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月の使徒

【氷の魔女の居城 女王の間】



ユーベ:「暑い、暑い」

氷が浮かんだタライに脚をつっこみ、かき氷をかきこんでいるユーベ。

片手うちわで、顔中汗だく

ドアが開く

ユーベ:「ノックぐらいしなさいよ」

入ってきたのは大柄な男。がっしりとした肩幅が優雅(ゆうが)なドレスの上からでも良くわかる

顔は鼻から上を隠したマスクに覆われている

口元は女性のそれに近かった。

左右にはこれまた大男が2人

上半身裸で(きた)え上げられた肉体を誇示(こじ)している



セレン:「ご機嫌よろしくないようですね」

ユーベ:「まったく暑くてたまったもんじゃないよ」

セレン:「なるほど。それでご機嫌(うるわ)しゅうないわけですね」

ユーベ:「今日は何の用事?まだ契約更新の時期じゃないでしょう」

セレン:「太陽の子が来ませんでしたか?」

ユーベ:「ああ、来たよ。火の民の村を教えてくれっていうんでね。教えてやったよ」

セレン:「なるほど、わかりました」

退出しようとするセレン



ユーベ:「それだけかい用事は?」

セレン:「はい、それだけです。それと次回の契約更新は、ひょっとしたらお願いしないかも知れません」

ユーベ:「おや、魂を呼び戻す秘法でも見つけたのかい?」

セレンの足が止まる

セレン:「ごきげんよう」




【活火山上空 空撮】


白煙を吐き続ける火山




【活火山全景】


地上からはほとんど()()で姿が見えない。むしろ見えるのは白煙を吐く頂上付近

固まった溶岩大地を踏むフレイの足元



ヒューマ:「すごいね活火山って」

サーラ:「ものすごいエネルギーが詰まっているわ、このヘンの土」

フレイ:「とても人が住めるような所には見えませんが」

工場長:「わたしも、そう思う」



工場長は小振りの壺を出して地面に置く

工場長:「ちょっとばかり暑くなるぞ。特に騎士殿は気をつけてくれ」

三人にサングラスを手渡す工場長

フレイ:「なんですかこれは?」

不思議そうにサングラスを手に取るフレイ

サーラ:「サングラスっていうのよ。こうして使うの」

サングラスをかけるサーラ

フレイもサングラスをかける

なかなか似合っているフレイ

ヒューマ:「目を保護するんだ」

工場長:「では、行くぞ」

どこからともなく火を出す工場長

壺に火をかざす

壺から、猛烈な火柱が立ち上がる



サーラ:「ひっ」

ヒューマにとびつくサーラ

ヒューマ:「なんですか?これは」

工場長:「あの壺の中にはガスが詰まっている」

フレイ:「ガス?」

工場長:「燃える空気とでもいうのかな。炎は燃える時に空気を使う。蜃気楼(しんきろう)をなくすのにはこれが一番だ」

工場長が何を言っているのか、さっぱり解らない3人



工場長:「君たちが見ている火山は幻なのだよ、人が近づけないようにするカムフラージュなのだ」

蜃気楼が消えて、かわりに四角いビル風の建物が現れる

煙突が、煙を吐き出している

ヒューマ:「えっ?」

工場長:「これが本来の姿なのだが」

地響きのようなものが近づいてくる」

工場長:「門番の一台や二台はいるらしいな」

鉄でできたトラのような化け物が咆哮(ほうこう)を上げる


機械仕掛けの門番「メタリオン」が一行に立ちはだかる



フレイ:「工場長、なんとかなりませんか?」

工場長:「そうは言っても、私は戦士ではないし博士でもないし」

セレンの声:「オーッホッホッホッ」

一行の背後からけたたましい笑い声

ぎょっとして振り返る一行

セレンの声:「オーッホッホッホッ」

上半身裸のムキムキ男をしたがえた月の使徒セレン

胸元が大きく開いたロングドレス姿

今回は仮面を外して、ばっちりメイクを決めている



ヒューマ:「えっ?」

サーラ:「誰?」

セレン:「そこをおどきなさーい」

フレイ:「えっ?」

セレン:「あなた方では(かな)いませーん。私におまかせなさーい」

しずしずと歩くセレン

セレンが気味悪くて、道をあける一行

メタリオンと対峙するセレンと大男



セレン:「天よ。月の願いを聞き入れよ。雷鳴を降らせたまえ」

両サイドからセレンに雨傘をさすムキムキ2人

早送り映像のように、一瞬のうちに空に黒い積乱雲(せきらんうん)が立ちこめる

叩きつけるようなスコールに見舞われる一行

セレン以外がずぶ濡れになる

雨があがり、一瞬の静寂

無垢(むく)に月の刻印がある指輪をした指で、メタリオンを指さす

天が割れて、轟音とともに稲妻がメタリオンを直撃する

メタリオンの全身に電気が駆け回り、トラの化け物はガラガラと崩れ 落ちた

メタリオンはがらくたになった

呆然とするずぶ濡れのヒューマとサーラ、それにフレイ



セレンを(にら)むように見ている工場長

セレン:「オーッホッホッホッ。さすが私。たった一撃で終わらせてしまうとは。まさにエクセレント、ビューティフル、グレイト、マーベラス」

サーラ:「はくしゅん」




10人くらいの人影があらわれる。中央に偉そうな男。左右に銃を持った男達

工場長が進み出る

族長:「そなたは北の氏族だな?」

工場長:「私はヘクトールという」

族長:「同じ火の民ならば、なぜここを暴く?それも一族以外の人間を連れてくるなど、正気か?」

工場長:「ミリアムの娘のことで用事がある」

族長:「ミリアムの娘だと!」

工場長:「今は我々とともにある。ミリアムの娘は故あって心を病んでいる」

ヒューマ:「俺たちは彼女を助けたい。それにはミランのお母さんの愛が必要なんだ」

フレイ:「お願いします。ミランのお母さんに会わせてください」



族長:「どういういきさつなのかは、聞かせてもらえるのだろうな」

工場長:「もちろん。ただ申し訳ないが着替えを提供してもらえないだろうか。説明するのは難しいが、ずぶ濡れなのでね。それに女子もいる」

族長:「わかった。手配しよう。案内する前に武器を預からせてもらえるかな」

一も二もなく武器を放るヒューマとサーラ

フレイがやや渋っている

ヒューマ:「ここは従えよフレイ」

サーラ:「ミランのためよ」

フレイは大事な剣と盾を足下に置いた

族長:「そこの派手なかたも、お仲間か?」

セレン:「もちろんです。早く案内しなさーい」

一同:「誰の知り合い?」

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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