それぞれの思惑
【港町ポート・オブ・エリア 桟橋】
大小様々な荷物や豪華な美術品が続々と小舟でマリア・アズーラ号に運び込まれる
船乗りA:「なんだいこの騒ぎは?」
船乗りB:「なんでもメイフって所に行くらしいで」
船乗りA:「商売にでも行くんか?」
【マリア・アズーラ号甲板】
天幕が張られて、豪華な美術品や毛皮が運び込まれる
セレン:「そのツボはここに置いてちょうだい」
豪華なツボを運ぶヒューマ
ヒューマ:「ふえ~くたびれた」
セレン:「まだ終わってないわよ。次はこれ、あの右隅!」
ヒューマ:「人使いが荒いなあ」
上半身裸、汗だくのヒューマ
ヒューマ:「だいたい、何につかうんですか?こんなたくさんのツボとか置物とか」
セレン:「この部屋で冥府に行くためのメイクをするのです」
ヒューマ:「メイク?メイクって化粧?この部屋で?」
セレン:「美しい環境から美しいモノが生まれるのです」
ふ〜んと、気のない返事をするヒューマ
ヒューマ:「ところでセレンは男なの女なの?オレよりデカイ、ジェスよりもデカイし、顔デカイし、声太いし」
青筋が走るセレンのこめかみ
セレン:「ヒューマ」
顔を近づけるセレン
ヒューマ:「なんすか?」
セレン:「いいことヒューマ。私にとっては男とか女とかは関係ないのです。『美しい』。それが私にとっては最高の褒め言葉なのです」
ヒューマ:「な、なるほど」
セレン:「そんな全天地がひれふす美の象徴である私も、勝てない美しさを持つ唯一の存在。それは我が妹ルナ」
ヒューマ:「ルナ?」
セレン:「ルナよ。待っておれ。まもなくこの兄がお前を冷たい死の淵から救い出してあげようぞ」
拳を握り、怒りをあらわにするセレン
セレン:「ハッ?」
天幕の中にはセレン以外誰もいなかった
セレンは懐中から手鏡を出すと、ゆっくりと手をかざす。
鏡の中にこの世の物とは思えない美女の寝姿が現れる
セレン:「待っていろルナ。我が秘術により、そなたを復活させてやろうぞ。お前と私だけの、美しき世界を創造するのだよ」
【港町ポート・オブ・エリア】
【港の入り口】
フレア:「海の匂いって気持ちいいわねー」
深呼吸をするフレア
フレア:「ねえ、ここに引っ越してこない?」
苦笑する左右
フレア:「冗談よ冗談」
沖合に見えるマリア・アズーラ号
フレア:「本当に父さんがそんなこと言ったのか信じられないんだけど」
左右:「しかし、ファロス様のふみの通りです」
フレア:「ま、行ってみましょうか」
【マリア・アズーラ号甲板】
フレアを乗せた小舟が近づいてくる
ベルタ:「フレアさん、納得してくれるでしょうか?」
ファロス:「大丈夫。オレもついているし」
2人の会話に聞き耳を立てているジェスとグレイス
グレイス:「あんた、いよいよ煮詰まってきたよ」
重々しく頷くジェス
グレイス 「じゃあ、私はえーと、ファロスさんの姉になるってこと?」
ジェス:「オレとヒューマは、いとこになるのか?」
グレイス:「まさか、こんなことになるなんてねー。男と女ってわからないわね」
【マリア・アズーラ号 船長室】
母のドレスに着替えたミラン
眠っているミランの髪を整えるサーラ
アリア:「キレイですねミラン様」
サーラ:「そうよ、女の子は誰でもキレイになれるの」
アリア:「私もキレイになれますか?ミラン様みたいに」
サーラ:「もちろんよ。アリアもいっぱい遊んでいっぱい働いていっぱい恋をしなさい」
アリア:「恋ですか」
サーラ:「そうよ。恋をすると女の子はキレイになるの」
アリア:「サーラ様もですか?」
サーラ:「私?私の恋は、もう当たり前になりすぎちゃってね」
アリア:「ヒューマ様ですか?」
サーラ:「うん」
少し頬に赤みが差すサーラ
サーラ:「なんだかんだいっても、私ってヒューマと一緒じゃないとダメみたいなの。さ、フレイ。いいわよ入ってきて」
両手で花を持ったフレイが入ってくる
フレイ:「や、やあ」
それっきり、一歩も動かない
サーラ:「どうしたのフレイ?」
フレイ:「いや、その、女子の部屋に入ったことなんてないものですから」
サーラ:「いいから、いらっしゃい」
強引に腕を引くフレイ
フレイ:「お、おい!」
ミランの前に立つフレイ
サーラ:「どうしたの?フレイ」
眠り姫のようなミランの美しさに、声も出ないフレイ
フレイ:「いや、本当にキレイな女子を目の前にすると、キレイってなかなかいえないものなんだなあ、と」
サーラ:「そういう時こそキレイって言って欲しいのよ。女の子は」
フレイ:「ヒューマも言うの?キレイだって?」
サーラ:「あら、バレてたの?私とヒューマが兄妹じゃないって」
フレイ:「わかるよ。だいたい太陽の子と大地の乙女が兄妹っておかしいよ」
サーラ:「(苦笑)」
フレイ:「で、サーラも言われるの?キレイだって?」
サーラ:「うーん。もうそういうことはいわないかな。なんかそういう言葉がなくても、ヒューマは解ってくれているし、私もヒューマのこと解っているし。でも、たまには言って欲しいんだけどね」
フレイ:「ふーん」
サーラ:「フレイは今まで女の子を好きになったこととかないの?」
フレイ:「騎士を目指す貴族の師弟は、数え7歳の頃から騎士聖堂に寄宿して、騎士になるための教育を受けるんだ。恋とかしたことないなあ」
サーラ:「7歳?大変!」
アリア:「どんなことを学ぶんですか?」
フレイ:「武術、体術、語学、地理、算術かな。でも一番重要なのは調停者としての交渉術かな」
アリア:「コウショウジュツ?」
フレイ:「実際、剣や盾を取って戦うということは、ほとんどないからね。そうなる前に交渉で解決するのが私たち騎士団の役目だから」
サーラ:「ふーん。調停者か。私たちとだいぶ違うね」
フレイ:「サーラやアリアはどんなことを学ぶの?」
サーラ:「種の蒔き方、土のおこしかた、水のやり方とか。だけど一番は大地に無理をさせないことかな」
フレイ:「大地に無理をさせない?」
サーラ:「そう、これ以上種を蒔くと、大地が無理に育てようとして、痩せてしまうとか、牛はどれくらい以上放牧すると草がなくなってしまうとか、そういう大地の声を聞いて、みんなに伝えるの」
フレイ:「その方が難しそうだ」
サーラ:「そんなに難しくないわよ。自然に生きていればいいの。人間が無理をすれば、大地に跳ね返ったりするから」
フレイ:「自然にねえ」
サーラ:「だからフレイも無理しないで。好きな人には好きだって言っちゃいなさいよ」
フレイの背中をドーンと後押しするサーラ
顔中真っ赤になるフレイ 枕元に花を置いて逃げるように出て行ってしまう。
その様子にくすくす笑うサーラとアリア
サーラ:「キレイでしょ、ミラン。もうすぐ、この花を持ってきてくれた人と会えるわ」
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まだ続きます




