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第45話 市街地へ

「フェンネル、ここまでくればもう十分だろう。降ろしてくれないか」

「そうさね、この先は振り切るわけにも行かないだろうしね」


 あたし達が町の中央へとやってくるまでに、グールと何度か遭遇した。衛兵と思しきグールとも遭遇したのだが、武器を持っていなかったり、非番なのか、私服で徘徊しているような者がほとんどだった。

 こちらとしても、装備に余剰があるわけではない。その為、そんな者たちを正気に戻したところで、どの道戦力にはならないだろうと結論づけ、振り切ることにした。

 稀に武器をしっかりと身に付けたものもいたが、本物のグールと成り果ててしまっていた。

 

 そんなより好みをしてしまったせいで、町の中央入口までやって来たにもかかわらず、未だにソルト達に救援を出せていない。


「三人共無事だと良いんだが」


 あたしから降りながら、沈痛な面持ちでリナリアが呟いた。恐らくここへ来るまでの惨状を目の当たりにして、気が重くなっているのだろう。


「まぁソルトが付いてるんだ。何とかするさね」


 それが何の気休めにもならないと知りつつも、あたしは気休めを口にする。


「あの者を信じているのだな。今でこそ力を手に入れたようだが《(オーガ)の腰巾着》などと揶揄されていた人間だぞ? 何故そこまで信じられる」

「つまんない噂さね。大体元々あたしより強かったってのに、誰がそんな噂流したのかね」


 出会った当初はあいつはあたしより強かった。才能に恵まれないせいで伸び悩み、今はあたしが押すことのほうが多い。それでも瞬間的に全力を出し切れば、今でもあたしより強い。


 だからこそセインとエリオも何も言わなかったのだ。そうでなければ、あたしが等の昔に放り出していた。付き合いが長いからこそけじめを付けてやるのが、優しさってもんさね。


 まぁ結局の所、セインとエリオにケジメを付けられちまったわけだけどね。


 あたしは内心で自嘲する。眼の前のリナリアはまさかと言った様相だ。どうやらそれは信じがたいらしい。


「信じられないかい? あんたも北の洞窟で見ただろう? あんなふざけた魔法を隠し持ってるやつを弱いなんて言う方がどうかしてる」

「でもあれは今は使えないそうじゃないか」

「それは、条件が整えばまた使えるって事さね。あんたはあいつが自分の状態を逐一親切に教えてくれるとでも思ってるのかい? あたしがあいつでも状況に応じて嘘を織り交ぜるさね。っと、話はここまでだよ」


 見れば、前方から男が近づいてくる。どうやらグールではないようだ。その出で立ちから、市民ではなく冒険者だろう。

 あたし達は念の為、それぞれ武器を構える、


「君達は正気か?」


 戦闘態勢を解かないまま、こちらへと語りかけてくる。


「ああ、正気さね。今はどんな状況なんだい?」


 あたしが男に返事をすると、男は少々面を食らったような様子である。恐らくあたしをリナリアの被保護者だと思ったのだろう。気にはなるが今の体格なら無理からぬ事だ。


「あ、ああ、君達も既に知っていると思うが、突然眠りに落ちたかと思えば、次に目を覚ました時にはこのざまだ。今我々はこの街の冒険者総出で事にあたっているところだ。今わかっていることと言えば、強い衝撃を与えれば元に戻るものがいるという事くらいだ。だから君達もなるべく一撃で殺すような真似は避けて欲しい」

「どうやら一部は既に広まっているようだな」

「どう言うことだ? 何か知っているのか?」

「実は――」


 あたし達はアルカイドが話したルールを説明する。事情を聞くに連れ、男の表情が怒りに染まっていく。


「ネリネ様が……くそっ。事情はわかった。私は私でこの話を他の冒険者に伝えていく。君達はギルドへ向かうのだったな。そちらの方は宜しく頼む」


 男はそう言うと、また走り去っていった。


「私が言うのも何だが、あの男鵜呑みにし過ぎではないのか?」

「やることが変わるわけじゃないんだ。別に構いやしないよ。ほら、あたしらも急ぐよ」

「あ、ああ」


 あたし達も急いでギルドへと向かう。


 西側の街は、東側とは比べ物にならないほど、到るところで戦闘が起こっていた。

 住民を守るもの、果敢に攻め入るもの、その対応は様々だ。あたし達はそんな網の目を潜る様にギルドへと向かう。

 

 あたし達はようやくの事でギルドへと辿り着いた。冒険者ギルドの建物は、明らかな戦闘跡があり、ところどころ大きく破損している。そんなギルドから冒険者と思しき人間が、ひっきりなしに出入りしていた。


 あたし達も、その流れに乗って冒険者ギルドの中へと入る。中は惨憺たる物で、ひと目でギルドの中で戦闘が起こったのだと見て取れた。

 そんな酷い有様のギルド内に、傷を負った住人や、冒険者がそこかしこに担ぎ込まれている。


「ああ、あなた達ご無事だったんですね」


 ギルドを見回していた、そんなあたし達に声を掛ける者がいた。それは初日にギルドの受付で会った、アンゼリカだった。

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