火の探求者
【カナン大地 仮設病室 入り口】
フレイ:「ヒューマ様もいらっしゃってます」
サーラ:「ヒューマが?」
テントの中にベッドがあり、女性が寝ている
赤毛の女性 空からやってきた女性
焦点が定まらない瞳で虚空を見ている
傍らにいるのは、まるで看護人のようなヒューマ
ミランがヒューマの手を握っている
むっとするサーラ
フレイ:「外におりますので・・・」
音もなく退出するフレイ
サーラ:「ヒューマ」
気がついて振り向くサーラ
ヒューマ:「ああ、おはようサーラ」
やつれた表情 目の下にクマがある
サーラ:「大丈夫ヒューマ、疲れてるでしょ」
ヒューマ:「大丈夫だよ俺は」
ファロス:「ヒューマ。昨日は良くやった。その、お前が看病する美人は誰だ?天女か魔女か?」
ファロス:「天女でも魔女でもないです。彼女はミラン。『火の探求者』です」
ファロス:「ミラン?」
サーラ:「やっぱり」
ヒューマ:「知っているの父さん?」
ファロス:「村にも来たそうだが、その、火の探求者とお前がなんで空から降ってきたのか言えるな?」
ヒューマ:「ミランは騙されているんです。火の力を悪いことに利用されているんです。
昨日は、俺と一緒に会議に出るって空飛ぶ船で送ってもらったんですが、奴らの狙いはみんなを殺すことだったんだ」
サーラ:「やつらって?」
ヒューマ:「解らない。ミランを裏で操っている奴らなんだけど」
ファロス:「それで、この子はどうしたんだ?」
ヒューマ:「多分、自分が利用されていることを知って、みんなを危険な目に巻き込んだショックで、自分を見失ってしまったんだと思う。
星の騎士団の医者は心ここにあらずって言ってた」
ファロス:「心をなくしたか」
ヒューマ:「サーラ、覚えてるだろ?炎上石を取りに行くときに、砂の民に騙されていた女の子」
◆回想シーン
動力研究所の天井裏
赤い、ススだらけのダボダボのローブ
牛乳瓶底のように分厚いレンズのメガネ
そばかすだらけの女の子
◆回想シーン終わり
サーラ:「本当に、あのミランなの?」
◆昔のミランと今のミランがオーバーラップする
ヒューマ:「あのミランだよ」
ファロス:「それで、その子がどうしてお前の所に来たんだ?」
ヒューマ:「あの時、5年前。俺はミランに言ったんだ」
◆回想シーン
動力研究所の通路
気絶しているミラン
ミランの顔に手をかざすヒューマ。太陽の光りが溢れる
ヒューマ:「いつかきっと正しいことに君の力が使えるようになるから」
ミランの顔から傷やニキビが消える
太陽の神殿
ミランを乗せた空飛ぶ船が飛来する
ヒューマの声:「ミランが空飛ぶ船でやってきたんだ。俺は誰なんだか解らなかった。で、ミランがいったんだ」
ミラン:「私の力を正しく使った町を見て欲しい」
◆回想シーン終わり
ファロス:「それでお前は、自分の言葉に責任があると思って、空飛ぶ船に乗っていったわけか?」
うなずくヒューマ
ファロス:「(爆笑)そりゃビックリだ。俺の息子とはいえ、思い切ったことをする」
サーラ:「ファロスさん!」
ファロス:「こりゃすまん、すまん」
サーラ:「それで、ヒューマはどんな町を見てきたの?」
◆ヒューマの語りにあわせて回想シーン
ヒューマ:「そこは水の力も風の力も大地の力もつかわなくてもみんなが生きていける町だった。
夜でも昼間みたいな明るさで、たくさんの空飛ぶ船と空飛ぶ馬がいる町だった」
ファロス:「空飛ぶ船!空飛ぶ馬?」
ヒューマ:「生まれた土地に縛られない、生まれた土地が痩せていても、人の力で変えることができる世界だった」
◆回想シーン終わり
サーラ:「人の力で、大地を変えられる世界・・・」
ファロス:「で、お前はその町から、この娘と一緒にここに来たわけか」
ヒューマ:「まさか、攻撃をされるとは、ミランも考えてなかったんじゃないかな」
サーラ:「攻撃?やっぱりあれは攻撃だったの?」
ヒューマ:「多分・・・」
サーラ:「ミランが守ってくれたってこと?その空飛ぶ船からの攻撃から」
ヒューマ:「多分・・・」
神妙な顔のヒューマ、サーラ、アリア 髭をかきながら一同を見回すファロス
ファロス:「この子が騙されているかはともかく、あの空飛ぶ船はなんとかしないといかんな。あんなものが大群でやってこられてはたまらん。お前は、その町とやらがどこにあるのかは解るのか?」
ヒューマ:「いえ、まったく」
ファロス:「やはり、この娘に直接聞くしかないのだな・・・」
読了ありがとうございました。
まだ続きます