すべての闇
【マリア・アズーラ号 甲板】
ベルタの鞭が「招かれざる客」の手首を捉えている
顔だけがベルタで、全身はドス黒く、男なのか女なのかわからない
????:「オレには下船しろなんて言えないだろう」
ベルタの顔がファロスに変わる
ファロス:「なんだ、こいつは?」
????:「おいおい、自分に向かってこいつはないだろう?」
顔がジェスに変わる
????:「サーラ、あなたなら私に向かって出て行けなんていわないでしょ」
次はサーラになる
ヒューマにしがみつくサーラ
????:「そんなことオレは言わないぜ」
ヒューマに変わった顔はセレンに変わる
????:「ホホ、その通り」
????:「自分で招いておいて、それはないんじゃないベルタ」
ミランまで現れる
????:「そうよ。自分だけの海じゃないのに」
最後はフレアになった
フレアの顔は太陽が隠れていた時のようにドス黒く変色する
船上にいる「司る者」たちの顔に次々と変わっていく「招かれざる客」
大いに動揺する「司る者」たち
ファロス:「お前、何者だ?」
????:「私はお前であり、オレはあなただ」
禅問答にやや押し黙る「司る者」たち
ファロス:「名乗れないのか?それとも名前がないのか?」
????:「そうだな、すべての闇とでも呼んでもらおうか?」
ヒューマ:「すべての闇?」
????:「すべては闇から生まれた。私はすべてのものの闇だ」
押し黙る「司る者」たち
????:「だから私は君たちでもある。君たちは私でもある」
ファロス:「それで、そのすべての闇は我々に何をしようというのだ?」
すべての闇:「警告をしにきたのだよ」
ヒューマ:「警告?」
すべての闇:「これ以上、歩みを止めた方がよい」
ジェス:「どういうことだ?」
すべての闇:「このまま進めばお前達は、お前達自身を否定することになるだろう」
沈黙する「司る者」たち
何をいわれているのかさっぱり解らない様子
ファロス:「止まらなければどうなる?」
すべての闇:「いずれお前達は自ら歩みを止めることになる。そうなる前に止めに来たのだ」
ジェス:「そいつぁ、ご丁寧に」
ベルタ:「わるいけどお節介ね」
ファロス:「そういうことだ。オレなのかお前なのかわからないが、お前の方こそ、歩みを止めた方がよいのではないのか?」
すべての闇:「残念だが、私には私の道がある。それを止めるわけにはいかん」
ヒューマ:「なんだ、お前の道って?」
すべての闇:「この世界を平和に導くことだ」
サーラ:「平和に?」
ヒューマ:「俺たちと同じじゃないか」
すべての闇:「お前達が理想としている平和と、私が作りあげる平和とは違うものだ」
ミラン:「平和が違う?」
サーラ:「みんながいつまでも笑顔で暮らせる、それが平和じゃないの?」
すべての闇:「私が開拓する平和に笑顔はない。あるのは争いもなく笑顔もない、穏やかな世界だ」
再びシーンとなる「司る者」たち
ファロス:「言っていることは良くわからんが、お前に我々の歩みを止められるのは困るのでな」
すべての闇:「そうか」
すべての闇が大きく膨れあがる 構える一同
すべての闇:「ならば仕方ないな」
ベルタ:「ミランから出てきた影ね。セレンを操っていたのと同じね」
セレン:「私たち『司る者』を操るとは、敵ながら見上げたものです」
すべての闇:「言ったろう。私はすべての闇だ。私は誰でもあり誰でもない」
ヒューマ:「ここで立ち止まるわけには行かないんでね」
◆すべての闇と対峙する「司る者」たち
しかし、自分自身と戦うということ、さらに冥府行きをしたことで
ひどく消耗していて、次第に押されていく。
すべての闇:「人間の司る者など、所詮その程度だ!」
ヒューマの顔で高笑いする、すべての闇
ミラン:「燃やし尽くして!」
ミランの手のひらから猛烈なエネルギーの火の玉がすべての闇に襲いかかる
炎に包まれても平然としているすべての闇
ミラン:「私の炎で燃えないって・・・」
ミランの顔になるすべての闇
すべての闇:「ミラン、お前は私たちを裏切るつもりか?」
ヒューマ:「裏切る?」
ミラン:「裏切るって、あなた帝都の誰?」
すべての闇:「お前は私たちとともに新しい世界を創るために、今までの世界を捨てたのではないのか?
