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シェフ:なななん様

12月25日のクリスマスプレゼントでいただいたお話です。

私の好きな言葉「ひだまり」と「笑顔」で書いてくださいました。

 今日は休日、お互いの休日。

 ぱたぱたと朝から家事をやっつけて、僕は寝ぼすけの彼女を起こす。

 同棲を始めて半年、わかっちゃいたけど、彼女の動かなさにびっくりし通し。


 同じ職場の先輩で、僕が入社したての時に仕事を教えてくれたカッコいいキャリアウーマン。

 奥二重の目はきりっとすると一重になって、ふわりと笑うと目が無くなるのがギャップ萌え。

 後ろで一つにまとめた髪はいつもほつれなくキリリとまとまっていて、タイトスカートで大股に歩く彼女は新人社員の憧れだった。


 入社2年目の時、彼女の部署異動が決まり、もう社内で会えないかもしれないと勇気を出して告白したら、あっさりOKを貰ったけれど、フタを開けてみたらびっくり仰天。

 仕事中はあんなにキリリと働いているのに、オフになるとぐでんぐでん。

 確かに言った。

 彼女はちゃんと。


 付き合ってもいいけど、たぶん幻滅するよ?


 告白の時に彼女は苦笑して言ったのだ。

 ビル風に吹かれて少しほつれた髪に手をやり、奥二重の目を伏せながら。

 無我夢中でそれでもいいです!と会社の屋上で叫んだ僕に、じゃあ、よろしくお願いします。とにっこり笑った彼女は、ちゅっと契約のようにキスをした。



 休日、気合いを入れて遊園地のデートに誘っても、DVD借りてお家でごろごろしたいと言われ、江ノ島に花火を見に行こうと誘っても、人が沢山だからイヤ、映画館なら付き合う、と言われ、僕が想像していた恋人になったらするであろうデートプランはことごとく断られた。

 せめて、プロポーズはホテルの夜景が見えるところで、と指輪の入ったケースを渡そうとすると、彼女はにっこり笑ってまず同棲してみよう? と言った。


 僕はのらりくらりとかわされているのかと思ってしょげると、そうじゃなくて、と苦笑して、


 私が怖いの、だって動けないんだもの。

 あなたが思うよりずっと動けないんだもの。

 頑張るけれど、自信ない。


 彼女は目を伏せて、こくりと白ワインを飲んだ。奥二重の目元が震えていて、僕は彼女が本気で怖がっている事を知った。



 大丈夫、任せてよ、

 僕、家事得意だからさ。



 胸を張って応じた僕に、ほんと? と彼女はそっと目を上げた。

 右側に広がる夜景と相まって、キャンドルライトに灯されたほのかな明かりと共に彼女の瞳が揺れる。


 大きく頷く僕に、やっとふにゃり目が無くなるまで笑って、ありがと、と言った。


 家の中でしか見せない、素の笑顔に、僕はドギマギしながら、じゃあ指輪を、と差し出すと、うん、預かるね、とすぐにおすましになっていつものキリリ顔になってしまった。


 預からなくても貰ってくれればいいのに。


 と呟くと、一緒に暮らしてみてから。


 と一重になったおすましさんはばっさり言った。




 それから、半年。

 僕らは一緒に暮らしてみた。

 彼女の動かなさは本当に半端なかった。

 まず朝が起きれない。気がつけばどこかに転がって昼寝している。とにかく休日のほとんどを眠っているのだ。


 そして平日朝はキリリと6時前には家を出て、夜は11時ぐらいにしか帰ってこない。

 ちょこっと話してお風呂入ってバタンキュー

 めくるめく甘い同棲生活を夢見ていた僕は、のっけから出鼻をくじかれ、週末は溜まった洗濯や家事に追われ、彼女はぐーぐー眠っている。



 わかっちゃいたけど、承知の上でだけど!

 僕はただの家政夫かい!



 僕が思い余って吐き出すと、南の部屋の、陽だまりが当たるラグで猫のように丸くなって転がっていた彼女はむくりと起きてちょいちょいと手招きした。


 まだ、洗濯の途中。


 僕はふてくされてランドリーカゴを持って言うと、いいから来て、と彼女は言った。


 僕は仕方なくカゴを横に置き、彼女の顔を見なくていいように横に座る。


 僕だって、怒るときは怒るんだ。


 そしたら彼女は、僕のあぐらの膝の上にこてんと頭を乗せて、僕のお腹にぐりぐりと顔を埋めた。そしてぴっとりくっついてそのまますぅすぅと寝てしまった。


 な、な、な!


 僕は怒っているのに、洗濯も途中なのに、何してくれるの、動けないし、なんだこの、ちくしょ、……可愛い。


 普段は一つでまとめている髪は、ほどくとゆるくふわりとしていて、触ると細いくて滑らかなんだ。


 ああもう、と思いながら髪の毛をすくと、くすぐったそうに喉をならした。


 起きてるの?と聞くと、起きてないよ?と答えてまたお腹にぐりぐりと鼻を押し付けてきた。


 なんなんだよもう……


 僕はにやけそうな顔をいましめて怒った風に言うと、彼女はもぞっと上を向いて左手をにゅっと出した。


 そろそろ、いいかな、と思って。


 目の前に伸びた指に、僕のなけなしの給料だった物がはまっている。


 と、突然どうして?


