再会
【港町ポート・オブ・エリアに向かう街道】
【馬車の外】
悪寒を感じて身をすくませる馬上のヒューマ
ファロス:「どうしたヒューマ?」
ヒューマ:「父さん、あそこ」
ヒューマの指さす上空から、近づいてくる黒い影
空飛ぶ船が近づいてくる。
ファロス:「来たぞ!」
騎士達の注意が上空に向けられる
馬車から顔を出すサーラ
サーラ:「ヒューマ、ミランが!」
ヒューマ:「サーラ、隠れているんだ!」
オリバー:「4列守備を取れ」
盾をかかげて号令するオリバー
騎士達が空飛ぶ船に対峙するように守備陣形を取る
オリバー:「ファロス殿、我々は鉄壁の守備をいたしますゆえ、攻撃お願いします」
ファロス:「守備だけ?」
オリバー:「我々は今回、帯剣の許しを得ておりません」
ファロス:「まあ良い。行くぞヒューマ!」
その威容を見せる空飛ぶ船
空飛ぶ船の機体が割れて熱射砲の準備が始まる
ファロス:「いかん、あれを食らったら今度こそ終わりだぞ!」
ヒューマ:「逃げるんだ!」
オリバー:「星の騎士団に撤退はありません」
街道の影から20人ほどの影が躍り出る
騎士団:「すわっ!新手のくせ者!」
現れたのはド派手なポンチョの一団
ヒューマ:「風の民!」
騎士団:「なんだと?」
ジェス:「ヒューマ!無事だったか!」
ヒューマ:「ジェス!」
ジェス:「話は後だ。野郎どもアレをやるぞ」
空飛ぶ船と対峙する風の民
ファロス:「おい、みんな伏せろ!『アレ』のばっちりを食うぞ!」
伏せるファロスとヒューマ
騎士団は『アレ』の意味が分からずに、守備陣形を崩さないでいる
ジェス:「世界を駆けめぐる永遠の旅人たる風よ!今一時われの元に集結し邪なるものを吹き飛ばしたまえ!」
猛烈な風が巻き上がる
風の民:「聖なる風よ!吹けえ!」
猛烈な竜巻が空飛ぶ船に襲いかかる。飛んでいるのがやっとの空飛ぶ船
ジェス:「あと少しだ」
フレイ:「すごい風だ!」
フレイの手から盾が風に飛ばされる
フレイ:「盾が!」
盾はふらふらの空飛ぶ船にぶち当たり、船がさらにぐらつく
騎士団:「(どよめく)」
ファロス:「それだ、全員盾を突風に乗せろ!」
オリバー:「バカを言うな!盾は我が星の騎士の誇りであり名誉の象徴だぞ!そんな事できるか!」
ファロス:「ここで黒こげになるのと、盾を新調するのとどっちを選ぶんだ!」
オリバー:「やむを得ん」
盾を手放す騎士達
盾がぶち当たりめった打ちになる空飛ぶ船
空飛ぶ船はこらえきれなくなり、竜巻に絡め取られて海面に激突した
陸からも見えるほど巨大な水煙が昇る
ヒューマとファロス「やったー!」
憮然とする騎士団
【港町ポート・オブ・エリアに向かう街道】
ヒューマ:「ジェス、来るのが遅いよ!」
サーラ:「ジェス、ジェスなの」
馬車から出てくるサーラ
ジェス:「わりぃわりぃ。でもピンチに出てきた方がヒーローっぽくていいだろ?」
腕輪を見せるジェス
【港町ポート・オブ・エリア 郊外】
多数の馬車と騎士が警戒中
【港町ポート・オブ・エリア 郊外 馬車の中】
ミランのベッドの周りにいる、ジェス、サーラとアリア
ジェス:「あんまり良く覚えてないけど、こんなに美人だったっけ?」
サーラ:「キレイになるのよ。女の子は」
冷やした布を取り替えるサーラ
サーラ:「きっととても充実した日を送ったのね」
ジェス:「じゃあお前もかサーラ」
サーラ:「ま、人をからかって!」
カラカラと笑うジェス
