予感
【最果ての村 聖堂】
ランプを囲むファロス、フレア、太陽の司祭、それに村長
ファロス:「なんで『空飛ぶ船』がある?」
フレア:「不思議、という言葉では片付けられないわね」
両開きのドアが開き、サーラが入ってくる。
サーラに続いておかっぱ頭の少女がついてくる
サーラ:「遅くにすいません、お父さんお母さん」
二十歳になったサーラ。
女性として成熟した大地の乙女。背中まで伸びる豊かな黒髪が艶を放っている
フレア:「まあ、サーラちゃん。今着いたの?」
サーラ:「はい、本当は夕焼けの頃には村に入ることができるはずだったんですが」
サーラ:「紹介しますわ。私の侍女のアリアです」
アリア:「初めまして、太陽の子ファロス様とフレア様。大地の乙女サーラ様に仕えていますアリアと申します」
深々とお辞儀をするアリア
フレア:「まあ、かわいらしい」
サーラ:「何か・・・あったんですか?聖堂で話し合いなんて?」
顔を見合わせるファロス夫妻、それに司祭と村長
ファロス:「我々だけで悩んでいても仕方ないな」
フレア:「そうね父さん」
【時間経過】
燃えるランプの炎
サーラ:「ミランって言いましたね、その女の子?」
司祭:「そう、ミラン」
サーラ:「その娘、火の民です」
フレア:「知っているのサーラちゃん?」
サーラ:「直接知っているわけじゃないんですがサンド・ピークの施設で研究をしていました。だまされているんです。悪い大人達に」
◆回想シーン サンド・ピークの動力研究所
ミラン:「お母さん、喜んでくれるかな?」
コマンダー:「もちろんだ」
フレア:「まあ、それはひどいわね」
ファロス:「その、お母さんとやらに説得させるしかないな。あんなものが空を埋め尽くすようになったら、パニックになってしまう」
サーラ:「お母さんを?」
フレア:「だって、その子は親に喜ばれるっていうことをダシにされて、いかがわしい物を作っているんでしょ?お母さんにキチンと説得させましょう。そうすればその子もわかってくれるでしょう?」
サーラ:「さすが、ヒューマのお父さんとお母さんですね」
ファロスとフレア「???」
サーラ:「だって、ヒューマはお二人を喜ばせようとして旅をしたんですよ。そうでしょう?」
ファロスとフレア「ゴホンゴホン」
サーラ:「じゃあ、早速、ミランのお母さんを探しましょう」
ファロス:「いや、そう簡単じゃないと思うんだが」
サーラ:「????」
ファロス:「火の民だからこそ、そんなに簡単な話ではないと思うんだ」
サーラ:「?????」
ファロス:「サーラちゃん、もし君の近くで突然家が燃え始めたら誰を疑う?」
サーラ:「それはもちろんです。火を良く使う・・・」
ハッっとするサーラ
フレア:「私たちは間違いなく火を使うわ。寒い時、食事を作る時。火は私たち人間にとってなくてはならないものだし、火を使うことで私たち人間はほかの動物よりも少しだけ賢いのよ」
ファロス:「だが、みんながみんな火を尊い物だとは思っているかと言えばそうじゃない。特に多すぎる火をみんな警戒する。便利であるとはわかっていてもね」
サーラ:「でも、誰かが止めないと、誰かが正しい方へ導いてあげないと。私、一旦メンヒルに戻ってからすぐに立ちます」
頷くファロスとフレア
サーラ:「ところで・・・ヒューマの試練はまだ終わらないんですか?」
言いながら赤面するサーラ
ファロス:「みたいだな」
サーラ:「試練って?なにしているんです?」
フレア:「それは秘密というより、私たちも知らないの」
サーラ:「そんなに大変なことなんですか?」
ファロス:「うーん。どうなんだろうね?」
【山岳都市メンヒル 大地の大聖堂 大広間】
大地の司祭:「それはなりません乙女よ」
サーラ:「どうしてですか司祭様?」
大地の司祭:「放っておけとは言いませんが、首をつっこむことではありません」
