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第64話 平行線と嬉しい誤算

「あ、あの」


 弾き飛ばされた後、こちらへと戻ってくるタイムが気まずそうにしている。


「勘違いしているみたいだからはっきり言っておくぞ。あんな馬鹿な真似は二度とするな。俺にとってはそうでもない攻撃でも、お前にとっては致命傷になるんだってことをもっと自覚しろ。運命共同体って言うなら、お前は俺を見捨てでも生き残ろうってするくらいで丁度いいんだよ」

「……ごめんなさい」

「まぁ本当に見捨てたら俺はいつまでもその事でグチグチ言うがな」

「理不尽!」


 俺は冗談めかして笑う。タイムのやつも少し緊張が解けたようで、まだ弱々しいが笑みを浮かべている。


「あら、それだけですか?」

「不満か?」

「いえ、ご主人様がそれで良いのであれば、私からは何も申し上げることはございませんわ」


 ルミナがそう言いながら、周囲に結界を展開している。俺もタイムも魔力に関して余力は殆ど無い。それでも使えているんだから、もしかするとこいつは俺だけじゃなく、ミントちゃんとも共有しているのかもしれない。


「助かったよ。助けに来てくれたことには感謝してる。けど何で来た? 俺は避難しろと言ったつもりだったんだが?」

「待って! ごめんなさい。私がルミナに頼んだの」


 俺がルミナを問い詰めていると、ミントちゃんが割って入ってくる。


「……はぁ、またなんで」

「それは実際に見て頂いたほうが早いですわね。都合よく相手も弱っているようですし、あれを私達に譲ってくださいまし」


 今度はルミナのほうが質問に答えた。まるで子供が玩具をねだるように簡単に言ってのけるが、相手は魔物である。そうあっさりと譲るわけにも行かない。


「お前ね、そう言われてはいそうですかってわけにも行かないだろうが」

「まぁまぁ、そうお時間は取らせませんわ」


 ルミナは何やら確信があるようで、俺の言うことを取り合うつもりはないようだ。ミントちゃんへ視線を移す。どうやらこちらも意思は固いらしい。


 ……参ったな、どう説得したものか。


 戦ってる真っ最中に腰を据えて説得しろなんてのは、土台無理なのかもしれない。


「元々ご主人様とは相性が悪い相手なのです。ここは素直にお譲りくださいまし。それに……私と繋がってしまった以上、ミントさんに後方へ引き下がるなどという選択肢はございませんわ。ご主人様とてそれはおわかりでしょう?」


 確かに、ルミナが真価を発揮するのに、ミントちゃんの力が必要だというのなら、同行して貰ったほうがありがたい。


「ソルトさん! 何説得されそうになってるんですか! ミントさんは戦いに関しては素人ですよ?」

「そうだ、そうだったな。そもそも姉さんが許すはずがない」

「お姉ちゃんは関係ない! 私だって力になりたいの!」


 その言葉にミントちゃんが強く反発する。


「このままではいつまで経っても平行線ですわね。結界の方もそろそろ限界のようですし、実際にお見せしたほうが早いですわ。ミントさん、先程やった通りにやってくださいな」


 ルミナがミントちゃんに声を掛ける。それを受け、ミントちゃんが霧のいる方向へ向かって、掌を突き出した。


「《光よ》!」


 ミントちゃんがそう口にすると、その掌に魔法陣が現れ、そこから光弾が発生する。その光弾は霧の横を掠め、その後ろの壁を吹き飛ばす。


 まさしくそれは、世界にも一握りしか居ないと言われる、光の適性の持ち主の所業だ。


「実に嬉しい誤算でしたわ」


 ルミナはそう言って実ににこやかに笑っていた。

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