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死出の化粧

【マリア・アズーラ号甲板】



セレン:「冥府(めいふ)に行くためには魔除(まよ)けが必要です。それをこれからお顔に施します」

ヒューマ:「顔に?」

セレン:「そうメイク。つまり化粧です」

サーラ:「化粧?」

セレン:「冥府は文字通り死者の国。冷たい死の国で亡者は、生者のぬくもりがほしいのです。私たちは行きながら死の国に行くわけで死者に見せる工夫が必要なのです」

ベルタ:「つまり死に化粧ってこと?」

セレン:「不吉な言い方ですが、そういうことになります。まずは男子からメイクをいたしましょう」

天幕へと消えるセレン




【マリア・アズーラ号甲板  セレンの天幕】



ヒューマ:「化粧したことある?」

フレイ:「いいや・・・ヒューマは?」

ヒューマ:「ない」

天幕に入るヒューマとフレイ




【天幕 メイク室】



山盛りの美術品と、お香の匂いが怪しく漂っている

お香の匂いに顔をしかめるヒューマとフレイ

セレン:「こちらにお掛けください」

鳥の脚をした椅子にかけるヒューマとフレイ

ヒューマ:「ところでセレン、どうやってミランのお母さんの魂を連れてくるの?ツボにでも入れるの?」

セレン:「どうしてそれがわかったのです?」

ヒューマ:「え?!」




なにやらゴソゴソとモノを出すセレン

それはフタがついている、オカマだった

フレイ:「なんですかコレ」

セレン:「私が死力を決して、土選びから入魂(にゅうこん)のろくろテクニックを駆使して焼き上げた『魂を入れる聖なるオカマ』です」

ヒューマとフレイ「オカマ?」

セレン:「ここに1人分の魂を入れて持ち帰ることができるのです。何と素晴らしいオカマ。オーッホッホッホッ」

ヒューマ:「見せて!」

オカマをかっさらうヒューマ

ヒューマ:「なんか普通だね」

フレイ:「こんなんで大丈夫?」

オカマを叩きまくっているヒューマとフレイ




セレン:「きいーっ!返しなさい、この野蛮人ども!」

むりやりひったくるセレンの手からオカマが落ちそうになる

セレン:「あっ!おっ!はっ!」

オカマをお手玉するセレン

セレン:「どへっ!」

セレンが倒れた拍子に高価なツボやら美術品がドミノたおしになる

ヒューマ:「大丈夫、ですか?」

フレイ:「何か、大変そうですね」

セレン:「きいーっ!あなたたち!私をおちょくるのもいい加減にしなさい!」

髪を振り乱して怒るセレン

ヒューマ:「でもすごいよね。こんなの研究しているんだから」

セレン:「まあ、始めましょうか」




取り乱しを直すセレン

セレン:「さて、骨相(こっそう)を見ますか」

ヒューマの顔を正面から見るセレン 

その表情は恐ろしく真剣

セレン:「これはスバラシイ」

ヒューマ:「何が、ですか?」

セレン:「ものすごい生命エネルギーにあふれています」

ヒューマ:「そりゃスゴイ」

セレン:「ですが、冥府に行くためには、このあふれる生命エネルギーを抑える必要がありますね。どれ、あなたは?」

続いてフレイを見るセレン

セレン:「あなたにはあふれる情熱がありますね。何かを守るという使命感。これは2人とも抑えるのが大変ですが」

ヒューマとフレイ「ですが?」

セレン:「オーッホッホッホッ。私に任せなさーい」




【マリア・アズーラ号甲板】



化粧待ちをしている一行

フレア:「あなた冥府に行ったって本当なの?」

ファロス:「本当だとも。死ぬかと思ったけどね」

フレア:「ごめんなさい。そんなキケンなことをさせて」



ヒューマとフレイが出てくる

ヒューマとフレイ「終わりました」

一同:「(大爆笑!)」

ヒューマとフレイ「???」

サーラ:「なーに2人とも。その顔?」

ジェス:「ヤバイおもしろすぎる!」

ベルタも笑う

ファロス:「お前、それギャグか!」

フレア:「そんなんで冥府行ったら大変よ!」

ヒューマ:「ちょっとセレン、鏡貸してよ」




手鏡をもらうヒューマ

ヒューマ:「なんだこれ!」

フレイ:「ブハハハ」

メイクというよりも油絵のような2人の顔

ヒューマは右半分と左半分にそれぞれピカソっぽい顔がついている。片方は怒っていて片方は泣いている

フレイは半分が男で半分が女。

顔の原型はまったくわからない

セレン:「大変でした。2人とも強い生命力で」

ヒューマ:「本当にこれであっているんですか?」

フレイ:「ヤバイ。自分の顔がおかしすぎる」

腹を抱えて笑う一同




セレン:「さ、次は大地の乙女、あなたです」

サーラ:「ククク、行ってくるねヒューマ」

セレンと一緒に天幕に入るサーラ

ヒューマ:「何だよ、人の顔で笑いやがって。サーラの顔も笑ってやるんだ!」

後ろで笑い声が聞こえる

ヒューマ:「もう、笑いすぎ!」




【天幕 メイク室】



向かい合って座っているサーラとセレン

セレン:「まずは今、しているメイクを落としましょうか」

サーラ:「化粧なんてしてません」

セレン:「なんと!メイクをしない?」

サーラ:「だって畑仕事に化粧なんていらないもの」

セレン:「おおお何と恐ろしい。メイクをしない女子がいるとは」

サーラ:「今まで2回だけです。化粧してもらったのは。ジェスとグレイスの結婚式と、ヒューマのお父さんとお母さんの結婚式だけです。ベルタだってお化粧なんてしてないでしょ」

セレン:「メイクは女子のたしなみですよ。どれ、骨相を見ましょう」

正面からサーラと向き合うセレン



セレン:「(こ、これは、)」

ハッとするセレン

セレン:「(ノーメイクだというのに、なんだこの美しさは?そんなことはあり得ない。

 素顔でこの私よりも美しいのは我が妹ルナしかいない

 だが、この『死の匂い』はどういうことだ)

サーラ:「どうかしました?」

セレン:「いえ別に」

取り直すセレン

セレン:「あなた、冥府に行ったことがありますね?」

ギクリとするサーラ

サーラ:「冥府の記憶はないです。すぐにヒューマに助けてもらっので」

セレン:「そうですか、その奇跡に期待しましょう」

メイク道具を広げるセレン



メイクが終わり、退出するサーラ

人の気配を感じるセレン

いつのまにかベルタが忍び込んでいる




ベルタ:「あなた、何を企んでいるの?」

セレン:「企む?とは、何を?」

ベルタ:「『司る者』を集めて一網打尽にしたの?それもと新しい太陽の子を罠にはめようとしたの?あなたは何が望なの?」

振り向くセレン

セレン:「とんだ濡れ衣ですね。清流の聖女だけに濡れ衣ですか」

ベルタ:「今はしらばっくれていてもいいわ。でも私たち『司る者』は、その力を自分の欲に使ったら、きっと報いがくるわよ。それでもいいの」



両手を広げるセレン

右手には炎が、左手には電光がたまっている

セレン:「そんなものに頼る時代は終わったのです。魔法こそが力の源。力こそがこの世界を美しく彩るのです」

セレンの魔力を見るベルタ

ベルタ:「まあ、いいわ。今はミランを助けることを考えましょう。お互いにね」

読了ありがとうございました。

まだ続きます。

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