 僕は驚いて下を向くと、彼女はふにゃりと笑っていった。


 そろそろ怒ってくれるかな、と思ったから。

 それでちゃんと怒ってくれたから。


 そしてむくっと起き上がると、ぴしっと正座をして言った。


 ちゃんと、自分の気持ちを吐いてくれてありがとうございます。

 ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします。


 僕も慌てて正座をして言った。


 こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。


 お互いに頭を下げあってむくりと上げて、あはは、と笑いあった。


 彼女がおどけたように大きく両手を広げたので、僕も同じく大きく広げてどんと来いと構えると、えいっと飛び込んできた彼女。


 支えきれなくてラグに転がったのはご愛嬌。

 僕の上に乗り、ふにゃりと目が無くなるまで笑った彼女は、告白した時のように、ちゅっと可愛いキスをして、僕の頬にすりすりと柔らかな頬をすりつけた。


 陽だまりの中、僕は可愛いお嫁さんを手に入れた。


 ……その後も、僕はぱたぱた家事したけどね。





fin

いてもたってもいられなくなり、その続きを書かせていただきました☆



 今日も僕の寝ぼすけさんは陽だまりの中で眠ってる。

 気持ちよさそうに、微笑みながら眠ってる。


「うふふふ」


 ときおり聞こえる寝言が、幸せそうだ。

 いったいどんな夢を見ているのやら。


 そんな彼女を起こしたくなくて、静かに洗濯物をかわかす。

 誰にも見られたくないから彼女の下着だけは部屋干しだけど、寝ている本人の近くで下着を干すのはやっぱりドキドキする。

 言っとくけど僕は変態じゃない。

 と自分に言い聞かせ、彼女の可愛らしい下着をピンチで止めていると、ものすごい視線を感じた。

 振り向くと、彼女がそのきれいな奥二重の瞳でじーっと僕を見つめていた。


「あ、あれ? 起きてたの?」


 下着を握りしめながら、あたふたと問いかける。

 もう一度言うけど、僕は変態じゃない。

 けれども、彼女の下着を持って慌ててる姿なんて、端から見たら怪しい人物以外の何者でもない。

 もしかしたら彼女には変態に映ってるかもしれない。


「こ、これ……かわかそうと思って……」

「そう……」

「別にいやらしいとか、そんな気持ちじゃないから」

「う、うん……」


 ぎこちなくうなずく彼女。

 なんだか言い訳してる自分もぎこちない。

 だからすぐに話題を変えた。


「ち、ちょっと待っててね。これ干し終わったらお昼ごはん作るから」

「うん……」


 そう言ってむくりと起き上がる彼女。

 そして何を思ったのか、おもむろに僕のトランクスパンツをランドリーカゴから取り出した。


「……?」


 僕はそれを黙って見つめていた。

 彼女が洗濯ものに手をかけるなんて珍しい。

 ポカンとしていると、彼女が訊いてきた。


「これ、隣に干してもいい?」

「い、いいけど……?」


 そう答えると、彼女はいそいそと慣れない手つきで僕の下着をハンガーにつるした。

 僕の下着は防犯の意味も込めていつもベランダに干すから、なんだか恥ずかしい。


 部屋干しハンガーに並ぶ彼女の下着と僕の下着。


 こうやって見ると……ちょっといやらしい。


「あ! いまなんか変なこと考えたでしょ!?」


 心の声が聞こえたのか、彼女がきつい口調で尋ねてくる。

 慌てて僕は否定した。


「う、ううん! なんにも!」

「うそ!?」

「ほんと」

「絶対うそよ。だって顔、赤いもの」


 えっ!? と思いつつ、顔を隠す。


「そ、そう!? でも、そういう君だってヨダレたれてるよ」

「えっ!? うそっ!?」


 慌てて口元をぬぐう彼女に僕は「くっくっく」と笑った。


「なんだ、君も変なこと考えてたんじゃん」

「あー、騙したなー!」


 そう言ってポカポカと胸を叩いてくる。

 ああもう、可愛いなあ!

 いつも仕事中はバリバリのキャリアウーマンなのに、素の表情はまるで猫のようだ。


 このギャップ萌えがたまらない。


 僕はそんな可愛い彼女の身体を胸の中に抱き寄せ、そのキュートな唇にキスをした。

 ぷるんとした感触は柔らかくてあったかくて、気持ちよかった。


 ああ、幸せだ。

 籍はまだ入れてないけど。

 式はまだ先だけど。


 彼女は最高のお嫁さんだ。



 僕はキスをしながら仲良く並ぶ自分たちの下着を見て、もしかしたら今日はもう一枚ずつ干す下着が増えるかもしれないと思った。

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