表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
潮風が運ぶミステリー  作者: つぶ貝
1/5

死んだ方と死んでない方

細かい設定や文章構成など、拙い部分は多いでしょうけれど、なにせ学生の初投稿小説です。「こんなもんだよな」と、温かい目で見てくださると助かります。

その上で本編を楽しんで読んでいただければ、これ以上の喜びはございません。

「死んだ方と死んでない方、どっちがいい?」


出勤早々俺を呼び出した刑事部長の梶山は、開口一番そう言った。

何だその質問は?いぶかしがる俺に構わず部長は続ける。


「昨日ここ貝々市で起きた事件の話だ。片方は被害者が死亡。もう片方は生きてはいるが重症だ。捜査一課長のお前にどちらかを担当してもらいたいのだが、どちらがいい?」


なるほど、そういうことか。

俺、神山透の住んでいる貝々市は、昔甲斐甲斐しい貝の養殖で名を馳せようとしたが、広島市の牡蠣養殖の影に霞んでしまい、今では取り立てた特徴もない海沿いの田舎町だ。そんな辺鄙なところで、昨日は珍しく立て続けに2件の事件が起こった。俺の記憶では、一方が取っ組みあいの末の絞殺、もう一方が刺殺未遂だったはずだ。それなら…


「死んでない方でお願いします。」


そっちのほうが捜査が楽に決まっている。


「わかった。これが昨夜の事件の詳細だ。」


数枚の書類を俺に渡した部長は、「よろしく頼む」とだけ俺に言うと、さっさと自分の職務に戻ってしまった。

全く、面倒な仕事を頼まれたもんだ。だがまぁ自分の管轄で起こった事件だし、捜査一課長の俺が動かないわけにもいかないか。小さくため息をついて、部署を見渡す。

奥のデスクで作業に没頭している、一人の若い部下が目に入る。ここからではよく見えないが、何かのポスターを作っているようだ。よし、これは手が空いてるってことでいいな。


「おい、里田。」


近づいて声をかける。捜査一課の若手巡査、里田誠はゆっくりとこちらに向き直った。


「何すか、神山課長。」


綺麗に整った長めの茶髪と大きめの瞳は、女子社員の憧れの的だが、それだけに俺は気に入らない。この軽い物腰もそうだが、見た目は正直ちょっとイケメンの大学生だ。そのくせ、根は真面目でやることはきっちりやってくれる。信頼できる部下の一人だ。


「来い。これの捜査だ。」


俺はさっき部長にもらった書類を里田に手渡す。それにざっと目を通した里田は、パソコンに向き直って言った。


「わかりました。この婦女暴行魔撲滅のポスターが終わり次第ご同行します。このキャラクター『フクメン君』を挿入したら終わりなんで。」


どうやらこいつが作っていたのは、最近話題の覆面暴行魔撲滅のポスターだったらしい。それはともかく、


「後にしろそんなもん。どう考えても障害事件の捜査が優先だろう。あと、犯罪者をキャラクター化するな。不謹慎だ。」


そういうと里田は、「えー…」と言いながらパソコンを閉じた。本当にこいつでよかったのか?疑問に思ったが、声をかけた以上仕方がない。


「わかりました、行きましょう!最初はどこに向かうんですか、課長。」


やる気がないわけではないんだよな、こいつ。


「被害者の加藤かおるに話を聞きに聞く。貝々市立病院だ。」


捜査開始だ。俺は愛車、ホンダのCRZのキーを取りだし、里田とともに貝々市立病院へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