混乱
【カナン大地 会議場近くのテント】
倒れているファロス、サーラの背中
うつぶせのまま顔を起こすファロス
サーラの法衣が見える
ファロス:「サーラちゃん」
起き上がり近寄るファロス。ケガはひとつもない
起き上がるサーラ。顔中土だらけ。
ファロス:「サーラちゃん、ケガは?」
サーラ:「いえ、全然。大丈夫みたいです」
サーラの真下に隠れたアリアも起き上がる
サーラ:「アリア、ケガはない」
頷くのが精一杯のアリア
辺りを見回すサーラ
テントは吹き飛び、倒れているおびただしい数の人、主を失った騎馬がパニックを起こしかけている
空飛ぶ船の姿はない
見覚えのあるヒューマの背中
サーラ:「ヒューマ」
走り寄るサーラ。後を追うファロスとアリア
ヒューマ:「・・・・」
抱え起こすサーラ
土まみれのヒューマ。苦しそうなヒューマ
ヒューマ:「・・・う」
苦しそうに目を開ける
顔が明るくなるサーラ
ヒューマ:「・・・サーラ」
ヒューマの顔を思い切り殴るサーラ。転がるヒューマ
ファロス:「サーラ、ちゃん?」
静かに涙を流すサーラ。悔しそうな表情
ヒューマ:「サーラ・・・」
ファロス:「ヒューマ、落ち着いたら付いてこい。ケガ人を探して治すのが先だ。それが太陽の子の役目だ」
走り出すファロス
サーラ:「私も行きます。アリア、ヒューマをお願いね」
◆ケガ人の治療に当たる、ヒューマ、ファロス、サーラの様子
【カナン大地 会議場(夜)】
かろうじてテントが立て直されている。
太陽のテントから豪快ないびきが聞こえる
大いびきを立てて寝ているファロス親子
体育座りをしているサーラ
アリア:「サーラ様・・・」
サーラ:「大丈夫。ちょっと疲れただけよ」
疲れ気味の顔で弱々しく笑う
サーラ:「他の人達は大丈夫なのかしら」
ゆっくりと、重くなった体を起こす
◆他の会場へ向かうサーラとアリア
【カナン大地 会議場 月のテント】
警備兵:「月の使徒はそうそうに引き上げられました。この有様では会議どころではありませんから」
【カナン大地 会議場 風のテント】
警備兵:「風の民が来たという報告は受けておりません」
【カナン大地 会議場 水のテント】
警備兵:「今は何も解っておりません」
サーラ:「意外にケガ人が少なくて、良かったわね。でも何があったのかしら?」
アリア:「誰か知らないんですかね?」
【カナン大地 星の騎士団野営地 入り口】
テントはない。地面に槍を突き立て、星の紋章が彫り込まれた盾を掲げている
警備に立つ六等星の騎士フレイ
フレイ:「これは、大地の乙女様であられますね」
サーラ:「あ、はい。警備ご苦労様です」
フレイ:「ありがとうございます。私は星の騎士団六等星の騎士フレイザードです」
サーラ:「あの、どなたか今回の警備の責任者のかたはいらっしゃいますか?」
フレイ:「はい。でも何か不都合でも?」
サーラ:「ちょっとお話を聞きたくてですね。あの何が起きたのか?あれだけ大騒ぎがあったのにけが人が少ないので、騎士団の方でしたら、知っているのかなと」
フレイ:「なるほど。ひとまずどうぞ」
フレイについていくサーラとアリア
【星の騎士団野営地】
「これから戦闘か?」というような物々しい雰囲気の野営地
オリバー:「どうしたフレイ?」
フレイ:「お取り込み中失礼します。大地の乙女様がいらっしゃったので」
オリバー:「なに?」
一斉に立ち上がる騎士たち。サーラに向かって騎士の正統な礼をする
オリバー:「どうぞこちらに大地の乙女様」
サーラとアリア「・・・・」
こういう出迎えになれていないサーラとアリア。
恭しくて促すオリバー
招かれた椅子に座るサーラとアリア。2人が座ると騎士達も座った
フレイが立ち去る
オリバー:「警備の担当をしました。星の騎士団一等星の騎士オリバヌスです」
サーラ:「あの、『大地の乙女』を務めていますサーラです。それでこっちが侍女のアリアです」
オリバ−:「迅速で見事な救護活動、大変感服いたしました。我々星の騎士団としても」
サーラ:「あの、ありがとうございます。で、そのことで聞きたいことがありまして」
オリバー:「おお、そうでしたな、なんでも警備のことについて私たち騎士団の編成を聞きたいとか」
サーラ:「いえ、警備の事じゃなくてですね。あの時、何が起きたのかが知りたいんです。ケガ人がほとんどいなくてですね、私自身びっくりしているんですよ。もっと被害が大きくてもおかしくないと思っていたので。それで騎士団でなにか特別な事をしたのかと思いまして」
オリバー:「なるほど」
口ひげをなでて思案するオリバー
オリバー:「ちょっとお待ちいただけますか」
オリバーを含めた、年配の騎士4人が集まり、なにやら渋い表情で会合を始めた。
サーラ:「なんだか物々しいわね」
眠くなってくるサーラとアリア
騎士達はサーラ達をそっちのけで議論に熱中している
サーラとアリア「ふあ~(たまらず大あくび)」
騎士団がサーラとアリアに注目する
ハッとするサーラとアリア
騎士団:「(大爆笑)」
オリバー:「これは申し訳ない。あなた方大地の民が、星の騎士団の力を探りに来たのかと思いましたが、邪推でしたな」
耳の先まで真っ赤になるサーラとアリア
オリバー:「すまんがフレイを呼んできて欲しいのだが」
下級騎士に言付けるオリバー
オリバー:「お恥ずかしい話ですが、星の騎士団五百騎の中で、たった1人しか、その時のことを見ていないのです。いや、正確に言うと何が起きたのかを把握できたのは1人だけだったのです。あまりにも一瞬のことだったので。1人しかいない上に、他に証言がないので、各方面にはかくしていたのですが、聞いていただけますか」
頷くサーラ。やってきたのは先ほどサーラを案内した若い騎士
オリバー:「紹介しましょう。六等星の騎士フレイザードです」
礼をするフレイ
オリバー:「先日、星の騎士として盾を受け取ったばかりのものでして、今回が初めての任務なのですが、実に有望な若者で」
サーラ:「あの・・・」
オリバー:「おお、これは失礼した。またあくびを出させては申し訳ない。さあフレイ、君が何を見たのか大地の乙女様に語ってくれ」
フレイ:「わかりました」
読了ありがとうございました。
まだ続きます。