79話 悪食
「で、その金髪ツインテ娘はどうするんだ?」
晃夜が動かなくなった『巨人の系譜の屍』をつぶさに観察しながら尋ねた。対するリリィさんは完全に警戒態勢に入ってしまっている。
彼女は晃夜のアビリティによる麻痺から解放されると、即座に反撃の姿勢を見せたが、周りにいるみんなが取り囲みながら武器を向けていたので、動くに動けない状態になっていた。
「キルするしかないでしょッ。隙を見せた瞬間にパーティーぶっちされて、背後を突かれるのは目に見えてるし?」
静かに炎を灯した、紅く美しい『大輪火斬』の切っ先を油断なくリリィさんへと構えながら、ゆらちーが素っ気なく晃夜に返答する。
「同意でありんす。そも、この童女はいかにしてここにいるのか、げにあやしき」
アンノウンさんもどうやらその意見に賛成らしい。
彼女に握られた薙刀は、いつでもリリィさんの命を狩り取れると主張するかのように矛先の刃が鈍く輝いている。
「賊魔リリィさん……悪いけど、こういう場所でキミのような評判を持っている傭兵をパーティーに入れることはできないかな。以前、一緒に戦った仲とはいえ、抱え込むリスクとしては大き過ぎるよ?」
パーティーリーダーらしい道理の適った意見を述べ、夕輝は折れずぶれない真っすぐな剣先を力強く構えている。
「わたしは、その……危ない人はキルしておくべきだと思います。ですけど、天士さまの意見も聞きたいです」
ミナもミナで言葉を選んではくれているものの、手に持つメイスに揺らぎは見られない。
「懲罰、という手段もいいですな。ユウ大佐殿?」
各々が緊迫する空気を出すなか、唯一、軍人かぶれの口調で語る小柄な美少年が下卑た笑みを浮かべていた。ユウジことRF4-youがいう『懲罰』とやらの内容が一体、何を示しているのか。美少女好きのユウジの事だから、碌でもない内容だってのはわかる。
「ちょっと待ってよ、みんな。リリィさんはさっき、俺達を助けてくれたんだし、そんなに目の敵にしなくてもいいと思う」
「だけど、タロ……彼女の評判が、これまで彼女が取ってきた行動が、油断を許しはしないんだ」
夕輝の堅い表情が、ここでの決定を曲げる余地はないと物語っている。みんなも、今回ばかりは俺の意見には反対のようだった。
この一触即発な状況を作った張本人である晃夜自身は『攻撃もできない、採取もできない……動かない時は完全な屍というか、傭兵が干渉できないオブジェクト化するのか……』なんて、我関せずといった感じで『巨人の系譜の屍』に対して冷静な分析結果を出していたりする。
敢えてリリィさんから距離を取っているあたり、問答無用で麻痺攻撃をした事は早計だったと反省しているのかもしれない。だからこそ、リリィさんの今後をどうするか、という話題は振りつつも自分は意見はしない、する権利がないと主張しているようにも見えた。
「……」
リリィさんはといえば、終始無言を貫き通している。
彼女が示す態度は、こちらが何かするのであれば即応戦。
「でも、もしリリィさんがこっそり俺達の後をついてきていたとして……不意打ちを狙っていたのに、わざわざ助太刀までして姿を現してくれるかな」
みんなはきっと、リリィさんがここにいる事に大きな疑問と不信感を抱いているんだろうな。
恐らく、地下都市ヨールンに入れたのは俺達だけに違いないのだから。
「うーん……タロちゃんがそう思う気持ちもわかるんだけどね?」
「大方、ここのダンジョン内で不測の事態が起こった時、1人で対処できないと判断し、ボクたちと協力関係を申し出るチャンスをこっそりと窺っていただけかもしれないよ」
「風の噂では、その協力関係が一時的って色が濃いでありんすね」
つまりは裏切る、という事だろうか。
「そういうことだよ、タロ」
ゆらちーや夕輝、アンノウンさんはやっぱりリリィさんがPTに参加する事を拒否した。だけど、『月に焦がれる偽魂』に素早く対応できる弓持ちのリリィさんが仲間になってくれれば、心強いはずだ。
