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くるくる洗濯機

作者: 須田ミヨ

今、目の前にあるドラム型洗濯機へ無性に入りたい。洗濯物が、くるくる回ってとてもおもしろそうだ。この洗濯物と一緒に泡だらけになって、右回りに洗濯されたい。


と、思ったので洗濯機に入ることにした。


バクン、と洗濯機のドアを開けて、小さなドラムのなかへ入り、スタートボタンを押してドアを閉めた。思ったよりは広かったが、狭くないといえば嘘になる。ちょうどいい、うん、ちょうどいい狭さだ。

2、3回空回転したら水が入ってきたので、あとはもう流れに身を任せるだけ。目を閉じて水の侵入を感じる。ごうんごうんと鳴り響く稼動音が耳に優しく、なぜかほっとした。

真っ暗な洗濯機のなか、まるで一つの鞠にでもなったかのように待っていた。ぐわん、と水や泡が揺れはじめ、「洗い」の行程。気持ちいい、ゆらゆらして、眠くなってきた。洗濯機のなかで寝るなんてそうそうないことだろうから、せっかくなので眠ろうと思う。


夢のなかで、空を飛んでいた。背中に立派な羽根が生えていた。まわりには、本当の鳥と鳥人間が混在していて、よくわからない唸り声みたいな言葉で喋っていた。けれど相手がなにを言いたいのか、どう感じているのかははっきりとわかった。そこにいる誰しもが仲間、そんな感じ。そのうち「みんなで遊ぼう」ということになって、急降下や急上昇、旋回に激しいターンなど笑いながら飛びまわっていた。

その時、銃声の音と共に仲間の一人が血塗れになって遥か地上に落下していった。とても怖くて、悲しいのに、喉になにかが詰まったかのように、叫ぶことも涙を流すこともできない。

恐る恐る後ろをみると、鉄っぽい大きな黒い固まりが容赦なく仲間を撃ちつけていた。ただひたすらに逃げ惑うさまを嘲笑うごとく、放たれる銃弾は尽きることがない。最後の1人に、なってしまった。目掛けて撃たれた一つが心臓に…


びっくりした。夢のなかとはいえ映像の再現度がいつにもまして高すぎる。まだ心臓がばくばくしている。ここのところ悪夢ばかりみるのだ。おかげで夜中に毎回飛び起きては眠りにもつけず、絶賛寝不足中。

洗濯機のなかでもみるということは、やはりストレスがたまっているのだろうか?

そもそもなぜ洗濯機に入っているのだろうという自問は面倒なので放棄した。

行程はすすぎに入った。体にまとわりついていた泡が綺麗な水と一緒に流れていった。自分自身 も綺麗に洗われてとてもいい。脱水とすすぎを何度か繰り返し、洗濯の全行程は終了した。



頭のなかでシミュレーションをしていざ入ろうと洗濯機のドアを開けたら、まだ洗濯は途中だったので水や洗濯物は動力と重力に従って床中にぶちまけられた。

なんだか急になにもかもが面倒くさくなったので、見なかったことにしてベッドに向かった。

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