真相
【カナン大地 丘陵の野営地】
たき火を囲む風の一団。干し肉をただ口に運んでただ口を動かしているジェス。
そこへ部下が帰ってくる
ジェス:「どうだった?」
風の民:「何が起きたのかはまったく解りません。ケガ人はいるようですが、死者はいないようです」
ジェス:「死者はいない?」
やや不審そうな顔をするジェス
ジェス:「あんな事が起きたのにか?」
【港町ポート・オブ・エリア 沖合】
沖合に浮かぶマリア・アズーラ号に小舟が近づく
【マリア・アズーラ号甲板】
元乗組員:「今、残っているのは星と太陽、大地だけだそうで」
ベルタ:「月は、いないの?」
元乗組員:「もう後にされたらしいです」
ベルタ:「月が、いない・・・」
天を仰ぐベルタ
夜空に満月が浮かんでいる
【カナン大地 星の騎士団 野営地】
フレイ:「私が注目したのは、空飛ぶ物から出てきた2人でした。彼らは天の使いでもなく、怪鳥の化身でもなく人間でした」
黙って話を聞く神妙なサーラ
◆フレイの語りに会わせての回想シーン
フレイの語り:「そのあと私は2人に注目し続けたのですが、空飛ぶ物が何かを発する直前です。
降りてきた2人の内の1人、女性のほうが、大声で何かを叫び、中空に何かを放り投げたんです。すると幕というんでしょうか」
サーラの声のみ「幕?幕ってテントみたいな?」
フレイの語り:「はい、幕です。この会場全体を覆うくらいの、幕が私たちと会場全体を守ったのです」
◆回想シーン終わり
サーラ:「守った?その、空飛ぶ物から降りてきた女の人が?」
フレイ:「はい、私にはそう見えました。どういう守備の力をつかったのかはわかりませんが、女性が防御幕を作ったとしか私には思えません」
押し黙るサーラ
オリバー:「フレイの証言はある程度、事実なんです。この会議場の端ですね。そこが円形に焼けているんです。ふちどりのように。この会場を中心にした大きな円になって」
サーラ:「焼けている?」
オリバー:「ご存知のように、ここは丈の短い草原です。そこが会場を中心にした円形に草が焼けているんです」
サーラ:「わかりました。その空から来た女の人はどうしたんですか?」
立ち上がるサーラ 目が血走っている
サーラの様子に顔を見合わせる年配の騎士達
オリバー:「乙女様。色々と急くのは解りますが、今日の所はもう休まれてはどうですか?夜も遅いですし、新しい証拠は見つからないと思います。それに侍女様も」
すっかり眠りこけているアリア 穏やかな寝顔
サーラ:「そうですね。すいません。ちょっと急ぎすぎました」
困ったようにはにかむサーラ
騎士団一同:「おおっ」
サーラ:「あの?何か?」
オリバー:「まるで大地のぬくもりに触れたような笑顔ですな」
椅子に座り直し、耳の先まで真っ赤になるサーラ
オリバー:「さ、大地のテントまでご案内しましょう。フレイ・・」
もう眠りこけているサーラ
オリバー:「(微笑)・・・」
寄り添って寝息を立てるサーラとアリア
【カナン大地 会議場 大地のテント】
東の空が割れて朝陽が昇る
大地のテントを出て、他のテントへ向かうサーラ
【カナン大地 会議場 太陽のテント】
東の空に向かって体を動かしているファロス
サーラ:「おはようございます。お父様」
ヒューマの父ファロスを「お父様」と呼ぶ事が普通になっているサーラ
ファロス:「おお、サーラちゃん。おはよう、よく眠れたかい」
サーラ:「はい、とても」
ファロス:「それは良かった」
朝陽に向かって仁王立ちになるファロス
辺りを見回すサーラ
サーラ:「あの、ヒューマは?」
ファロス:「なんか早々と出て行ったが、近くにいる。大丈夫だ。今度は遠くには行ったりしないだろう」
サーラ:「そう、ですか・・・」
朝陽のまぶしさに目を細めるサーラ
サーラ:「気持ちいいですね」
ファロス:「まったく太陽はいい」
サーラ:「本当に」
ファロスの横で大きく伸びをするサーラ
ファロス:「自分で言うのもなんだが、太陽はいい。
人にも獣にも虫にも木にも草にも山にも川にも海にも大地にも、みんな平等だ。そこに一切の境界がない。
泣いても笑っても規則正しく沈み、そして昇る。これほど世に確かなことがあるかね」
サーラ:「本当に」
ファロス:「太陽、月、星、三天の営みは変わらない。この確かなことがあるからこそ、この世界はまわっているのだ」
サーラ:「あら、三天だけじゃありませんよ。大地が麦を育てるから、お父様だっておいしいパンを食べる事ができるんでしょ?大地の方が確実です」
ファロス:「いってくれるじゃないか。太陽がたっぷりと降り注ぐから麦がすくすくと育つのだぞ」
サーラ:「大地があるからこそ、麦は根をおろせるんですよ。太陽だけがエライわけじゃないですよ」
顔を見合わせて同時に笑い出すファロスとサーラ
ファロス:「どっちが、というよりも全部あるから世界はすばらしいのだな」
ファロスに微笑んでから深呼吸するサーラ
ファロスも深呼吸をする
ファロス:「サーラちゃん、ヒューマをよろしくみてやってくれ」
複雑な表情をするサーラ
ファロス:「なにやら1人であれこれ抱え込もうとしているように見えるのだが」
サーラ:「それは、太陽の子としてですか?それともヒューマのお父さんとしてですか?」
ファロス:「両方だよ。太陽がなくなっても、ヒューマがいなくなっても、サーラちゃん、困るだろう?」
サーラ:「その言い方ずるい」
カラカラと笑うファロス
ファロス:「もちろんサーラちゃんをなくしたら一番困るのはヒューマだけどな」
◆回想シーン
復活祭の夜 露店でネックレス選びをするヒューマとサーラ
大地の聖堂 助けにくるヒューマ 駆け寄るサーラ
スーリヤの庵 泣きじゃくるサーラ 寄り添う2人
南海の孤島 大津波に襲われるマリア・アズーラ号 手を離さないで波と戦うヒューマとサーラ
◆回想シーン終わり
◆モノローグ
サーラ:(ヒューマがいない世界・・・そんなこと考えも付かない・・・)
アリア:「乙女様おはようございます」
サーラ:「おはようアリア。よく眠れた?」
耳の先まで真っ赤になるアリア
アリア:「あの、お客様です」
現れたのは制服姿の六等星の騎士フレイ
フレイ:「おはようございます。大地の乙女様」
サーラ:「おはようございます。あの、サーラって呼んでもらえます?」
フレイ:「はい、サーラ様。あの昨日空から来た女性の所に案内しようと思いまして」
ガラガラと大きな音を立てて、フレイに殺到するサーラ
サーラ:「いるの?あの人か?」
にわかに驚くフレイ
フレイ:「ええ、我が星の騎士団で丁重におもてなしをしております」
サーラ:「案内して、すぐに!」
読了ありがとうございました。
まだ続きます