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月の使徒と妹

【冥府 王の城 城門前】



不気味にたたずむ冥府の王の城

サーラ:「冥府に王様がいるんだ」

セレン:「あなたたちも外出するには許可が必要でしょう。その許可を司っているのが王なのです」

ヒューマ:「で、ミランのお母さんの外出許可をもらうってこと?」

フレイ:「寄宿舎みたいだな」

セレン:「そんなものに許可を出すことはありません。ですので力ずくで王を納得させるのです」

サーラ:「腕ずくなのね」

セレン:「しかたがありません。そのために腕の立つあなたたちを連れてきたのですから」




【冥王の城 城内】


異様に静まりかえっている城内を進む一行




【冥王の城 玉座】



殺風景な王の間

赤と青の顔をした鬼が控えている。

玉座の前には執務机があり、分厚い書物が置いてある


セレン:「おや、王はどうなさったのです」

赤鬼:「今は不在だ」

セレン:「不在?」

青鬼:「立ち去され、月の兄よ。もはやお前の望は果たされることはない。太陽が甦ってしまってはな」

セレン:「それはどうでしょう?」



ヒューマ:「おい、ちょっと待てよ。なんか話がおかしいぞ。あんたの望ってなんだよ。ミランのお母さんを探すのが先だろう」

ヒューマの方に向き直るセレン

セレン:「取引をしましょう」

ヒューマ:「取り引き?」

セレン:「そうです。私は一時的に冥府の王に収まります。そのためにはあの醜い鬼がじゃまです。倒さなくてはなりません」

ヒューマ:「なんであんたが冥府の王にならなくちゃだめなんだ?ミランのお母さんを探すために、ここに来たんだぜ?」

セレン:「冥府の王になってしまったほうが、許可など簡単だからです。今は王がいません。火の娘の母を探し出し、許可を出すだけです」




押し黙るヒューマとサーラ

ヒューマ:「ちょっと話がおかしいぞセレン」

セレン:「他に方法があるというのですか?」

赤鬼:「何をごちゃごちゃもめている」

青鬼:「ここは王の間だ。立ち去れ!」



◆赤鬼と青鬼を退ける一行




【王の城 王の間】

    


ヒューマ:「さあ、これで誰もいなくなったぞ。ミランのお母さんを探してくれよ。どうするんだ?」

答えずに執務机にある書物を手に取るセレン

セレン:「ようやく手に入れた。死者の書を」

サーラ:「死者の書?」

セレンが死者の書を手にした時に黒い影のようなモノが全身を覆う

セレン:「これで冥府の全てを司ることができる。苦節13年。ようやく我が妹ルナを復活させることができる。

 おお、我が妹ルナよ。全天地に咲き誇る美しさを持つルナよ。お前の肉体は何も変わらずに保管をしている。

 後は、このオカマにお前の魂を入れて戻せば、文字通り全てが元通りになるのだ!」

ヒューマ:「なんだって?」

フレイ:「話が違うぞ!」

サーラ:「ミランのお母さんはどうなるの?」

ヒューマ達を見るセレン

セレン:「おや、あなたたち、まだいたのですか?」

ヒューマ:「なっ?」

フレイ:「貴様、何を企んでいる?」

セレン:「無礼な。それが王に(えっ)する態度かっ!」

死者の本を振りかざすセレン

吹き飛ばされて身動きができなくなるヒューマとサーラ、それにフレイ




ヒューマ:「くそ・・・」

サーラ:「どうして・・・」

フレイ:「体が動かない・・・」

セレン:「お前たちに用はない。今すぐ地上に帰れ!」

口調も表情も、男になっているセレン

3人の体が足下から消え始める

ヒューマ:「何をしやがる」

セレン:「安心しろ、お前達にとって一番安全な地上へ、オレが送ってやろう」




【マリア・アズーラ号甲板】



月の円陣にヒューマとサーラ、フレイの3人が現れる

ファロス:「おお、ヒューマ!」

呆然(ぼうせん)としている3人

サーラ:「ここは?」

フレイ:「冥府じゃないのか?」

3人を見ているファロス、ベルタ、ジェス、グレイス、アリア

ヒューマ:「戻された!」

ジェス:「戻された?」

ファロス:「セレンはどうした?」

ヒューマ:「無理矢理地上に戻された!チクショウ!」

サーラ:「急いで戻らないと、大変なことになるわ!」

ファロス:「どうした、落ち着け3人とも!」

ヒューマ:「このままだと、また太陽が消えた世界になっちまう」

サーラ:「セレンが、冥府の王になったのよ」

フレイ:「(だま)されていたんです!」




ファロス:「冥府で大変なことがあったのは解った」

ジェス:「で、お前達の後ろにいる女の子は誰だ?」

ヒューマ:「え?」

サーラ:「おんな?」

フレイ:「の子?」

そろりと振り返るヒューマとサーラ、それにフレイ

フレイ:「うわ!」

ヒューマ:「ひっ!」

サーラ:「きゃー!」

見たこともない女の子が立っている

ベルタ:「あなたたちと一緒に現れたのよ」




金色に輝くドレスを着た女の子

一見生者なのか死者なのかわからないが、この世のモノとは思えないくらい美しい女の子

サーラの持っているヒマワリのような健康的美ではなく、ベルタの深紅の薔薇のような華やかさでもなく、荒野に一輪だけ咲く花のような可憐な女の子



ルナ:「兄を、兄を助けてください。狂ってしまった兄を、元の兄に戻してください」

ヒューマ:「兄?」

ベルタ:「あなた、セレンの妹さんね」

ルナ:「妹のルナです。お願いです兄を助けてください」

ヒューマ:「そんな事言っても、どうやって冥府に行けばいいのか解らないよ俺たち」

ルナ:「私が案内します」

サーラ:「あなたが・・・?」

ベルタ:「とにかく、冥府に戻ったほうが良さそうね。私も連れて行ってくれるわね」

ルナ:「はい、流水の聖女様」

ベルタ:「着替える時間くらいはあるかしら?」

サーラ:「着替え?」

ルナ:「はい。お待ちしています」



◆ベルタが着替えている間に、ルナと話す一行



ヒューマ:「あんた、どうして俺たちの事知っているんだ?」

ルナ:「あなたの太陽の光をたどってきたんです。あたたかい太陽の光り。お父様にそっくりですね」

ファロス:「なんと、あの時のあんたか!」

ルナ:「私が差し上げたコンパス。役に立ったようですね」

ファロス:「すまん。あの時はろくに礼も言えなかった」



◆着替えを終えたベルタが登場



ベルタ:「お待たせ」

月の円陣に入るベルタ

グレイス:「なんであなたまで行くの?」

ベルタ:「私は水を司る流水の聖女。このまま月の影響で狂わされるわけにはいかないのよ。これは太陽が昇る昇らないの問題じゃなくて、私の問題なの。いつまでも青い海を守るために。流水の聖女になることを選んだ私の問題なの」

グレイス:「ベルタ・・・」

ルナ:「では、参りましょう」

ルナはセレンと同じ呪文を唱える

光りに包まれて消える5人

ファロス:「月の民よ。今度はオレの息子を助けてやってくれ」

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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