手を取り合って
【港町ポート・オブ・エリア 浜辺】
砂浜に一同が揃っている
ファロス:「のんびりとは言わんが、自分のペースで行ってこい」
ヒューマ:「はい、父さん」
ファロス:「なんだ、そのシケたツラは?太陽はいつも笑っているだろうが、太陽のようにあれ、太陽のように」
ヒューマ:「そうだね父さん」
ファロス:「今だけだぞ、オレみたいに太陽の子になったら自由なんかないんだからな」
ベルタ:「でも、駆け落ちしたんでしょ?」
ファロス:「まあ、そういうこともある。たまにはな」
ジェス:「ヒューマ持っていけよ」
風のブレスレットを投げてよこすジェス
ベルタ:「はい、お守り」
水のアンクレットを渡すベルタ
ヒューマ:「ありがとうジェス、ベルタ」
ベルタ:「町で準備してから行ってね。それまでに船を整えておくから」
ヒューマ:「いろいろとありがとう」
モジモジしているサーラ
サーラ:「あのヒューマ。私も本当は一緒に行きたいんだよ。でも、何かいろいろ難しくなっちゃってさ」
ヒューマ:「解ってる」
サーラ:「本当はネックレス、お守りにしてほしいんだけど、これなくなったら、私、力なくなっちゃうんだ。だからゴメンね」
ヒューマ:「サーラは全然悪くないよ。大丈夫。ユーベ様にはみんな元気でやっているって伝えてくるから」
サーラ:「うん・・・」
ヒューマ:「・・・・」
サーラ:「なんかヘンだね。昔はもっと普通にお話できたのに。お話もできなくなっちゃったね」
笑顔になれないサーラ
何も答えられないヒューマ
ヒューマ:「じゃあ、行きますね。日が暮れないうちに」
一同から旅立つヒューマ
【港町ポート・オブ・エリア 浜辺】
小さくなっていくヒューマの後ろ姿
ヒューマの後ろ姿を見つめるサーラ
ファロス:「さて、ジェス我々もいくぞ、防衛会議とやらに」
ジェス:「会議で防衛できりゃ世話ないけどね」
ファロス:「まあ、そういうな。ちょっと行ってくる」
軽く挨拶をするファロスとベルタ
もう見えなくなったヒューマの背中を見続けるサーラの横顔
サーラからベルタにフォーカスイン
ベルタ:「かわいそうね」
サーラ:「・・・え?」
ベルタ:「かわいそうね、私たちって」
サーラ:「私たちって、私たち?」
ベルタ:「そう私たち。ファロスさん、ジェス、ヒューマ、ミラン、それにあなたよ、サーラ」
サーラ:「私たちが・・・かわいそう?」
ベルタ:「世界を平和に、みんなを幸せにするために、私たちは戦う。
でも私たちの幸せのために戦ってくれるのは誰なのかしら」
サーラ:「私たちのために・・・」
ベルタ:「そう、私たち太陽の子や大地の乙女、風の旅人、清流の聖女、火の探求者も幸せになる権利はあるはずよ。
私たちのために戦ってくれるのは誰なのかしら」
サーラ:「でも、たくさん小麦がとれて、みんなが幸せになったら、それで良いんじゃないの?」
ベルタ:「あなたは幸せ?」
サーラに向き直るベルタ
サーラ:「え・・・」
ベルタ:「太陽が甦って大地が生きかえった実りある世界。5年前私たちはそのために戦ったわ。で、今は望んでいた通りの世界になった。それであなたは幸せ?」
サーラ:「え・・・」
◆回想フラッシュ
・復活祭の夜 砂の民と戦うヒューマとサーラ
・砂漠をかけるヒューマとサーラ
・膨大なエネルギーの中に飛び込むヒューマとサーラ
・南海の孤島 脱出するヒューマとサーラ
◆回想フラッシュ終わり
サーラ:「私、行く」
アリア:「サーラ様」
サーラ:「ゴメンねアリア。私、このままじゃ誰も幸せにできないと思うの。ヒューマと一緒じゃなきゃ私幸せじゃない。だから、行く。ゴメンねアリア」
アリア:「サーラ様、大変でしょうけど気をつけて」
溢れる涙をこらえて、力一杯アリアを抱きしめるサーラ。
浜辺を駆け出すサーラ
振り返ることなく走るサーラの横顔
遠ざかっていくサーラの背中
アリアの頭に手を乗せるベルタ
今まで見せたことがない、母のような笑み
ベルタ:「どうやってウソつこうか?」
アリア:「ウソ?ウソはいけません。サーラ様は正しいことをするために旅立ったのですから。ウソはいけません」
ベルタ:「そうね」
【港町ポート・オブ・エリア 連絡船桟橋】
船員:「忘れ物はないですか?」
ヒューマ:「ああ、大丈夫です」
準備を終えて、連絡船へ乗り込む艀をのぼるヒューマ
サーラの声:「待ってー」
走ってくるサーラ
ヒューマ:「サーラ・・・」
息を切らせるサーラ。ほほが上気している
ヒューマ:「見送り?ありがとうサーラ」
サーラ:「ヒューマ、忘れ物」
ヒューマ:「えっ?オレ何か忘れた?」
荷物の中や服をかき回すヒューマ
サーラ:「私よ、私」
ヒューマ:「サーラ?」
サーラ:「そう、私のこと忘れたでしょ?」
ヒューマ:「え、あの、その」
サーラ:「私がいなくて平気?」
一瞬きょとんとするヒューマ
サーラ:「私がいなくて平気?」
ヒューマ:「平気じゃない。サーラがいなきゃ困る」
サーラ:「すごい偶然ね。私もヒューマが一緒じゃないと困るの」
手を差し出すサーラ
サーラの手をしっかりと取るヒューマ
読了ありがとうございました。
まだ続きます