ゆらぐ平和の中で
【海原 (夜)】
【海中 (夜)】
黒い大理石のような夜の海
細かい水泡が底から沸いている
海中に浮かぶベルタの裸体
【港町ポート・オブ・エリア 沖合】
水平線が割れて、朝陽が昇る
朝陽の中に揺れるマリア・アズーラ号の影
【マリア・アズーラ号甲板 舷側】
外から右手が舷側を掴む
続いて左手が伸びる
左手首を掴む、別の手首
ファロス:「おはようベルタ」
ゆっくりとベルタの体を持ち上げる
ベルタ:「・・・・」
目が驚いている
【マリア・アズーラ号甲板】
甲板に立ち、朝陽を浴びるファロス
ベルタのセクシーな脚がドレスを着ている
黙って朝陽を浴びるファロスと、黙ってドレスを着ているベルタ
ファロスに近づく蒼白のベルタ
ファロス:「1人で海をキレイにしていたのか?」
ベルタ:「・・・・」
ファロス:「どうりで昼寝の時間が長いはずだ」
ベルタ:「キレイな青い海に・・・それが流水の聖女の役目ですから」
ファロス:「何もたった1人で頑張ることないじゃないか。流水の聖女だからって水くさいなあ」
ベルタ:「ぷっ」
思わず吹き出すベルタ
ベルタ:「ダジャレにもなってませんね」
カラカラと笑うファロス
ファロス:「ベルタ手を出してくれないか」
美しい手を伸ばすベルタ
ベルタの手を握るファロス
ファロスの体が太陽色に光り、ベルタも太陽の光りに包まれる
ベルタ:「ファロス・・・さん?」
ベルタの顔に血色が戻る
手を離すファロス
自分の手を見つめるベルタ
しばらく黙って朝陽を浴びるファロスとベルタ
ファロス:「5年か」
ベルタ:「何が、です?」
ファロス:「いや、平和だった時期だよ。5年しか続かなかったというのか、5年ももったというのか」
ファロス:「世間的には平和ですよ」
ファロス:「まあな。最初はそんなもんだろう。火種は徐々に燃え広がるもんだ」
ベルタ:「ずいぶん心配性なんですね。太陽を甦らせた英雄なのに」
ファロス:「今回は太陽の時とは、ちょっと違うからな」
エレガントに小首をかしげるベルタ
ファロス:「太陽が昇るというのは、全ての人の願いだった。全て共通の目標がなくなってしまったのだ。
されば利害が結束を呼ぶことになる。利害の結束は、それ以外のものとの分裂をもたらす」
ベルタ:「それは考えすぎでしょう」
ファロス:「今回、会議の招集をかけたのは月だ」
答えないベルタ
ファロス:「ミランのおかげで全滅はしなかったが、一歩間違えばどうなっていたのかわからん。君は月とはどうなっているんだ?」
ベルタ:「最近、ちょっとザワザワするんです」
ファロス:「ザワザワ?」
ベルタ:「ええ。水も少なからず月には影響を受けるんですが、このところ、それが今まではないような力を感じるんです」
ファロス:「・・・・」
ベルタ:「狂わされるのが怖いんです。月は知の象徴でもありますが、狂気も表しています。
このところ、満月が続いているんです。月は満ちて欠ける。姿を変えるんです。そんなことありえません」
ファロス:「確かに、最近の月の光は強いな」
ベルタ:「水の力を強めるために、海を感じていたんですが・・・私1人で抑えきれる自身があるかどうか」
ファロス:「誰が君1人だといった?」
ベルタはファロスを見る 表情がカタイ
ファロス:「太陽は誰の力で甦った?私1人の力じゃないぞ。君1人の力でもない。みんなの力だ」
固い表情が崩れ、エレガントな微笑みを浮かべるベルタ
ベルタ:「そうですね。私、少し気負いすぎてました」
朝陽を見るベルタ
朝陽の中、ベルタのシルエットが美しく映えていた
読了ありがとうございました。
まだ続きます