表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/162

第39話 状況確認

「……どうやら本当に退いたようだな」


 周囲を見回し、アルカイドが本当にいなくなったのを確認する。眼の前の危機が消え去ったというのに、さらなる厄介事が舞い込んでくるというのは、どうなんだろうか。

 状況は未だ最悪だ。被害が拡大していることを考えると、悪化していると言っても良い。


 リナリアが悔しさから、歯噛みしている。

 気持ちは十二分に理解できる。


「さて、これからどうするかだね」

「まずはやるべき事を整理しようか。第一に俺達しか知らないルールの周知。これは問題ないだろ?」


 俺の問いに、姉さんもリナリアも頷いた。

 これは一刻も早くやっておく必要がある。これが遅れれば遅れるだけ、助けられた人間が死ぬことになる。


「第二に戦力の確保だ。可能なら一般市民より衛兵や冒険者。要は戦えるやつを優先的に攻める」

「理屈はわかるつもりだ。だが民より率先して助かろうなど、心情的には賛同できない」

「そんな曇った心情は今すぐに捨てろ。疑似グールは攻撃されないって言ってただろ。戦えない人間はむしろ疑似グールでいたほうが安全なんだよ。こっちが攻撃しない限りな」


 むしろ正気に戻った人間が厄介だ。どうしたって戦えない人間を守る戦力がいる。下手にその連中が戦闘に入れば、どちらかが死ぬことになるだろう。戦えない人間は敵側でいてくれたほうが遥かにマシだ。


「第三にこの屋敷の制圧だ」

「待ちな、それはどう言うことだい?」

「タイムがあの魔法陣と同じ物をこの屋敷で感じたと言っているんだ。もしかしたらあの魔法陣がまだ残ってる可能性がある。ならそれは潰しておきたい」

「あーでも気のせいかもしれませんし……」


 タイムが腕輪から出てきて、自信がなさそうに呟いた。


「気のせいだろうが調べないわけにはいかないんだよ。それに、可能性は薄いが、それで街が救われるかも知れないしな」


 可能性はないと言っても良い。あの狂った男がそんな抜け道を用意しているとは思えない。でもおかわりは用意していても不思議じゃない。上げて落とすのがいかにも好きそうだった。


「なるほど、それは確かに潰しておきたいね。じゃあまずは館の制圧からするとするかね」

「いや、姉さんとリナリアは、二人ですぐに冒険者ギルドへ向かってくれないか」

「二手に分かれるっていうのかい? 本気……のようだね」

「正直、俺だって普通なら二手に分かれるなんて大反対だ。だがあいにく時間がない。ほんとここのところこんなのばっかりで嫌になるが、時間がないんだ。連絡が遅れればその分助かるやつが半分以下にだってなりかねない」

「……そうだな。確かにその通りだ」

「ここからギルドまで近けりゃ姉さん一人で行ってもらってたさ。でもこっからだと結構な距離だ。出来れば連絡は確実にしておきたい。二人は外に出たら衛兵を正気に戻してこっちへよこしてくれよ」


 最悪この屋敷は制圧しなくても、魔法陣の有無さえ確認できればそれでいいのだ。


「あんたが残るのはタイムじゃないとわからないからかい?」

「それが第一。第二に二人は魔法が使えないからだ。複数の相手に守りながらは戦えないだろ?」


 俺は階下で眠る、ミントちゃんとリユルゼを指さした。二人は未だ気を失ったままだ。もしこのまま目が覚めないようなら、目を覚ます方法も考えなければならない。俺の返答を聞き、姉さんは「そうだね」と同意する。リナリアも同意はしたようだが、どこか悔しそうだった。


「わかった。もしソーワート卿を見つけたら保護して欲しい」

「ああ、そうか、そっちもいたんだったな」


 まずい、色々なことが起こりすぎて、すっぽり抜け落ちていた。確かに侯爵の救出は外せない。


「なんとかする……何とかするさ」

「……本当だろうな。頼んだぞ?」

「それじゃあ行動開始さね」


 姉さんがそういった時、階下の二人が目を覚まし、自らの頭を揺さぶっている。それを見た姉さんが慌ててミントちゃんの方へと駆け寄った。姉さんが声をかけているが、まだ意識がはっきりしていないようで、反応が薄い。

 リナリアの方はすぐにでも駆け出したいのだろう。二人の元は通り過ぎ、部屋の入口で姉さんが動き出すのを待っている。


「姉さん、悪いが行ってくれ、二人には説明しておくよ」


 俺も二人の傍へ行き、その傍らの姉さんに声を掛ける。


「……わかった。頼んだよ」


 そうして、姉さんはリナリアと共に部屋を飛び出していった。


「さてと、俺もやることをやらないとな」


 まだ意識の戻りきらない二人を見ながら、俺はそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