女王の憂鬱(ゆううつ)
【氷の女王居城 湖】
船で氷の女王の城へ向かう
もやのなかにうっすらとユーベの城のシルエットが見える
【湖 小舟の上】
全員防寒コートに、厚手の帽子を被っている
フレイ:「あのう、お聞きしても良いでしょうか?」
ヒューマ:「なに?」
フレイ:「ユーベ様というのは、どのようなお方なのでしょうか?」
顔を見合わせるヒューマとサーラ
サーラ:「うーん。世界の事を知っている人、かな?」
フレイ:「あのお城にいられると」
ヒューマ:「前よりも小さくなったような気がするけど」
フレイ:「この湖が天然の堀になっていて、防御の面は完璧ですね。ただ、補給路が小舟だけだと心細いですね。籠城には向いていないですね」
サーラ:「あなたたち星の騎士って、いつも防衛のことを考えているの?」
フレイ:「はい、その通りですサーラ様」
ヒューマ:「なあ、『様』とか『殿』とかつけるの止めようぜ。ヒューマ、サーラでいいよ。俺たちもフレイって呼ぶからさ」
フレイ:「解りましたヒューマ様、いえ、ヒューマ」
【女王の居城 湖】
湖を小舟が進んでいく
【氷の魔女の居城 外観】
【氷の魔女の居城 応接間】
簡素な調度類しかない、氷の部屋
待たされている一行
ユーベの声:「お待たせ」
銀色のタイトなセパレートドレスを着たユーベが入ってくる。
ユーベ:「久しぶりね」
氷のような透明感のある肌に鮮血のルージュ
5年間よりも若々しくはつらつな印象の氷の女王
ヒューマとサーラ「・・・・」
ユーベ:「おや、新顔じゃないか」
ユーベの美しさに圧倒されているフレイ
フレイ:「星の騎士団第六等星の騎士フレイザードです」
ユーベ:「星の騎士ったぁ好都合だね。ちょっと待ってよ」
水が張ったブリキのタライを出すユーベ
ユーベ:「それ!」
気合いとともにタライに手をかざすユーベ
ビジバシと音を立てて水が氷に変わっていく
サーラ:「あの」
ヒューマ:「女王、聞いてくれ今度は」
答えずに氷のオブジェを作り続けるユーベ
ユーベ:「ここよ、ここ」
できあがった氷のオブジェの、活火山を指さす
ユーベ:「ここが、あの火の娘が生まれた村よ。さあ行ってちょうだい!」
ヒューマ:「まだオレなにも言ってないよ」
サーラ:「全部知っているんですか?」
ユーベ:「あの娘の暴走を止めておくれ。火の暴走を止めておくれ。私の存亡に関わるんだから。このまんまじゃ溶けてなくなっちまうよ!」
ヒューマ:「知っていたんですか?」
ユーベ:「まだ、時間は残されている。でも、そんなにのんびりもしていられないんだよ」
ヒューマ:「わかった、ありがとうユーベ様」
3人のやりとりを黙ってみていたフレイだが
フレイ:「ちょっと待ってください。火の娘ってなんです?火の暴走ってどういうことですか?ミラン様のお母様を捜し出すんじゃないですか?」
顔を見合わせるヒューマとサーラ
ユーベ:「何も、教えてないのかい?」
うなずくヒューマとサーラ
ユーベ:「教えてやんな。これから先は、お前さん達2人が難しい顔したって解決しないよ」
フレイ:「教えてください」
◆時間経過
炎が揺れる氷の燭台
フレイ:「そんなに大変なことになっていたんですか」
サーラ:「隠していたわけじゃないの。それは解ってフレイ」
ヒューマ:「俺たちも知らないことだらけだし、パニックになっても困るから、話さなかったんだ」
フレイ:「このことを知っているのは?」
ヒューマ:「フレイの他には、オレの父さん、ジェス、ベルタ。それくらい」
フレイ:「そうですか」
神妙な顔のフレイ
バツが悪くなるヒューマとサーラ
サーラ:「あの、フレイ?」
フレイ:「かわいそうですねミラン様は」
サーラ:「え?」
フレイ:「多分、みんなに良かれと思って、自分の力を使っているのに、悪い人たちに利用されている。
御母堂様の誇りと思っているのに、あんなことになって」
ユーベ:「あんたが着ている鎧も火の民が作っているんだよ」
フレイ:「え、そうなんですか?」
ユーベ:「火の娘と同じ部族かわからないけど、昔から星の騎士団は火の民と契約を結んでいるんさ。彼らの技術が金属の加工に役に立つからね」
フレイ:「知らなかった」
ユーベ:「騎士団のエライ人に聞いてごらんよ。村に行くんだったらあんたらだけじゃなくて、火の民の力があったほうが話は早いだろう。
何せ彼らは嫌われ続けてきたから、隠れ里に住んでいるからね。よそ者が行ったところで、『よくぞいらっしゃいました。どうぞこちらに』とはいかんだろうて」
ヒューマ:「なるほど」
ユーベ:「さ、わかったら行った行った!急げ急げ!」
3人を追い立てるユーベ
ヒューマ:「ええ?あの、ありがとう氷の魔女」
ユーベ:「お礼はすべて片付けてからにしておくれ!」
追い出されるように城を出る3人
『なんだったんだ』とややあきれるヒューマとサーラ
フレイ:「さあ行こうヒューマにサーラ。ミラン様を助けるんだ」
勇んで先を行くフレイ
顔を見合わせるヒューマとサーラ
ヒューマ:「よし、行こう!」
サーラ:「がんばるぞ!」
【氷の魔女の居城 バルコニー】
氷の城をあとにするヒューマとサーラ、それにフレイ
その様子をバルコニーから見ているユーベの背中
ユーベ:「はー、疲れた」
老け顔になっていくユーベ。やたら所帯じみた顔になる
ユーベ:「早いところなんとかしておくれよ。そうじゃないと老け込む一方さね」
読了ありがとうございました。
まだ続きます