カナン大地
【聖都スクード 星の騎士団 大聖堂】
聖堂を埋め尽くす騎士達
壇上には司祭と12人の上級騎士が並ぶ
もうけられた通路を司祭に先導されて十名ほどの若者が壇上に向かって歩いていく。全身を鋼板で覆った鎧を着ているが、剣も盾も持っていない。
若者達は壇上に並ぶ
進み出る司祭
星の司祭:「君たちは、ここに新しく星の守護者として騎士の一員となる」
星の司祭:「全天に輝く星々よ、この若き騎士達に祝福を与えたたまえ」
聖堂を埋め尽くす大歓声
上級騎士から星の紋章が彫り込まれた盾を手渡される新米騎士たち
年配の騎士:「おめでとうフレイザート」
新米騎士:「ありがとうございます。マスター(師匠)オリバヌス」
【星の騎士団大聖堂 渡り廊下】
式典が終わり、騎士達が歩いている。辺りをうめつくす金属音
肩を並べて歩く、一等星の騎士のオリバーと、六等星の騎士フレイ
オリバー:「まったく、手渡す方が緊張するな」
口ひげをなでて苦笑する騎士オリバー
フレイ:「私は、緊張と言うよりも今までにない責任感を得ました」
オリバー:「立派だフレイ」
フレイ:「ありがとうございますマスター。早速ですが、例の会議の防衛計画を教えていただきたいのですが」
オリバー:「気が早いな。家内も娘も晴れて六等星の騎士になった君の帰りを待っているというのに」
フレイ 「それは身に余る光栄ですが、私は一日も早く、マスターが誇れるような騎士になりたいのです。そのためには最初の任務を是非とも成功させたいのです」
オリバー:「そんなに意気込まなくても大丈夫だ」
フレイ:「どこなのですか?場所は?」
オリバー:「かつて砂漠だった所だよ」
【カナン大地 空撮】
どこまでも緑が続く、だだっぴろい平原。
丈の短い草が生い茂る、いわばサバンナ
草にしがみつく昆虫
昆虫を補食する鳥類
草食動物を補食する肉食動物
鋭い牙を持つ肉食獣の頭骨
その傍らを爆走する草食動物の群れ
飛び立つ鳥の群れ
緑の大地で繰り広げられる命の連鎖
ナレーション
「カナン大地。
ここは5年前まで一面の砂漠だった。そこにはかつて唯一絶対の神をあがめる砂の民が威を張っていた。
しかし太陽が昇り世界がバランスを取り戻すと、砂の民は忽然と姿を消した。自分たちの存在を示す全ての物と一緒に。
大地は急速に甦った。
まるで乾いた砂が水をしみこませていくように、砂漠は草原に生まれ変わった。
砂の民の廃墟は大地に返り、人間の力のもろさと自然の偉大さを見せつけていた
今、この大地は人間の姿がほとんどない、野生動物の楽園になっている」
【カナン大地 見下ろせる小高い丘】
サーラとアリアを先頭に、丘を降りる一団
アリア:「本当に、ここが砂だらけだったんですか?」
サーラ:「そうよ、信じられないでしょ」
大地に手を当てて『声』を聞くサーラ。
◆回想シーン
ラクダで走るジェス、ベルタ、サーラ、ヒューマ、それにグレイス
サーラ:「私がいうのもヘンだけど、すごいでしょ」
アリア:「すごいですね大地の乙女様の力って」
サーラ:「私がすごいんじゃなくて、大地の力がすごいのよ」
大地の乙女御一行のやや前方を横切る騎士の小隊
フレイ:「あれは・・・」
オリバー:「大地の乙女の一団だろう」
フレイ:「あれが・・・」
騎士の小隊が過ぎ去り、近づいてくる一団
ファロスを先頭に歩く太陽の一団
ファロス:「サーラちゃん」
サーラ:「お父様」
合流する大地の一団と太陽の一団
サーラ:「あれ、お母様は?」
ファロス:「サーラちゃんはともかく、ほかの司る者達は太陽の子が2人いることは知らないんだよ。だから私だけにしておいたんだ。それに空飛ぶ船のこともあるしね」
一団の中にはヒューマの姿がない
サーラ:「ヒューマのこと知ってます?」
ファロス:「まったく何を考えているのやら。まあ無事であればよいのだけれども」
サーラ:「多分、ヒューマには何か考えがあってのことだと思います。この会議にも間に合うようにくるんじゃないかと」
ファロス:「うん?サーラちゃん、ヒューマはこの会議に出なくても良いんだよ」
サーラ:「え?」
ファロス:「まだ、私とフレアなんだよ太陽の子は。ヒューマはまだ違うんだ。力もあって適任者だと言うことはわかっているが、候補者の1人なんだよ」
サーラ:「そうなんですか」
ファロス:「まあ、途中で試練を放りだしてしまうようでは、まだまだだなあ」
サーラ:「じゃあ、もしかすると、本当にもしかすると、ヒューマが太陽の子にならないかも知れないんですか?」
ファロス:「それも、ある」
少しうれしそうな顔をするサーラ
ファロス:「なるにしろ、ならないにしろ、試練だろうな」
読了ありがとうございました。
まだ続きます。