俺と晃夜だけじゃ、一匹を仕留めるのが精一杯だし、さっきなんかは『巨人の系譜の屍』への対応に追われてて、しっかりと応戦できていなかった。
せっかく、『月に焦がれる偽魂』さえ消滅させれば『巨人の系譜の屍』は脅威じゃないって、わかったんだ。この攻略法を活かさない手はないし、今の俺達の力量じゃ、これより上等な選択肢はないはずだ。
「でも……俺は、リリィさんを信じたい。一度は一緒に戦ったわけだし」
「タロ。ミケランジェロのみんなと協力して戦った前と、今では状況が違うんだよ。ここで彼女が裏切っても、タイミングによっては誰も咎める者もいなければ、取り返しのつかない場合になることだってある」
夕輝が優しい口調で、諭すように俺にリリィさんの危険性を説明してくる。
彼女の人格が信用できないのなら……。
「じゃあ……リリィさんの、弓の腕は信用できる」
こんな言い方じゃ、リリィさんには悪いけど。
今、このダンジョンで力強い攻撃手段を持っているリリィさんがパーティーに加わることはマイナス面だけではなく、大きな利点もあると仄めかすしかない。
「彼女の弓があれば、簡単に『月に焦がれた偽魂』を撃破することができる。そうすれば、ここの攻略は格段に楽になるし……俺達だけじゃ苦戦するのは確かだよ」
「だけど……」
常時爽やかイケメンな夕輝にしては珍しく、表情を歪めながらリリィさんをチラッと窺った。
親友が折れそうな雰囲気をかすかに感じ取り、あともう一歩だと確信する。
何か、他に説得できる材料はないのか。
俺が必死にみんなを納得させられる言葉を探していると、不意に晃夜が叫び出した。
「おい、まずいぞ! 『飛翔脚』!」
何事かとみんなが晃夜へと視線を集中させるが、注意を喚起した本人はといえば、既に跳躍していた。あいつが飛んだ先には青白い光が灯り――。
リリィさんへの対応に熱中していたため、扉をあけっぱなしにしていた事に失念していた。
街の外へと繋がる隙間から、二匹の『月に焦がれた偽魂』が入り込もうとしていたのだ。
一早く緊急事態に気付き、すぐに行動を起こした晃夜の攻撃は――。
やはり空中戦では分が悪かったのか、ふらふらと不規則な動きはまさに人魂らしく、晃夜の拳をするりと避けてしまう。
飛んだ勢いで石の扉にぶつかりそうになった親友は、空中で宙返りを成功させ、ついでに扉を蹴りつけて、体操選手ばりの動きを見せながら地面へと着地する。
晃夜の蹴りでわずかに閉じた扉だったが、次の瞬間ゴゴゴゴッと重い音を放ちながらゆっくりと開かれていく。
あの重厚な扉を、外からこうも簡単に押し開ける存在なんて一つしかいない。
「外に『巨人の系譜の屍』がもう一体いる!?」
「入ってきたニ匹の人魂のせいでっ! 動かなくなった巨人ゾンビの死体がっ」
俺の予測の後に、ゆらちーの悲鳴が上がる。
青白い光と共に――ズシリと、何か巨大な者が再び立ち上がろうとする不快な音が鳴り響く。
「まずい……」
外から一体、中で一体。合計、二体の『巨人の系譜の屍』に挟まれようとしていた俺達は、這い寄る絶望に足が止まりかけてしまう。
そんな、静止しそうになっていた俺達の思考を素早く取り戻してくれたのが――。
「『アリスの黒弓』固有アビリティ、『黒薔薇の二射』!」
リリィさんの力強い声だった。
彼女は上空にさっと弓矢の照準を右に左へと向け、何かのアビリティ名を口にした直後に弓を引き絞った。
「『絡め取る二股の棘』」
そして、矢を同時に二本放ったのだ。
そのターゲットは、もちろん『月に焦がれた偽魂』だ。彼女の撃った矢は狙い違わず、二匹の人魂へとヒットする。同じタイミングで二つのターゲットへと命中させたのには、正直驚きを隠せなかった。
だが、一匹だけは当たり所がよかったのか、弱々しい光を明滅させながらもフラフラと漂い続けた。
「また、人魂が、入ってくるよ!」
