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第70話 幕間 フェンネルの課題 前編

 ある日の朝のこと、姉さんが深刻な顔で食堂に座っていた。

 テーブルの上にはオレガノから託された重剣が置かれている。


「姉さん、重剣をじっと見てどうかしたのか?」


 俺は姉さんの傍へ行くと、声を掛けた。姉さんは俺の方へ振り向くと、


「ああ、ソルトか。これをどう思う」


 おもむろに立ち上がると、テーブルに置いていた重剣を背中に背負う。するとその切っ先が床へとぶつかった。姉さんは若干前かがみになり、僅かに重剣の切っ先を浮かせた。


「どうもこうも、すぐに別の武器を調達してこいって思うが」

「何を迷ってるのか分かりかねますね」


 その経緯は聞いたがどう考えても、今の姉さんがそれを扱うのは無理な話だ。


「やっぱり二人もそう思うかい」


 聞けば、アンゼリカさんにも相談したらしく、そちらからも同じことを言われたらしい。当然である。

 姉さんとしては、それが受け入れがたいそうで、どうにかしようとここ一週間奔走していたらしい。だが、そのための方法は未だ見つかっていないということだった。


「遺志を汲んでやりたいって気持ちは買うが、そりゃどう見ても無理だろう」

「あたしはそれをどうにかしてやりたいんだよ。託されたものを無碍に扱うのはあたしの心情が許さないさね」

「失礼とは思いましたが、話は聞かせてもらいました! つまり、背を高くしたいということですわね?」


 ミントとともにいつの間にかやってきたルミナが、話に割って入る。

 

「待て、今そんな話じゃなかったはずだ」

「でもあながち悪くはないんじゃないか? あの時のオレガノもフェンネルの軽さを指摘していたはずだ。戦い方をすぐに変えるのは難しい、装備で補えるならそれに越したことはない」


 そこへ更にリナリアが加わってくる。


「確かに、どっちつかずになっている気はしますわね。きっとタイムの力が解除された時のことを懸念されているのでしょうけれど」


 ルミナがすぐさまその結論に至った。こいつタイムの事となるとやたら鋭い気がする。


「つまり、軽くて丈夫で重たい装備があれば良いんですね」

「落ち着け、ルミナに指摘されて苛立ってんだろうけど、言ってることがメチャクチャだぞ」

「ぐぬぬ」

「ともかく、今は武器の話だろ? あれもこれも一度には出来ないからな。一つに絞るべきだ」


 どっちつかずになっている、姉さんの現状は問題だが、先立つものもない。

 

「そうだね、内も家計的にそんなに余裕があるわけじゃないし」

「ミントさんも装備を用意しなければなりませんしね」

「そう言えばそうだったね」

「あんた達、食べないんだったら、実際に見てきたらどうだい。いつまでもそうやって席を埋められてると迷惑だよ」


 フォトンに注意され、店内を見渡せば、いつの間にやら少しずつ混み合ってきていた。そう言えば、今朝はリユゼルの姿が見当たらない。今はフォトン一人で回せているようだが、もう少し混み合えば厳しいかもしれない。


「一先ず、話は後にしよう。世話になってる分はちゃんと返さないとな」


 俺達は忙しなく働くフォトンへ手伝いを申し出るのだった。

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