母への手紙
【ビル内 ある扉の前】
族長:「この部屋にミランの乳母がいる」
ヒューマ:「乳母?お母さんじゃなくて?」
族長:「ミランの母ミリアムは生まれつき病弱だった。彼女を産んでからは伏せっていることが多かった。それで乳母が必要だった」
扉を開ける族長
族長:「あとは乳母に直接聞いてください」
【ビル内 ミランの乳母の部屋】
赤毛の上品な老婆が静かにたたずんている。
乳母:「ミランのお友達かね?」
フレイ:「はい、フレイと言います」
ヒューマ:「あの、ミランのお母さんに会いにきたのですが?」
乳母:「死んだ・・・」
サーラ:「死んだ・・・?」
乳母:「15日ほど前に。最後までミランの身を案じて」
ヒューマ:「15日?」
◆回想
会議場に現れる空飛ぶ船
叫ぶミラン
大爆発
◆回想終わり
フレイ:「あの、ミラン様は、ミランはどんな子供だったのですか?」
乳母:「ミランか」
乳母は手のひらを見せて火を作り出す
乳母:「あの娘は、伝い歩きをする前からこれができた」
ヒューマ:「えっ?」
乳母:「それはもう大変だった。あちこちに火をつけて歩いて。なんでも燃やしたがって。あの娘は火の民の本卦還りなんだよ」
フレイ:「ホンケガエリって、なんですか?」
セレン:「火の転生。生まれ変わり、ということですか?」
乳母:「その通り。元々ミランの母ミリアムは体の弱さと引き替えに、強い火の力を持っていた。
そのミリアムから生まれたミランはさらに強い火の力を持っていた。ミランは病弱な母のために、太陽のもとで暮らすことを考えた。
きれいな空気。透きとおる空、暖かい大地。そんなものが必要だとミランは考えた」
顔を見合わせ押し黙るヒューマとサーラ
乳母:「あの母子が見ることができたのは、人がいなくなった夜に、またたく星をみることだけだった。それも外界には出てはいけないという一族の掟を破って。そんなことばっかりしておった」
フレイ:「星空・・・」
乳母:「ある時じゃ。どこからここを知ったのか、不思議な者達がきた。『ここではない、迫害のない土地で火の力を存分に使ってみないか』と。ミランは母のために、火の民が堂々と太陽の下で暮らせるようにと、新たな土地へ旅立った」
ヒューマとサーラ:「・・・砂の民?」
乳母:「体の弱いミリアムは、一緒について行くことができずに、ひたすらミランの帰りを待った」
フレイ:「それで、ミランは、どうなったのですか?」
乳母は引き出しからたくさんの『文』を出した。
乳母:「ミランから届いたふみだ。読むかい?」
手渡された手紙を読むヒューマとサーラ、それにフレイ
手紙の朗読:『大好きなお母さんへ。体の具合はどうですか?今日初めて空飛ぶ船をとばしました。星空がぐんぐん近づいてきて、とてもキレイでした。一日でも早くお母さんと一緒に星空を見たいです・・・』
『ミランは最近思うのですが、どうして私たちは薬を作れたり、人の体を治せたりできないのでしょう。お母さんの体を治せない、火の力がミランはちょっとキライです・・・』
『ここには自由があります。誰も私たち火の民を怖がったりしません。ミランは早くお母さんとここで暮らしたいです』
サーラのほほを涙が伝う
口を『への字』にして涙をこらえるヒューマ
乳母:「ミリアムも、ミランと平和な空の下で暮らせる日を心待ちにしていた。それが15日まえほどに突然死んだ。何の手の施しようもなかった。
そういうわけで、協力してやりたいのは山々なんだが、もうミリアムはいない」
【ビルの前】
見送りをする火の民
工場長:「お騒がせした。恐らく今生あうことはないだろう」
族長:「同じ火の民として平穏を願おう」
火の民の女子がサーラの元に駆け寄る
族長:「お前達、他の一族と話すことは禁じているはずだぞ」
女子:「解っています。でも、でも私たちもミランを助けたいのは、この人たちと一緒です」
困ったような苦々しい顔をする族長
女子:「あの、これ。ミランのお母さんが、ミランのために手縫いしたドレスです」
サーラ:「手縫い?」
女子:「私たちは着ているものはほとんどが機械で作るので手縫いはしないんです。このドレスには、ミランのお母さんの気持ちがたくさん込められているんです。
お願いです。これをミランに渡してもらえますか」
サーラ:「もちろん、きっとミランも喜ぶわ」
ドレスを受け取るサーラ
女子:「あなたは、とても懐かしい匂いがします。土のいい匂い。元気になれる大地の匂い」
サーラ:「ありがとう。みんな一緒に住めるような世界になるといいわね」
読了ありがとうございました。
まだ続きます




