第74話 召喚状
「その格好、見送りってわけじゃないな?」
俺はリユゼルを一瞥した後、すぐさまアンゼリカの方へ視線を送る。
「はめましたね?」
「本人が本当に望むのであれば、私の立場としては拒否するわけには行きませんから」
この人しれっと言いやがって。俺達が拒否できないとでも思ってるんだろうか。
事情が事情だけに断りづらいのは俺にだって判るが、事は命に関わる問題だ。いくら俺でもおいそれと受け入れるわけがない。
「どうしても駄目ですか?」
「駄目だ。気持ちはわかるが、素人が思い立っていきなり出来るような仕事じゃねぇよ」
すがりつくようなリユゼルに、俺は頭を振る。
「そうは言いますけれど、私は受け入れたほうが良いと思いますわよ」
「あたしもルミナと同意見だね」
ルミナが同意したかと思えば、姉さんもそれに続く。
「今回はただパニカムに帰るだけだからね。ここで放り出して知らない所で死なれたほうが寝覚めが悪いさね」
「いや、忘れてるようだが、同行者が居ないと帰れないんだからな?」
「私も二人に賛成だ。リユゼルも当事者の一人なのだ。ならば一緒にいるべきだ」
リナリアが言っているのは、王都への召喚の件でのことだろう。まだ未定なのだが、こいつの中では決定事項らしい。
「私もお姉ちゃんに賛成かな。ソルト君だっていつまでもアカンサスにいられないよね?」
「いや、それはそうなんだが……」
どうやら反対なのは俺だけらしい。
俺がどうした物かと頭を抱えていると、
「その話、悩む必要はない」
ギルドの入口から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「……この声は」
ギルドの入り口からエドガーが姿を現した。
「……なんでここにいやがる」
「いつまでも戻って来ないから何をしているのかと思えば、何やらまた問題を起こしたそうだね?」
エドガーが呆れたような口調で言ってきた。
こっちはその依頼で散々な目にあったというのに、言ってくれる。
リユゼルがミントへ「誰?」などと耳打ちしているようだが、ミントの方も首を横に振っていた。そんな二人へ姉さんが説明している。
「それでエドガーさん、今日はどの様なご用件ですか?」
そのまま俺達のところへやって来たエドガーに、アンゼリカさんが問いかける。エドガーはその場にいた面々を見回すと、
「一つ尋ねごとがあったのだが、問題ない。既に事は済んだ」
そう端的に答えた。
「揃っているばかりか、全員旅支度が済んでいる。これは僥倖と言うべきだろうね」
「一人で話を進めるんじゃないよ。一体何の話さね」
「本当にわからないかね?」
エドガーはそう言いながら、一通の書状を取り出した。その瞬間、続きを聞かずとも、手に取るように判ってしまう。
「お待ちかねの王都からの召喚状だ」
「あんたが持ってくるのは、だいたい俺にとっての厄介事だ」
「それはお互い様だね」
そう愚痴る俺に対し、エドガーも嫌そうな顔を浮かべるのだった。




