シェフ:なんたこす
活動報告でのお遊びで、なななん様と交互に書かせていただいたお料理です☆
合作ですので、シェフ名を「なんたこす」とさせていただきました。
シェフのほうが食べ物っぽい(笑)
僕の彼女はカレーが好き。
どこか食べに行こっか、と聞くと、
「ナンカレーがいいー」
「たまには違うとこに食べに行こうよ」
「やだ。ナン食べたいもん」
「もー、仕方ないなぁ」
結局僕たちは近所のインドカレー屋さんに行く。
「イラシャイマセー なん名サマー」
「二人です」
「チカクノオセキドゾー」
インド人の店員さんに言われて、いつもの定位置に座る。
「いつも思うんだけどさ、近くのお席じゃなくて、お好きなお席だよね」
「んー、でも分かるからいいんじゃない?」
「そう? 僕意外と気になっちゃうんだけど」
「うん、知ってる」
彼女に軽く流されつつも、うお、知ってるんだ、とちょっとドギマギしてしまう。
僕はキーマカレーを頼んで、彼女はほうれん草カレーを頼んだ。そしてドリンクは二人ともマンゴーラッシー。
辛いもの後には甘いものが食べたいのだ。
待つこと十分。
「お待たせしました、ドゾー」
そう言ってインド人店員がナンと一緒にキーマカレーとほうれん草カレーを持ってきた。
なんだかんだ言いながら、ここのカレーは大好きだ。
相変わらず食欲をそそるスパイシーな匂いがたまらない。
テーブルに置かれた料理を見て、僕のお腹がグウグウと恥ずかしい音を奏で始めた。
「あはは。たまには違うとこって言っておきながら身体は正直だね」
「お腹空いてたからね」
「料理を前にお腹を鳴らすなんて、子どもみたい」
「そ、そう? 大人だってお腹が空いたら鳴るよ?」
「ならないよー。我慢できるもん」
そう言ってケタケタと笑う彼女。
うっそだー。と思っていると、彼女のお腹からもキュウ~と微笑ましい音が鳴り響いた。
「はおわっ!?」
「あはは、お互い様じゃん」
「こ、これは、その、えーと……」
顔を真っ赤に染めながらあたふたする彼女の可愛らしいこと。
「あれー? 料理を前にお腹を鳴らすなんて、子どもみたいって言ってなかったっけー?」
「違う違う! 今のはえーと……」
「大人だったら我慢できるんじゃなかったっけー?」
「……もう、いぢわる!」
ツン、とちょっと拗ねた彼女に僕はひとしきり笑ったあと、
「ごめんごめん」
と言いながら、ほうれん草カレーをのせたナンを差し出した。
「ちょっとからかっただけだよ。はい、あーん」
拗ねた顔をした彼女は、拗ねた顔をしながらも僕の差し出したナンをチラリと見ると。
子どものようにパクリと食べた。
美味しそうにナンカレーを頬張る彼女は、何度見ても可愛かった。
お互いにきれいにカレーを平らげると、見計らったように定員さんがどんっ、とマンゴーラッシーを持ってきてくれた。
「マンゴーラッシーネ」
「え? こ、これ?」
「いつもと違うよ?」
僕らの前に置かれたのはビールジョッキに並々と注がれたマンゴーラッシー。しかもストローが繋がっていて、ようするに飲もうと思ったら顔を近づけて飲まないといけない、あの、恥ずかしいやつ。
「ドンタコス3周年記念ネ。お客サン、いつも仲良しサンだから特別ストローツケタネ。ゴユクリー」
店員さんは白い歯をにこりと見せて早々に厨房へと消えて行く。
目の前にはあり得ないでかさのマンゴーラッシー。
「……ど、どうする?」
「や……飲む、べきだと、思う、けど……」
けど、の後が続かない彼女を見ると、ストローをじっと見ている。その頬がどんどん赤くなってきて、ちろっとこちらを見た瞳がうるうるしてる。
ちょ、ちょっと、お外でその顔はダメでしょ!
僕はあたふたとしながら周りをうかがうと、隣の家族連れは口元を押さえながら見ないふりをしてくれているし、厨房を振り返るとあの店員さんがにこにこと生暖かい目でこちらを見てる。
こ、公開処刑?!
これは早く飲んでこの場を去らなければならない。というか、この彼女の顔を他にさらすわけにはいかぬ。
これ見ていいの、僕だけ!
「早く飲んでさ、は、早く帰ろう」
「う、うん、そうだね」
僕と彼女は同時に顔を近づけた。
頭と頭を寄せ合ったその瞬間。
「あ痛!」
「ぎゃ!」
お互いの頭がごっつんこ☆
まさかの展開に隣の家族連れが「プッ」と笑う。
インド人店員は見ないフリしてヨガダンス。なんでやねん。
「いった~」
頭をおさえながら彼女がつぶやく。
やっぱり慣れないことはするものじゃない。
「ちょっと。顔、寄せ過ぎだよー」
「あなたのほうが寄せ過ぎよー」
「僕はコップに対して半分しか寄せてないよ?」
「頭デカいんだから、その分計算してよー」
「ひどひっ!」
そうやって言い合う僕たち。
けれども、これがいつもの自分たちだ。
そこにちょっとホッとしてる僕がいる。
気づけば、まわりのお客さんたちが微笑ましい顔で僕らを見つめていて。
なんだか急に恥ずかしくなった。
それに彼女も気が付いたようで、キュッと黙り込んだ。
「……こ、交互に飲み合おっか」
「……うん、そうだね」
そう言って、僕らはお互いに顔をかくかくと動かしながら、まるで二羽の鳥が交互に動く置物のようにマンゴーラッシーを味わった。
fin
追加の小話
「そういえば、知ってる?」
「なにが?」
「辛い物ってさ、脳内麻薬を発生させるんだって」
「どういうこと?」
「つまりね、辛ければ辛いほど幸福感を得られるらしいよ」
「そうなの?」
「だから君がカレー好きなのは、そういうのを求めてるからなんじゃないかなーって最近思うようになった。僕といるよりもカレーを食べてる方が幸せなんじゃないかってさ」
「あははは、そうかもね」
否定せんのかい!
ケタケタ笑う彼女を見て、僕は「はあ」とため息をついた。
僕は辛い物なんか食べなくても彼女といるだけでじゅうぶん幸せなのに。
くそう、カレーなんかに負けないぞ!
今度来た時はきちんとマンゴーラッシーを二人で同時に飲もうと心に誓った。