既に目を覚ました『巨人の系譜の屍』を相手に、攻撃を受けきる体勢を取った夕輝が必死に警告を発する。
「天使、貴方の出番ですことよ」
扉から更に入りこもうとする『月に焦がれた偽魂』へと狙いを付けたリリィさんが勝ち気に微笑む。
なんだか、さっきまでキルするか、されるかで揉めていた俺達だけど。
流れとはいえ、こうやって背中を合わせて戦ってくれるリリィさんの姿勢が嬉しくて、俺は笑顔を交わす。
「任せて、リリィさん……フゥ!」
『風乙女』へと呼びかけ、俺は手負いの『月に焦がれた偽魂』に急接近を試みるべく、地を蹴り上げて宙空へと自分の身を躍らす。
弱った『月に焦がれた偽魂』は、俺の速度に反応できなかったのか、今回は振り抜きざまに一閃。右手で握った小太刀による斬撃をしっかりと浴びせる事に成功した。
「よし! いい子だぞフゥ!」
「んふふふ~フゥ♪」
俺達が人魂を倒したと同時に、入りこもうとしていた一匹の『月に焦がれた偽魂』を射抜いたリリィさんと目が合う。
彼女は不敵な笑みを、相変わらずこちらに向けていた。
「少しは私の善意、私の価値がわかったかしら? 愚民のみなさん」
室内に青白い光が消え、それに伴って崩れ落ちた『巨人の系譜の屍』にホッとした面々に、嫌味たっぷりな言動を凛とした佇まいで言い放つ、金髪ツインテールの少女はちょっとだけかっこよかった。
その背後、開かれた扉から複数の『月に焦がれた偽魂』による光に照らされて、姿を完全に現した『巨人の系譜の屍』さえいなければ……。
――――
――――
「次から次へと、しつこいですわよ」
懸命に外から入りこんでくる『月に焦がれた偽魂』を弓矢で迎撃しているリリィさんは毒づいた。
彼女のおかげで、一気に建物内へと人魂が大量に入りこむことは防げているけど、常に二匹から四匹ぐらいの数が、俺達の頭上を旋回してしまっている。
「ここから逃げ出すしかないよ!」
「わかってるけどさッ扉の前にいる、もう一体の巨人ゾンビが、あそこから動く気配がないって」
夕輝たちは再び、青白い光を浴びて動き出した『巨人の系譜の屍』を相手に全力で立ち回っている。
タンク役の夕輝を中心に、ゆらちー、晃夜、アンノウンさんと攻撃をヒットさせながら、狙われる順番を上手に切り替えつつも、ギリギリの状況を保っていた。
「建物から出ようとすると、邪魔するでありんすね」
「外の人魂まで攻撃されるのを警戒してるのか!?」
俺はと言えば、屋内に入った『月に焦がれた偽魂』を殲滅するために必死になって、空中をフゥと共に飛び回っていた。
同時に、みんなへのポーションによる回復も怠っていない。
「あそこで、もう一匹の巨人ゾンビが出入り口にのさばっている限り、ずっと人魂が入ってくる感じか!」
「で、こっちがジリ貧になって、建物の中で戦う巨人ゾンビに潰されるのを待ってると」
晃夜や夕輝の言う通り、二体目の巨人ゾンビはこちらが『月に焦がれた偽魂』を狙っている事に気付き、自分達の活動の源を絶たれないための戦法をとってきたのだ。あんな脳まで腐っていそうな屍なのに、戦闘へのアルゴリズムは相当レベルが高いのかもしれない。『閃光石』による太陽光を当てられた時は言葉まで発したのだから、知性ぐらいはあるのかもしれない。
「卑怯です」
理にかなった敵の戦術にミナは不満をもらしつつも、室内で飛び回る『月に焦がれた偽魂』めがけて、攻撃魔法を撃ちこんでいく。
俺はその攻撃から難を逃れたとはいえ、体勢を大きく崩した人魂に狙いを定め、小太刀をふるう。
「どうにかッ、あいつらッ暴走とかしないかな!」
夕輝が巨人ゾンビの一撃を受けて、吹き飛ばされながら苦し紛れの願望を吐く。
「さっき『狩り取る手刀』をこいつにやってみたが、麻痺耐性高すぎて、百回やっても麻痺らなそうだぜ!」
無念そうに、晃夜が夕輝の願いを打ち消してしまう。
「もう、何でもいいから、どうにかしないと! もたない」
……状態異常?