差別のない、土地に縛られることもない、すべての人間が平等に暮らすことができる世界を。お前は私たちの志を裏切るというのか?」
ミラン:「裏切るって、あんたこそ、セレンを操ってみんなを殺そうとしたくせに!あんたの方こそ裏切り者じゃないの!」
すべての闇:「どうやら押し問答にしかならないようだな。私は裏切るのには慣れてはいるが、裏切られるのはキライでね」
ミラン:「じゃあ、どうするの?」
すべての闇:「こうするのさ」
すべての闇が青とも赤とも判別が付かない強烈な光りに包まれれ、青とも赤とも知れない火の玉がマリア・アズーラ号に襲いかかる
ファロス:「なんだあれは!」
ミラン:「ダメー!」
火の玉に立ちはだかるミラン
ミランの全身が青とも赤とも知れない炎に包まれて、燃え始める
ジェス:「ミランが?」
ベルタ:「燃えている?」
ファロス:「火の探求者が燃える?」
ミラン:「この炎は・・・」
すべての闇:「そうだお前が生み出した『新しい炎』だよミラン。『原子の炎』だ。私たちだけではほんの少ししか燃やすことができない。ミラン、私たちはまだお前の力を必要としている・・・」
やりとりの間も、ミランから火が消えない
ミラン:「誰だか知らないけど、私の力が必要だと言ってくれるのは嬉しいわ」
フレイ:「ミラン・・・」
ミラン:「でも、もう必要のない火は使わない。大きすぎる火は使わないって決めたの」
すべての闇:「では、仕方ないな。裏切り者として滅んでもらおうか。お前達人間が生み出した炎で滅ぶがよい」
ミランの全身が焼け始める
一行:「ミラン!」
ミラン:「死なせて!」
ヒューマ:「ミラン?」
ミラン:「この炎を作ったのは私。『原子の炎』を作ったのは私。私でも燃やしてしまうような力を作ってしまった私が間違っていた・・・」
フレイ:「そんなことはない!キミは」
ミラン:「これは私の罰よ。私が罰を受けるの。母さんがいない世界に未練はないわ」
炭化してゆくミランの頬を一瞬だが涙がつたう
涙はすぐに気化してしまう
ミラン:「みんな、ゴメンね・・・」
サーラ:「どうしてミランが燃えるの?どうして火の探求者が燃えるの?」
ファロス:「生きようって意志がない!」
ボソボソと燃えていくミラン
ファロス:「ミランが消える?」
セレン:「この世界から火が消える?」
ジェス:「冗談じゃねえ!なんとかならねえのかよ」
ブスブスと音も立ててくずおれるミラン
ヒューマ:「行こうフレイ!」
フレイ:「僕は『司る者』じゃない!」
ヒューマ:「いいから来るんだ!」
ほとんど炭になっているミランに駆け寄るヒューマとフレイ
フレイ:「ミラン・・・」
ヒューマ:「フレイ、ミランの、キミが守る人の手を取るんだ」
炭化した力のないミランの手を取るフレイ
フレイ:「うっ」
フレイの手が焼ける
フレイと反対の手を握るヒューマ
ヒューマ:「ミラン、キミはまだ消えちゃだめだ」
ヒューマの手から太陽の光が溢れる
ファロス、フレア「ヒューマ!」
ヒューマ:「火は太陽から生まれた。新しく生まれ変わるんだミラン」
ヒューマの全身が凄まじい太陽の光を発して、ミランとフレイも包み込む
ヒューマ:「俺は何回でもミランを甦らせてやる。でもミランの心を、消えそうな心を守るのはキミだフレイ!」
太陽の光が消えると、安らかな寝息を立てているミランの姿が残った
フレイ:「ミラン・・・」
すべての闇:「なるほど。平和へと導くなどと豪語するだけのことはあるな」
ジェス:「なんだ、まだいたのか?」
すべての闇:「一旦引き下がろう。また会うことになるだろう、もう1人の私たちよ」
夜の闇にとけ込むように消えるすべての闇
サーラ:「ヒューマ、今のは・・・?」
ヒューマ:「解らない」
読了ありがとうございました。
次回投稿が第二部最終でございます
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