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第126話 証明

「確かにそのとおりです。ですが残念ながら自分には全く心当たりがございません。もしかすると父の知人なのかも知れませんが、生憎自分はそちらも存じません」

「ジルクニフ殿の客人の中にはいなかっただろうか?」

「自分の知る限り、父を訪ねてきたことがあるのはサリッサくらいな物です。お聞きのことかとは思いますが、父は俗世を嫌っておりましたので」


 トリプトの質問に、俺は淡々と答えていく。トリプトは時折こちらを探るような視線を向けてくる。俺はそれを正面から受け止めた。

 それにしても、名前が出ただけで周囲にどよめきが起こるというのはいかがなものか。爺さんでもこうはならなかったのに、婆さんはこの王都で何をやらかしているんだ。


「もしかすると、サリッサなら知っているかもしれませんね」


 俺は考え込んでいるトリプトにそう言葉を続けた。「サリッサ殿から……いや無理だ」などという呟きが周囲から聞こえてくる。それは目の前で注目を集めるトリプトも同様のようで、難しい表情を浮かべていた。

 

「わかった。そちらは検討しておこう」


 しばらく黙り込んだ後、トリプトがそのように答えてきた。情報を得ることと、婆さんをここに招き入れることを秤にかけたのだろう。何しろこの件に関して俺は本当に知らない、この件でどうこうすると言うのは無理筋だ。この場に陛下とロウレルがいる以上どうあがいた所で婆さんに連絡が行く。よほど正当性がない限り、婆さんを跳ね除けられはすまい。

 そう考えると俺を軟禁しようなんて言うのはかなり難しいんじゃないか? ルミナにはそれを講じる手段でもあるのだろうか。


「では次に、そちらの使い魔の件について聞かせて貰おう」

「私達ですか!?」


 ルミナを問いただそうと考えた矢先、トリプトが次の質問を投げかけてくる。突然自分が話題に上がり、タイムが驚いて声を上げた。ルミナの方はそれは予想の範疇らしく、特に驚いた素振りはない。


「それらはそれぞれ事件の現場で現れたと聞いている。これは事実だろうか」


 そのトリプトの問に俺は同意する。


「それらは共にジルクニフ殿が生み出したものと聞いているが、これに間違いはないだろうか」

「ええ、その通りです」

「ではその証拠を見せて貰いたい。そう答えたということはそれを示すものが存在しているはずだ」

「お待ち下さい。それと本件とは関係がないはずです」


 エドガーのやつが慌てて口を挟む。だが、


「まさかエドガー卿、本気で言っているわけではあるまい。共に事件の現場にて出現したものに何の確証もなく味方と信じる方がどうかしている。かの者たちの奸計と疑うべきではないかね」


 ルミナはともかく、タイムのやつが俺から離れられない事も知っているわけか。あの手この手と良く思いつくものだと感心してしまう。

 証拠、証拠か……。


 この宰相を黙らせることができる証拠などなにかあっただろうか。俺は自分の所持品の中で思い当たるものがないか考えを巡らせるのだった。

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