限りを尽くしたと言うものではないが、俺達にしてみれば十分すぎるものだ。

 ただ、疑問があるとすれば、宿の看板が出ているわけでもなく、どう見ても誰かの家としか思えない点だろう。


「……宿? いや、宿じゃないよな?」

「ここはエドガー様の邸宅では?」

「正しくはセイバリー家の所有している屋敷だね。なに、気兼ねすることはない。家のものは誰も逗留していないからね」


 それにしては手入れが行き届いている。使いもしない家を所有しているばかりか、細微に至るまで管理を行き届かせているなど無駄ではないだろうか。


「男爵ってのはそんなに金持ってないはずだろ? 何でそんな無駄なもの持ってるんだよ」

「その昔、私の祖先が陛下より下賜されたものだそうでね。引き払うわけにも行かないのだよ。せっかく所有しているのだから機会があれば使用すべきだからね」

「そりゃそうだが」


 気持ちはわかるが、あまり豪華な屋敷に泊まるというのはいささか落ち着かない。俺がそんな事を考えていると、


「宜しいじゃありませんか。各地から王都へ避難している方が大勢いるのでしょう? 宿を利用せずに済むのであれば、それに越したことはありませんわ」


 などと、ルミナが言ってくる。


「確かにね。今更行っても空いてないかもしれないね」

「そう言うことですわ」


 姉さんが同意するのを見て、ルミナが満足そうにうなずいた。


「さて、話が終わったのであれば入りたまえ」


 そう言って、エドガーは俺達を屋敷の中へと案内する。


 屋敷の中は、パニカムにあるギルドマスターの部屋と異なり、様々な装飾が施されていた。


「規模は大きくありませんけど、ソーワート家の屋敷より優美な装飾が施されていますね」


 アンゼリカさんが感嘆の声を漏らしている。ミントやリユゼルも内装を見て目を輝かせていた。


「なんだろうな、とても落ち着かないんだが」

「私達は物置辺りで十分かもしれませんね」

「申し訳ないが、そんなことはさせるつもりはない。仮にも客人をそんな場所へ泊めたとなれば我が家の家名に泥を塗る事になるからね」


 俺とタイムの呟きに、エドガーが呆れたように反応してくる。


「さて、それでは部屋へ案内する。そこで荷物を置いたらすぐに出かけるとしよう」


 エドガーはそう言うと、俺達を部屋へと案内していく。さすがに部屋数が足りず、全員一人部屋というわけにはいかないようで、姉さんとミント、そしてアンゼリカとリユゼルがそれぞれ同室だ。


 俺達は通された部屋に荷物を置くと、すぐにセイバリー家を後にした。

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