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第115話 縁

 取り乱す俺を見て、リナリアのやつが同類を見るような目でこちらを見ている。

 止めろ、その誰もが通る道だ、みたいな目で俺を見るんじゃない。それ後で虚しくなるやつだぞ。


 取り乱して立ち上がってしまった俺は、会釈をして座り直す。

 それにしてもあいつもグルだったとは、まんまとしてやられた。あの熱意は本物だと思ったんだがな。


「一応、彼……カナリアの名誉のために言っておくけど、品評会に本気で取り組んでいるという点は嘘じゃないよ」

「……なるほど、そりゃ良かったです。あれまで嘘だったら俺はもう帰ってましたよ」

「それは互いにとっても何よりだ。裏で手を回しすぎて逃げられたのでは本末転倒だからね」


 ロウレルは心底安堵したように、ほっと息を漏らす。


「してやられた話はもう結構なんで本題に入って貰えませんかね」

「それもそうだ。さて、品評会の話だったね。その優勝者には父上から直々にお言葉を頂ける、なんて話も聞いているだろうか」

「ええ、その話ならリユゼルから」


 俺は少しだけ、リユゼルの方を見た後でそう答えた。


「いやぁ、話が早くて助かる。今の王家の状況はけして望ましいものとは言えないが、君達のように優秀な人間が近くにいてくれて何よりだ」

「照れますね」

「言っておくけど、エドガーのことだぞ」

「……あう」


 臆面もなく即座に反応するタイムに一応釘を差しておく。


「いや、君達もだよ。今の王家に取って君達のような存在は非常にありがたいものだ。品評会にしてもそうだ。彼らは死刑台に上がれと言ってきたのさ」

「冗談……って訳じゃないんですよね」


 リユゼルの問いかけに、ロウレルは静かに頷く。それが比喩であることはわかる。今回で言えば品評会での謁見がそれだろう。


「彼らは父を害した後、その罪を僕へ被せるつもりなのだろうね。その後、僕の四つになる弟を傀儡とする腹づもりのようだ。そして僕達に対しての理屈はこうだ。今の僕達ではこの難局を超えられないだろう、とね。全く、こうなった元凶が言ってくれるものだよ」

「てっきり、王家の意向かと思ってました」

「今の王家に急にそんな事をできるほどの力なんて既に無いのさ。恥ずかしながらね」


ミントの上げた声に、ロウレルが力なく答えた。


「それで、首謀者はもうわかってるんですかね」

「トリプト・ロードリーフ。この国の宰相を務めている男だ」

「……トリプト・ロードリーフ」

「知ってるのかい?」

「ちょっと昔、縁ができかけた人間の名前っすね」


 もう関わることはないかと思っていたが、切れない縁というのもあるらしい。

 今度で最後にしたいものである。自分を買おうとした人間と関わるのは。

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