第1話 No job No LIFE
VRMMOに閉じ込められた俺、月岡正樹は森に転送されていたので近くの始まりの町リンリベールに行った。
前作同様、町の名前は変更はしていないが建物の追加は行った、自分はともかく他の人が閉じ込められる事になったら会社の信用は下り坂、Fギアも販売禁止にされてしまう。
俺はどうせ先は短くないんだしここで余生を過ごしてもいいと思っていたが、ある設定を忘れていた。
「Fギア装着中に死亡した場合はゲーム内のアバターで生きることになる」
と俺は設計時に言っていたのを思い出した。
「マジか・・・てかこのアバターは16歳と仮定して作ったんだよな」
前作、自分はアバター作成時に「年齢を偽ろう」と言って若いイケメンアバターでログインをしていた。
ということはだ、平均寿命が80歳と仮定した場合・・・
「64年も生きれるのか・・・」
現実では65歳の俺が若返るというのはすごく嬉しいもんだと俺は思っていた。
話は変わるが始まりの町、リンリベールは新規プレイヤーのために中心部に武器屋が何個かあるはずなのだがそれらしい店は一個も見当たらない。逆に教会や酒場などしか無く、この町を例えると「平和」という文字しか出てこない。
「武器屋が無い・・・何故だ」
その店は消滅か最初から存在していないと俺は予想した、だが冒険者が居るはずのこの町に何故武器屋がないのか疑問に思えてくる。
「さて・・・何故なんだ?」
俺はこの状況について数分考え込むと一つの「これが原因」というものが浮かんできた。
このVRMMOに閉じ込められた今、未だにFギアのバックグラウンドインストールで進行中のインストールデータは軽量化・不具合修正パッチ(Ver1.2)をFギアからこの世界にインストールしているはずなのだが俺は途中にログインしたため俺のFギアは動作不安定になり基盤のどこかが壊れて本来の進行が出来ないのだろう・・・それは良いとしてこの不具合品を大量生産されるとなるとこれが問題だ。
「だけどもし不要データもインストールされているとなるとこれは深刻だな」
不要データとは感情プログラムということで人間と同じ「喜び・怒り・苦しみ・悲しみ」という4つのプログラムを用意したのだが、「この世界を開発した時の設定は前作と同様にする」ということになり、ファイルは消された。でも本来住人はクエスト以外決められたセリフを言うはずなのだが、もし感情プログラムがインストールされているとなるとFギアに負荷が掛かり永久的にその街に居るプレイヤーはログアウトが出来なくなるのだ、でもそれを防ぐためにFギアのソフトウェアに負荷防止センサーが組み込んであるセンサーの作動条件は「設定したものがない・負荷が既定範囲外に達した」この2つの条件が揃うだけでFギアの負荷防止センサーが働き強制ログアウトとなるはずなのだが作動しない。
「これはやばいぞ」
俺は外にいる開発者の行動によってはこの世界も消えるかもしれない・・・
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俺は不具合が自動で治る事を願いながら街を歩いていた。
始まりの町は中心部(噴水広場)・商店街・住宅地という割り振りになっている。商店街にも立ち寄ったがやはり武器屋という名の店は無くなってしまっている。
「地形と設定は設計時と同じだな」
前作同様、地球の6大陸+3大陸となっているので富士山もそのエリアに行けばVRMMOの富士山が見れる。
そして今作で追加された噴水広場に立つ時計塔はちゃんと設定していた場所にあった。
「これは完全に異世界転移とかじゃなくモノホンのVRMMOやん」
俺は一度周りを見渡して感情プログラムのことを思い出した。
「どうなってんだろ」
俺は不要データがインストールされていないか試すべく、歩いていたおばさんに対して「ばあさん」と言うと・・・
「わたしはばあさんじゃないよ!」
と怒られた。俺は怒ってどこかに歩いていくおばさんを見ながら
「これは感情プログラムあるじゃないか・・・やばい」
そして街を歩いているとこの世界の欠けている設定が大体わかった。
・住人の活動時間がズレている(住人が活動する時間はだいたい朝の8時から夜11時だ)
・いらないキャラが追加されている。(前作には聖騎士なんか存在しなかった)
不要データにも聖騎士が居た。まあここはゲームの世界ではなくもう現実の世界だ。
「困ったなこれは」
設定していない物も追加されていたため俺は頭を掻きながらこの世界について考えていると馬に乗った騎士さんが俺の前で止まった。
「お前、見ない顔だな。何者だ」
馬に乗った気が強そうな女騎士さんは俺の事を見ると何故か鞘から剣を取り出し俺に向ける。
「怪しいものではないんで大丈夫。」
俺はこういうめんどくさいシーンは何度も現実世界で体験してきた為冷静に対処した。
「なら宜しい、お前の名はなんだ」
女騎士さんは俺の名前を聞いてきたのでとりあえず本名かアバター名を言うか悩んでいると女騎士さんは急いでいるようで「はやくしろ」と言ってきた。
「ルグネスという流れ者ですよ」
俺は笑顔でそう答えると女騎士さんは鼻で笑い何処かへと消えていった。
「どうしたものやら…」
ボヤッとしてる内に黄昏時は来てしまった。俺は仕方なく教会のシスターの元へ行き教会に泊まらせてもらうことにした。
シスターも本当は不要データだが。
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翌朝、俺はシスターの教えで町外れの里へと足を運んでいた。
「街外れの里に人員募集をしている建設業の人たちがいた筈よ、そこにこれを持って行ってきなさい」
シスターのリリカが羽ペンで何かを書いた紙を持たされてその街外れの里へと来た俺はゴツイ男の人が沢山居る所に来た。
「リンリベールのシスターから渡されました。」
俺は近くに居た男に話しかけると「親分を呼ぶからそこで待て」
という指示を受けたので待つこと30分。
「遅いなぁ」
瓦礫の山に座っていた俺は欠伸をしながら作業場を見る。
「建設業か・・・」
現実世界では他のみんなは何をしているのだろうか?
そう考えてた俺は作業場に吊るされた時計を見ると時計の針が昼の12時を指していた。
「飯食べたいなぁ」
地図なき世界に来て1日目空腹が襲ってきていて腹の虫を黙らせるため
に水を飲んでいた。
「ルグネスだと?誰だそれは」
親分らしき男がリリカが書いた紙を見て子分に叱っていた。
「へぇ、私もよく分からないので親分が決めてくだせぇ」
話す度に頭をペコペコ下げながら話している子分に向けて舌打ちをする親分を見て俺はムカっときた。
「ああ、ワリィな待たせちまって」
瓦礫の山に座っていた俺は立ち上がると男の体を見た、見た目では180cm 体重70.8kgという感じだろうか?
「俺はアンドリュースレントンだ宜しくなルグネス」
俺は握手をすると数秒間を開けて俺から口を開いた。
「アンドリューさん、俺はなんの仕事をするんでしょう?」
男は紙を尻ポケットに入れると指をポキポキ鳴らして答えた。
「レンガ運びだよ」
案外簡単な仕事だった。