……暴走。
何でもいい?
本当にソレでいいのなら、試すしかない。
一つの考えが脳内で閃いた。
「ユウ! どうなるか保証なんてできないけど、一つ方法がある!」
「どのみち全滅だよ! タロ、何でもいい!」
「任せたぞ、錬金術士どの!」
「おまえら、こういう時だけ調子いいな!」
下で踏ん張る旧友たちへと叫びながらも、俺はリリィさんの隣へと着地する。
「天使、何をなさっているのですか! 貴方は中の人魂をどうにかするべきですわ」
「説明している時間が、ありません!」
俺は素早く左手で『射ろ筆』を装備し、色をセットする。
選んだ色は、コムギ村に突如として発生したスライムの亜種、『タフ・スライム』から採れた『悪食の黄色』だ。『飢餓』という状態異常の数値を上昇させるこの色は、『飢え』を付与し、もしかしたらモンスターを暴走……凶暴化させることが可能かもしれない。
「貴方はまたそうやって、私を貶める気ですわね!?」
平原での『ビック・スライム』との戦闘で『溶ける水』の効果を説明せず、そのおかげでリリィさんが足場を失った時の事を言っているのだろう。
だが、踏み切った俺は押し通すしかない。
「わからないけど、やってみるしか」
そう言って、彼女の矢に『悪食の黄色』を塗布した。
「これは、なんですの?」
「撃ってください。『巨人の系譜の屍』に」
彼女の質問に俺は答えず、お願いをした。
今は時間がない。
リリィさんは一瞬だけ俺を見つめ――。
その矢を、出口を塞ぐ巨人ゾンビへと放った。
「グ、グモ?」
ストンと、見事に頭に突き刺さった矢。それにわずかな反応を見せる『巨人の系譜の屍』。
まだ一本だけじゃ『飢餓』の数値が蓄積しないのか、それとも耐性が高いのか。わからないけれど、やるしかない。
もう一度、俺は『悪食の黄色』をリリィさんの矢に直塗りする。
「……わたしの弓の腕を信じてくれた貴方に免じて。私は、今回だけは、貴方を信じてさしあげますわ」
そう言いながら二本目の矢を、巨人ゾンビの顔へとリリィさんは的中させた。
「グ、ゴ、ゴ……」
直後、『巨人の系譜の屍』は首を傾げ、キョロキョロと落ち着かなげに周囲を見回し始めた。そして、俺達を見るや否や、なぜかたじろいだのだ。その巨体が、一歩怯えるように後ずさる。
「ん?」
「グゴォォオ」
そして何かを探し求めるように出口から離れ、外へと突然出ていってしまった。
「え……?」
「何が起きたんですの?」
いや、俺に聞かれてもわかりません。
ただ、腹が減るようにしむけただけなのですが。
そう空腹。
……ん?
食欲?