サーラは開いた口がふさがらない
大地の司祭:「サーラ様。あなたが世界のことを考えるのは立派なことだと思います。
だが、今はそうではない。大地が、豊潤な大地に戻るために我々『大地の民』が何をするかが重要なんです。大地とつきあうための術を伝播することが重要なんです」
サーラ:「そりゃ、わかるけど」
大地の司祭:「この世界の全ての大地が潤い、皆が多くの実りを手にすれば火など必要ないのです。
それにどうです?太陽の子は、ヒューマ様はなにをしているのですか?」
サーラ:「神殿で、試練をしている、みたいです」
大地の司祭:「そうでしょう。太陽ですら、主神の太陽ですら、自らの役割を全うするために他にはかまっていられないのです。
風の旅人は何をしています?清流の聖女は?」
サーラ:「・・・解りました司祭様」
大地の司祭:「あなたにもしもの事があったら、我々大地の民はどうすれば良いのです?」
【大地の大聖堂 沐浴の間】
砂風呂と湯船の浴槽が2つある
大きな、浅い、乳白色の湯船につかるサーラ
髪を高く結い上げた、うなじにうっすらと汗が浮く
天井が高い広間に湯をはじく音がひびく
肩が見えるくらいまで湯につかるサーラ。胸のど真ん中に手形の跡がかすかに見える
サーラ:「なーんかつまんない」
◆回想シーン
ヒューマ、ジェス、グレイスとともにラクダで駆けるサーラ
マリア・アズーラ号の甲板で潮風を受けながら大海原を疾走するサーラとヒューマ
サーラ:「ヒューマの試練、早く終わらないかな?」
顔の半分まで湯船につかるサーラ
サーラ:「ブクブクブクブク・・・」
赤く光り出すサーラの胸のアザ
サーラ:「・・・え」
胸を押さえ立ち上がる。激痛が胸を襲う
サーラ:「ヒューマ」
浴槽をよたよたと歩き回るサーラ
サーラ:「ヒューマ!」
胸の光りが静まり、激痛も静まる
胸を押さえたまま、辺りを見回す
サーラ以外の誰もいない、だだっぴろい沐浴の間
サーラ:「ヒューマ」
サーラの声が響き渡る
サーラ:「何かヒューマの身に起きたんだわ」
沐浴の間を出るサーラ
【大地の大聖堂 控えの間】
大地の乙女サーラが沐浴をしている間、控えの間で待っている侍女アリア
素っ裸のまま控えの間に入ってくるサーラ
アリア「沐浴は終わりました乙女様?」
サーラ:「ねえ、アリア急いで法衣を持ってきてくれない?私、今すぐに行かなくちゃならないの」
アリア:「ここにあります」
大地の法衣を渡すアリア
渡された法衣に袖を通すサーラ
アリア:「どちらへ行かれるんです?」
サーラ:「あのね、とっても急ぐのよ」
アリア:「ダメです。乙女様」
着替えの手が止まるサーラ
サーラ:「どうして?」
アリア:「司祭様によーく見張るように言われているのです。乙女様をむやみに外に出してはいけませんって」
サーラ:「・・・・」
アリア:「乙女様。今はどこにも行って欲しくありません。私たちのためにも」
サーラ:「じゃあ、あなたも来る?」
アリア:「はいっ?」
サーラ:「司祭様の言うことも良くわかるわ。でもね。私にとって、いいえ、世界にとってもとても大切な人が、今大変なことになっているのかもしれないの」
黙って聞いているアリア
サーラ:「大切な人を放っておけないでしょう?」
アリア:「ヒューマ様ですか?」
ドキリとするサーラ
サーラ:「そう、ヒューマよ。私には解るの。ヒューマが大変なことになっているわ。だから行かなきゃ。ねえアリア?太陽が消えたら困るでしょう?もう消えて欲しくないの」
アリア:「私も行きます」
サーラ:「アリア」
アリア:「私は司祭様じゃなくて、サーラ様に仕える身です。サーラ様の行くところへは、どこまでもついて行きます」
サーラ:「じゃあ、急ぎましょうアリア」
髪をほどくサーラ
読了ありがとうございました。
まだ続きます。




