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いつかの君に花束を  作者: BOOK
序章「とある居酒屋にて」
1/1

~Time after time~

とある飲み屋街。

あちこちでスタッフが客を呼び込む声が響き、昼とは違う顔を晒している。

その中の一つ、居酒屋「みどり家」に、二人の男の影があった。

どちらもスーツ姿に、シルバーの腕時計。

一見してサラリーマンが仕事帰りに飲んでいると解る風貌だ。

片方は解りやすく酔い潰れており、顔を赤くして机に突っ伏している。

もう片方も少し顔を赤くしているが、ウィスキーを傾けながら悠々と楽しく飲んでいるのが窺える。

「随分飲んだな、もう馬鹿みたいな真似はよしとけよ。」

ウィスキーを置いて、男が話しかける。

聞いているのかいないのか、相手は突っ伏したまま動かない。

「何にもならないだろう、そんな事をしたところで。」

構わず、男は続けた。

相手はゆっくりと顔を動かし、男を見る。

その目には生気はないものの、涙が溜まり、今にも溢れそうになっていた。

「俺だって、そんなつもりもなかったですし、できるならやりたくなかったですよ。」

子供が駄々をこねるように、言葉を発した。

片手に持ったビールジョッキをガタガタとテーブルに打ち付けながら、盛大なため息を吐く。

「先輩みたいに、ポジティブに生きたいです。」

先輩と呼ばれた男は、グラスに少し残っていたウィスキーを空にし、再度同じ物を注文した。

「そう腐るなって、何も俺の人生が正しいって訳じゃないんだ。」

枝豆を口に入れながら、自分にも言い聞かせる様に話す。

後輩は腑に落ちない、という表情でボソッと呟いた。

「俺の人生、どこで間違えたんですかね」

その言葉には、深い後悔と、強い侮蔑の感情が込められていた。

「生き方なんて、自分以外に評価できないじゃないか」

誇りを持つも、恥に思うも、正しいも、間違いも、全ては自分の意思次第、と先輩は続けた。

後輩は苦虫を噛み潰したような顔になる。

どうして、そんな風に思えよう。

自分の評価は、間違いなく他人が決めるというのに。

恐らく、この考えこそ、先輩からしたら間違いなのだ。

「俺は、自分を見つめ直す必要があるのかもしれません。」

ゆっくりと、噛み締めるように吐き出した。

逃げ出した過去。

目をそらし続けた後悔。

全てを見つめ直すことが今、必要なのだと、後輩は感じていた。

「なんだよ、一人で割りきってないで話せって。」

ウェイターが持ってきたウィスキーを受け取りながら、先輩は投げ掛ける。

酔いも手伝って、今ならば何でも話してしまえそうだ。

「先輩、聞いてくれますか...」

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