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第116話 キョウチョウ

「そうかい、まぁ詳しく聞くのはやめておくよ。彼はいろいろ曰くのある人間だ。君にとってそれが良い話とは思えないしね」


 ロウレルがこちらを慮ってくれているのが伝わってくる。だが、その他の面々は気になっているようで、聞き出したいと言った気配がひしひしと伝わってきた。例外はエドガーくらいなものだろうか。

 あいつだけは薄っすらと気づいているような気さえする。


「ソルトさんのお話はともかく、陛下はそのお話を受け入れるつもりなのですか? 今は例え泥をすすることになっても生き延びるべきではないのですか?」


 アンゼリカさんの提案にロウレルは瞳を閉じ、静かに首を横に振る。そして、重々しく口を開いた。


「今すぐにでもこの国は一つに纏まる必要がある。昨今のこの国の情勢は異常だ。君達も知っての通り裏で糸を引く存在も見え隠れしている。君なら知っているだろうか。異常なのはこの国だけじゃない。隣国のマドリカリアとイベリスの間には緊張が走っている。西の果て、ルピナス連合国に至っては……内乱の真っ只中だ。しかも全てが共倒れしそうなほど均衡が取れた状態でね」


 俺達のいるセンティッド王国は、この大陸――アルスカリア大陸の東の端に位置している。そして北のマドリカリア、南のイベリスを間に挟み、その向こうにルピナス連合国が存在する。

 だが、イベリスとの国境には名のしれた冒険者でもなければ踏破出来ないような山脈が広がっている為、実質面しているのはマドリカリアだけと言っていい。

 もしこの国からイベリスへ直接向かおうとすれば、船を使うしか無いだろう。

 だからこそ、南のアカンサスが要所の一つであったのだが、先の一件で深刻な被害を受けてしまっている。


 この場で初めてそれを耳にした人間は、誰しもが息をのみ、絶句した。


「だからこそ、まずは国を纏めなければいけない。それに、これはチャンスでもある。命を賭ける価値のあるほどのね。既に万策尽きかけたこちら側にとっては全てをひっくり返せるかもしれないんだ」


 その言葉には強い意志が感じられる。ロウレルとてそれがどれほどか細い希望であるのか理解しているのだろう。だが、それでも踏み込まなければいけない状況に置かれている。


 でもそれは王家の側だけではないはずだ。エドガーがいつジキスの庇護下に入ったのかは知らないが、少なくとも、これまで手を出しあぐねていたのは間違いない。

 そんな宰相側にとっても、ジキスに隙が生じている今こそ千載一遇の好機だろう。そして、次の機会を待てないのは向こうも同じだ。もっとも宰相が黒幕でなければ、の話だが。


「つまり、明日は協力できる訳ですね」

「そう言うことだ、明日何かことが起これば品評会は取り止めにするしかあるまい。向こうにとっても態々逃げる口実を与えたくないだろうからね」


 品評会の事を話す俺達の横で、ルミナとエドガーが腹黒い笑みを浮かべ始めるのだった。

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