第99話 これからの方針
「なるほど、つまり腕輪の中で魔術式を見つけて、起動させてみたと。そしたら腕輪から追い出されて、そこでは俺が発光していたって事でいいんだな」
俺の問いかけに、二人は無言でこくこくと首を縦に振る。
「それで、起動させようと言ったのはどっちだ?」
迷うこと無く互いが互いを指さす。相変わらずぶれない。まぁ予想通りの反応だ。
「それで、なんで起動した?」
「待ってください! 今回は本当に私じゃありませんよ!?」
俺の視線を受け、タイムは慌てて否定する。その様子を見る限り、どうやら今回は本当に違うらしい。
俺はルミナの方へと視線を移す。
「え!? そんなあっさり信じるんですの!?」
「まだ付き合いは短いが、お前にも判ってるだろ。テンパってる時のこいつはボロしか出さない」
「不思議ですね。信じて貰えたのにちっとも嬉しくありません」
だろうよ。
複雑な表情を浮かべるタイムの傍らで、ルミナは小さくうめき声を上げながら、俺から距離を取ろうとしていた。俺はすかさずルミナの手を掴む。
「それで、どうして起動したんだ?」
「ぐ、偶然ですの……」
偶然か、まぁ腕輪の中がどうなってるのかは知らないが、片付けをしてた時にたまたま……
「偶然目に入ったんですわ! ならもう起動するしか無いじゃありませんか!」
「おい」
「そう言えば一切躊躇しませんでしたね……」
そうか、こいつはこう言うやつか。ルミナにミントを任せて大丈夫だろうか。少し不安になる。
「それにしても、爺の魔術式をよく起動できたな」
「悔しいですが、実際に起動したのはタイムですわ。私と違ってタイムは偶然のようでしたけど」
「どう言うことだ? 属性が違ったとかか?」
「どうでしょう。ご存知ですか? 私達精霊は自分と反する属性、私で言えば闇以外の属性を微弱とは言え全て使えるんですの。闇というのはちょっとしたことでバランスを崩してしまう危うい属性です。グランドマスターがそんな失敗をされるとは思いませんが、刻印する魔法陣で扱うような属性ではありませんわ」
グランドマスター? はて、グランドマスターというのは一体誰だ。いや、考えるまでもない。
「おい、ちょっと待て、グランドマスターってのは爺のことか、俺がご主人様で、なんで爺がグランドマスターなんだ」
「そっちですの!?」
「重要なことだ。まぁいい、それにしても魔法陣か、一度実物を見てみたいところだ。もしかすると次の精霊の手がかりがあるかも知れないしな」
「腕輪の中に入るんですか?」
「部屋を用意してるんだろ? なら中を覗くか入る方法はどっかにあるはずだ」
それを知っていそうな人間、婆さんあたりか。いや、もしかしたらギルドマスターも知っているかも知れないな。何しろそっちだってハイエルフなのだ。長く生きたハイエルフなら魔導の知識に事欠くまい。
「ところで、微弱ながら使えるってことは俺も全属性使えたりするのか?」
「残念ながらご主人様に付与できるほどの力ではありませんわ」
「そううまくはいかないか……。とりあえず、まずはエドガーの用事を済ませるとしよう」
ギルドマスターはその後だな。
俺はそう決心すると、あてがわれた部屋を出て、ロビーへと向かった。