ファロスとヒューマが戻ってくる
サーラ:「どうでした?」
ファロス:「あまりよろしくないね。町は厄介事には巻き込まれたくはないらしい。戦闘がおきるんじゃないかと大騒ぎになっている」
ヒューマ:「騎士団は騎士団で、盾を失ったのがそうとう納得いかないらしい」
ジェス:「ケッ!頭のカタイ連中だぜ」
ファロス:「仕方ない。守ることが専門だからな。人間守りにはいると頭は固くなる一方さね」
サーラ:「なんとかならないんですか?女の子なんですよミランは。馬車の中じゃ、いくら心がなくなったからってかわいそう」
ジェス:「でも、こいつは俺たちのお荷物になるかもしれないんだぜ」
サーラ:「ヒューマが言ったんです。この子はこの世界にとって大切な人だって。ヒューマの大切な人なら、私にとても大切な人なんです」
「どうしたもんか」と顔を見合わせるファロスとジェス
一等星の騎士オリバーが入ってくる
オリバー:「お待たせしました。町との交渉は、まあ決裂いたしまして、住居の提供は無理でした。その代わり港の一画を提供してもらえました」
サーラ:「そんなあ」
オリバー:「ただ、そのお方は我々星の騎士団が盾の名誉にかけましてお世話いたします」
ジェス:「さすがは世界最高の守備力を誇る星の騎士団」
オリバー:「ただひとつお願いがありまして、風の民の協力がないと完璧な守備が構築できないというのが先ほどの戦闘で判明いたしましたので」
ポカンとするジェス
ファロス:「(爆笑)完璧な守備には完璧な攻撃が必要なんだよジェス」
ジェス:「おいおい冗談じゃねえよ。ここにいるのもヤバイってのに、ずっといたらマジで怒られちまう」
ヒューマ:「怒られるって、ジェスは族長じゃないか」
ファロス:「『母は強し』、というがグレイスも強くなったもんだ」
フレイが入ってくる
フレイ:「失礼いたします。お客様です」
オリバー:「お客?」
フレイ:「はい、マスター。風の族長殿の奥方様です」
ジェス:「ほら、もうやってきやがった」
頭を抱えるジェス
フレイ:「ものすごいキレイで、とても色っぽい方ですね。私はあのような美しい女性をみたことがありません」
ジェス:「色っぽい?」
オリバー:「なるほど。お通ししなさい」
フレイ:「それとマスター。一等星の方々がお呼びです」
オリバー:「おお、これはみなさま一旦失礼します」
オリバーと入れ違いで『お客』が入ってくる
黒いブーツの足元
ベルタ:「そんなに怖がらなくてもいいじゃない、兄さん」
一同:「ベルタ!」
黒いレザーのビスチェ、黒いレザーのイブニンググローブ、
黒いレザーのタイトミニスカート、ピンヒールの黒のロングブーツ、
金の土台にサファイアをあしらったアンクレット
黒地に白いドクロをちりばめたマント
今回は裏地のカラーが青になっている
ベルタ:「久しぶりねみんな」
一同を見回す言うベルタ
ベルタ:「大丈夫よジェス、姉さんはそんなに怒ってないわよ」
ミランに近づくベルタ
ベルタ:「この子が『火の探求者』なのね」
ヒューマ:「ベルタも見覚えあるだろ?」
ベルタ:「かわいそうに。まだ悪い大人達に騙されているみたいね」
押し黙る一同
ベルタ:「一旦、世間から離れされたほうが良いみたいね。私の船に引き取るわ」
サーラ:「ベルタの船?」
ベルタ:「水の上にいれば、いくらか火の力も弱まるというものよ」
読了ありがとうございました。
まだ続きます