そこで、俺は『浅き夢見し墓場』で出会った幽霊、かつて『東の巨人王国ヨールン』の奴隷として仕えた、奴隷人の王ルクセルが語った内容を思い出す。
『巨人って人間を食べたりしないの?』という俺の質問に、彼はこう答えた。
『彼らは人間を食べて、しばらくすると痙攣をおこし、脳に障害を残してしまうそうなんだ。食した量にもよるけど、症状が酷い者は死に至ることもあった』
つまり、お腹が減った状態で人間を見ることは本能的な恐怖を呼び起こし、同時に飢えによる食べ物を探しにいきたい欲求に駆られ、さっきの『巨人の系譜の屍』は戦線離脱をした?
なるほどね!
さすがは錬金術だ。
「貴方は一体、何をしましたの?」
まじまじと見つめてくるリリィさんに、俺はドヤ顔で誇る。
「信じて。俺もリリィさんの狙撃を信じますから」
俺の色とリリィさんの弓の腕前あってこそ、こんなにすんなりと巨人を退かせる事ができたのだ。
こうして、夕輝たちが死闘を繰り広げている『巨人の系譜の屍』が、俺達に怯えながらどこかへと姿を消してしまうまで、そう時間はかからなかった。
巨人ゾンビがいなくなれば、残った『月に焦がれた偽魂』を俺とミナ、リリィさんでどしどし片づけていくだけだった。
もちろん、しっかりと【写真】を撮っておき『独白』という色を宿す事も忘れておかない。
――――
――――
「嬉しいですわ!」
「やったね、リリィさん!」
思わず、彼女と歓喜のあまりにハイタッチをしてしまう。
ニコっとリリィさんに笑いかけると、彼女も笑い返してくれ――すぐにハッと何かに気付いたように、俺から離れた。
「こ、こ、これは違いますわ! 私としたことが、天使と慣れ合うつもりなんてありませんことよ」
彼女は不機嫌な顔へと変貌し、何故か顔を朱に染めてぶっきらぼうな口調で俺にそんな言葉をぶつけてきた。
お、おう……。
俺としては彼女の評判はともかく、美少女とはなるべく仲良くしたいなと思っているのだけど……男子として、なんだか残念。
ほんのちょっぴり肩を落としてしまう。
すると、リリィさんが『いえ、その今のは、つ、ついですね……』なんて慌てふためき始めた。コロコロと表情が目まぐるしく変わる彼女の内心が読めず、俺が疑問の念を抱いていると、ゆらちーが『あんた、素直じゃないんだねー!』なんて朗らかな声でリリィさんをどついた。
それを見ていた夕輝や晃夜からも、曖昧な笑い声が上がっていく。
「こうなったら、彼女がパーティーに入るのは仕方ないかな?」
「早い話、毒を食らわば皿まで、か」
晃夜が急に『悪い事に手を染めてしまった以上、もう戻れないのだから、更に悪い事をしてしまおう』ということわざを呟く。
「いや、悪い事してないでしょ、ボク達」
そこに夕輝がツッコむ。
すると、晃夜は苦笑した。
「いや、今回は言葉通りの意味だ」
なぜか、鬼畜イケメンは俺を見て、次にリリィさんに視線を移した後に夕輝へと向き直る。
「俺達、美少女って『毒』に、ここ最近、振り回されっぱなしじゃないか?」
「あぁ……確かに?」
そんな晃夜の発言に、夕輝はひどく納得顔をする。
あいつら微妙に俺の少女キャラをいじってるな?
「そういう事だ。どうせ食らってしまった『毒』なら、とことん食らって、最後までお付き合いしましょうかね」
「そうだね。どうせ、タロは今回もマイペースにリリィさんを仲間にするしね」
「しかも、危うい美人さんときたもんだ」
まいったまいったというジェスチャー付きで、二人は楽しそうに会話を続けていく。
「美人には毒があるね……」
「そういうこった」
そんな二人だけの世界に入る夕輝と晃夜に、ゆらちーが『何ソレ』と不満気にノシノシと歩み寄って行く。
「ねぇ。さっきから気になったんだけどー、あたし達は!?」
ゆらちーが自分とミナを指差し、抗議の声を発した。
本気でうろたえる親友たちの顔が見物だった。
お読みいただき、ありがとうございます。
ユウジの影が薄いですね(笑)




