シェフ:山之上 舞花様
恋愛作品を書かせたらこの方! 山之上 舞花様からいただきました。
ぜひご賞味ください。
ピンポーン
玄関のチャイムがなり、誰だろうと思いながら淳子はインターホンを見た。そしてパタパタと玄関までいった。
「どうしたの、珍しいじゃない。連絡なしで来るなんて」
「なあ、淳子。いま暇か」
「暇っちゃ暇だけど」
「じゃあ、ケーキ食べにいかねえ」
「ケーキ! 行く行く!」
部屋着から外出着に着替えて、幹彦の車に乗りこんだ。
けど、なぜか助手席にはタブレットが置いてあった。邪魔だなと思いながら、それを抱えて座った。
なのに幹彦はすぐに車を走らせようとしない。どうしたのだろうと彼を見ると、何故か少し顔を赤らめている。
いつもと違う彼の様子に薄気味悪く思ったので、適当なことを言って車から降りようと思った。
のに、ガシッと腕を掴まれた。
・・・
違った。
抱えたタブレットを操作してある物を見せてきた。なので、それを読む。
読んだ私は・・・。
自分の頬も赤くなっているのが分かる。
それを誤魔化すように、幹彦に軽くパンチをあてた。
「つまり、これをしろと?」
「・・・」
何も言わないけど、赤い顔が物語っている。
「じゃあさ、こうしよう。ケーキを買ってきて、家で食べよう。それなら、これみたいにしてあげてもいいよ」
うん。我ながら名案! 他の人が見ている前でするなんて、どんな拷問よ。
「・・・店でがいい」
「・・・はあ?」
「お店でやってみたい」
おい。あんたは自分のことを分かってないのか。ただでさえ図体がでかいあんたは目立つのよ。それなのに、お店でバカップル丸出しの行為をしたら、どれだけ注目されると思っているのよ。
出かかった言葉は、幹彦の顔を見て引っ込んだ。
真っ赤になりながらも、真剣な顔で見てきている。
そういえば、外でのデートでイチャコラしたことがなかったな~と、今更ながらに思い至った。身長が189センチもあるクマのように目立つ男といるだけでも注目を浴びるのに、イチャコラなんかできるかとあしらっていたからね。
私は「ふう~」と息を吐き出して言った。
「もう、仕方がないな~。その代わり、幹彦はモンブランを頼むこと。いい!」
「淳子~!」
「はいはい。それじゃあ、行きましょう」
私は口元に手を当てた。
想像して緩んでくる口元を隠すために。