月の影
【港町ポート・オブ・エリア】
出航する連絡船
【海上 連絡船】
満月が映える穏やかな波間を進む連絡船
【連絡船甲板(夜)】
後部甲板にて船が通った後にできる波を見ているヒューマとサーラ
サーラ:「私たちだけで船に乗るのって初めてだね」
ヒューマ:「そういえば、そうだね」
ヒューマの顔を見るサーラ
サーラ:「やっと2人きりになれたね」
かなり近くにあるサーラの顔にドキリとするヒューマ
ヒューマ:「そうだね」
サーラ:「ヒューマは嬉しくないの?2人きりになれて」
ヒューマ:「嬉しいよもちろん。でも」
サーラ:「でも?」
ヒューマ:「大変だよね。たかだが幼なじみ2人だけで旅するだけなのにさ、いろいろややっこしくて」
サーラ:「司祭様が言ってた。色々と世の中は複雑になっているって。権利とか利害とか」
ヒューマ:「うん、会議もなんだか良くわからないうちに解散しちゃったしね」
サーラ:「なんで、会議なんてやろうとしたんだろうね?だって100年以上もやってなかったんだって」
ヒューマ:「太陽がなかった時だって、そんなことやらなかったよね」
サーラ:「月の使徒だって言ってたよ。会議をやろうって言ったのは」
ヒューマ:「あんだけたくさん騎士がいたのに、星の守護者はいなかったな」
サーラ:「月の使徒もいなかった・・・」
巨大な水柱が、船を取り囲むように次々と吹き上がる
水煙が消えると、吸盤だらけの触手が船にからみつく
ヒューマ:「なんだあれは?」
船乗り:「デビル・フィッシュ!」
ヒューマとサーラ:「デビル・フィッシュ?」
巨大な吸盤の腕が、連絡船を海に引きずり込もうとしている。
乗客:「うわー」
サーラ:「ヒューマ」
ヒューマ:「まかせろ!」
手のひらから太陽の光を発動させるヒューマ
サーチライトのように、吸盤の手を照らして、焼け尽くして行く
たまらず海の中に逃げるデビル・フィッシュ
サーラ:「なんで私たちが襲われるの?ベルタから力をもらってきているのに」
海面に浮かぶ月明かりの中を、デビルフィッシュの不気味な影がゆらゆらと漂っている
月の海を静かに進む連絡船
【聖都スクード近くの港町 桟橋】
連絡船が入港してくる。
桟橋にはかなりの数の人が船を待っている。
その中に全身銀色の鎧に身を包んだフレイの姿がある
【連絡船甲板】
サーラ:「なんかすごく人、多いね」
ヒューマ:「何かあったのかな?」
接岸する連絡船
桟橋に降りるヒューマとサーラ
【聖都スクード近くの港町 桟橋】
出迎えの人々でごった返す桟橋
フレイの声:「ヒューマ殿、サーラ様」
人混みをかき分けて、フレイががしゃがしゃと音を立てて来る
サーラ:「あれは・・・」
フレイ:「お待ちしておりました。長い船旅ごくろうさまです」
サーラ:「あなたは、確かフレイさん」
フレイ:「星の騎士団、第六等星の騎士フレイザードであります。このたび、お二人の護衛の任を預かり参りました」
ヒューマ:「護衛?」
フレイ:「はい、ファロス様と我が騎士団の二日にわたる合議の結果、私かお二人の護衛に派遣されました」
ヒューマ:「父さんが?」
フレイ:「はい、兄妹だけの旅じゃあ退屈だろうと、話し相手にでもなってくれないか、との仰せをつかりました」
ヒューマとサーラ「きょうだい?」
顔を見合わせるヒューマとサーラ
フレイ:「当初は一個小隊の派遣も検討されていたようですが、あまり目立ってもよろしくないということで、私1人が派遣されました」
サーラ:「そうなんだ」
フレイ:「ご覧ください、帯剣の許しを得てきました。道中の賊は私にお任せください」
剣を振り回すフレイ
ヒューマ:「こんなところで剣振り回しちゃだめだよ!」
【聖都スクード近くの港町 町へ続く道】
フレイ:「しかし、心配しました。何せ7日も戻られなかったので、遭難されたんではないかと町中大騒ぎになっていましたが」
ヒューマとサーラ「7日?」
ヒューマ:「7日って?俺たち船では二泊しかしてないぜ」
サーラ:「何かの間違いじゃないの?」
フレイ:「いえ、道中で追いつこうとおもいつつ、私はお二人が出航されてから次の連絡船に乗っていったのです。すると私の船が先について、お二人の船がまだ到着されていなかったので、ここで待つことにしたのです」
ヒューマとサーラ「7日?」
立ち止まって自分たちが乗ってきた船を振り返るヒューマとサーラ
ヒューマ:「何か感じた?」
サーラ:「ううん?」
読了ありがとうございました。
まだ続きます。