シェフ:なななん様その2
私が壁で待機してたら、書いてくださいました!
壁ドン(女から男への)シチュエーションです。
にへら♡
「なに壁にひっついてるの?」
「この壁の材質が気になる。この漆喰に混ぜてあるのが砂なのか粘土なのか……あの、それが無いと見えないんだけど」
僕は振り返って見ると、彼女は僕の手から取ったルーぺを持って、にっこり笑っていた。
「今なにしに来てるか、知ってる?」
「あ……デートです……」
いつの間にかとん、と囲われて彼女が少しだけ見上げてくる。笑っているけれど目がこわい。や、やばいっ。
「分かってやってるんだったら、ちょっとお仕置きものだよ?」
「い、いえいえ、あの、すみません。一瞬忘れて……あ……」
「ふーーーん、忘れて、ね」
僕は普段さらさらの髪がゆらりと立ち上がる幻を見た。
あーまずいっ、これまずいヤツ!
細い指が僕の頬を掴むと、ぎゅいっと引っ張った。
「いったいたいっ、ごめんなさいっ」
「……」
笑顔からちょっとだけ涙目になった彼女は、僕の頬を掴んだまま、くんっと背伸びをした。
「……忘れないの」
「も、もう忘れられられないです」
「なにそれ、られられって」
あはっと笑って身体を離した彼女の手をそっと握る。
「ごめんね」
「……今度やったらもっとひどいから」
「そ、それは、うう、自重します」
「よろしくお願いします」
もっとひどいって、もっとひどいって、それはそれで困るようなご褒美のような……
僕はにへらっとにやけながら彼女と二人、冷んやりとした蔵から出た。
fin