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第152話 第二王子の申し出

 まったく、なんでこんな事になったんだ? 


 ――はじめまして、イルタリア・センティッドと申します。一応この国の第二王子に当たります。どうぞお見知り置きを。


 などと名乗りを上げてタリア殿下がここへきたのが数分前。タイムはいつものごとく腕輪の中である。あいつのとりあえず隠れる習性を、そのうち矯正してやりたい。


「それでタリア殿下、いったい何の用なんです?」

「用と言うほどでもないのですが、折角ですから一度お会いしておきたいと思いまして」

「なんでまた、俺程度の冒険者風情に会ったところで、なんの自慢にもなりませんよ」

「ご謙遜を。建国以来悩みの種である、ジルクニフ様とサリッサ様のお身内ともなれば、一目見たいと思う者は多いのですよ。それが王族ともなれば、その想いも一際強いのです」


 珍獣扱いじゃねぇか。ただまぁ、俺も相手側なら同じ反応をしたかもしれない。


『ソルトさん、ソルトさん』

『どうした?』

『ジルクニフさんはハイエルフか何かなんですか?』

『前も魔王だとか疑ってたな。言っておくが正真正銘の人間だよ。婆さん見てもわかるだろ? 魔導を極めれば長生きするくらいわけないらしいぞ』


 俺にできる気はしないが、爺ほどになれば造作もないのだろう。実際、爺程ではないにせよ、数百年生きていると言う人間は稀にだが存在する。これに関しては爺だけが特殊と言ったわけではない。


『それにしても建国からずっと悩みの種で居続けるって凄いですよね。すっかり疫病神扱いじゃないですか』


 それは否定しない。幼い頃の失敗談を網羅していると言う点だけ見ても、厄介なことこの上ないはずである。ただ、それでも関係を続けていたようだから、相応に見返りもあったのだろう。


「それで実際目にした感想はいかがですか」

「失礼ですけど、思っていたより普通と言ったところでしょうか」


 それを聞いて特に怒りが湧いてくるようなことはもちろんない。と言うか、爺や婆さんと比較されて化け物呼ばわりされる人間をむしろ見てみたいくらいだ。


「ご期待に添えず申し訳ないですね。それでご用件はそれだけですか?」

「いえ実はもう一つ、これは私的な事なので少し心苦しいのですが」


 タリア殿下の顔が少し紅潮している。その上、何かを言いにくそうにこちらの様子を窺っていた。


『思い出しました。高貴な方々には、衆道と言う趣味に目覚められる方がいると聞いたことがあります』

『うるさいよ。この歳でそんな趣味に目覚められてたまるか。お前はそんなことよりもっと別なことを思い出せよ』


 それに仮にそうであったとしても、今の話の流れで俺に対してのものではないことは明らかだ。


「なんでもあなたはバーネット教の聖母とパーティーを組んでおられたとか」


 ああなるほど、そう言うことか。まさかエリオが目当てだったとは。


 そこそこ人気があるのは知っていたが、まさか王都にまでその名前が轟いているとは思わなかった。その上王子様がとなると完全に予想外である。

 ただ、エリオが目当てとなると、今のあいつの現状は言い出しにくい。


「ああ、ご心配なく別にどうこうしようとか、そう言った事はありません。僕はそう言ったことが許される立場にありませんから」


 確かにその通りではある。王子という立場を嵩にきて、そんなことをしてしまっては許されることではない。いかに権力を使って醜聞をもみ消したところで、嗅ぎつけるものは必ずいる。みすみす弱みを握らせてしまうことになるだろう。


 確かに正しい、正しいんだが……この歳でこんな考えができるもんかね。どうも胡散臭い。


 そんなことを考えていた俺は、頭を振って思い直す。こんな年端もいかない子供をきな臭く感じてしまうのは、最近の状況に少し毒されすぎかもしれない。


「あなたにお願いしたいのは僕と彼女の仲介です。実は今度の品評会に彼女を招いていまして、その時に僕を彼女に紹介して欲しいのです」


 あいつの状況を知っていながら王都へ来るよう手を回したのか。案外権力を満喫しているようで安心する。ただ、好かれるのは諦めたほうがいいんじゃないだろうか。


 まぁいい、あいつの問題はあいつに丸投げしよう。


「ええ、構いませんよ」


 俺はタリア殿下の申し出を快諾することにした。

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