表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
310/360

306話 狂おしき無血の闇


 素敵なレビューやご感想、ありがとうございます!

 とっても、とっても励みになっております……!





「どうだ? お前になら【魅惑のまたたび】の在りかを教えてやってもいいぞォ~」


 怪しい光を宿す彼の目を真っ向から見返し、俺はハッキリと答える。


「いいえ、大丈夫です」


「ほーう、ほう。俺様の魅惑的な提案を断るのか」


【魅惑のまたたび】の在りかがわかれば、【白雷に鳴く(かんむり)猫】からの報酬はもらい放題だ。一体、どんな褒美なのかは気になるしワクワクもする。

 しかし、どうにもこの【千銃の放浪王オリンマルク・サーフェイス】には胡散臭さを感じる。


 自らを狡猾(こうかつ)嗜虐(しぎゃく)紫苑(しおん)だなんて名乗ってる輩を信用するのは難しい。

 それに錬金術士たるもの、欲しい物は自らの手で創り上げるのが基本だ。



「いいぞォいいぞォ~。ぶらさがったエサにすぐに喰いつかない、タダほど怖い物はないからな。その裏を読む狡猾さ、気に入ったぞォ~」


 狡猾さって……そりゃ、貴方みたいな人には誰だって不信感を抱くって。

 顔はすごく濃いイケメンで好印象かもだけど、その顔だって誰の顔だかわかった物じゃないし。


「じゃ、ま。挨拶代わりだ。蒼天(そうてん)零黒(れいこく)が混じりし者よ、微妙な色合いに俺様の弾丸もぶちこんでおけよ」


:天滅の十氏系統【蒼天】と【零黒(れいこく)】、2色の条件解放により【紫苑(しおん)】から秘匿報酬を得られました:


:【錬器:合成獣の羅針盤(らしんばん)】or【王器:神々を暴き解く鍵リード・エリピオ・ギア】:



 なんと……急な報酬に加えて選択肢が……。

 どちらも大変興味深い、非常に魅力的に匂いがぷんぷんする報酬だ。

 同時に警戒心も引き上げるのを忘れない。


 ふぅむ。【王器:神々を暴き解く鍵リード・エリピオ・ギア】なんて、すごそうじゃないか……!?

 神々のどんな秘密を暴き、解いてしまえるのだろうか!?


 もうこれは間違いなく、【王器:神々を暴き解く鍵リード・エリピオ・ギア】一択に限るだろう!

 そう、俺が凡人であるならば、普通人タロウのままであったなら鍵を選んでいたであろう。

 だが、俺は錬金術士なのだ。


 誰もが神々という大層な名前に目が行きがちの中、錬金術士である俺だけは見逃さない! 

【錬器:合成獣の羅針盤】についた()器の文字を!


 そもそも彼はかなり怪しい人物であり、そんな彼からもらえる物ならば……少しでも慣れ親しんだ、使いこなせそうで、かつ制御できそうな物を選ぶのが上策でありリスク軽減に繋がるはず。

 使ったらえげつないバッドステータスが付くとか、暴走するだとか容易にありそうで危ない。

 

 なんてソレらしい理由を脳裏で並べたて、俺は自分の欲求を正当化して【錬器:合成獣の羅針盤】をチョイスする。



:【錬器:合成獣の羅針盤】を手に入れました:



 重みのある鈍い琥珀(こはく)の輝きを放つ羅針盤。

 手持ちサイズより遥かに大きな、両手で抱えるぐらいの物だ。

 円形の内部はガラスで閉ざされ、そこには摩訶不思議な文字と方位磁針のような物がクルクルと回転している。

 端的に言って、かなりオシャレかつ洗練されたデザインだ。



 俺はさっそく説明文に目を通す。

 もちろん『鑑定眼』も念のため使用しておくのを忘れない。



錬器(れんき):合成獣の羅針盤(らしんばん)

『使用者にスキル『合成獣の羅針盤』を習得させる』

数多(あまた)の獣、魔物を知り尽くした者にのみ扱える崩異(ほうい)磁針(じしん)が内包された美しい金属盤。一説によると神獣と心身を共にした者でなければ、心と体の方位が崩れ、異形の物に変貌してしまう呪具と言われ、【銀常国家ルクセンハーデン】では【禁具指定】されていたという記録がある。だが、この狂った方位磁針を制御できる者は魔物と人をかけ合わせ、新種の生命体を生みだすのも可能だと伝承に残されている』

『使用条件:魔物のドロップ素材でアイテム生成した回数が100以上。神獣か魔物との融合経験在り』




【銀常国家ルクセンハーデン】……?

 どこかで聞いた名だと疑問に思えば、確かミソラさんが先駆都市ミケランジェロの灰王と相対した時に『知力と神力の栄華を極めた【銀常国家ルクセンハーデン】を廃れさせた、廃王くん』とか言ってたな。

 

 むーん?

 まあ歴史的背景はこの際、置いておくとして肝心なのは使用条件だ。


 なるほど。『スライムの核』を元にした『翡翠(エメラルド)の涙』、ポーションを作りまくっていた俺は魔物に関する知識は十分……いや、そうでもないか……。

 戦ったモンスターの種類は20種以下な気もするし、ええい!

とにかく第一条件は満たしている!

 そして第二条件も【失落世代の懐中時計】で神獣たちと融合して戦ったのでクリアしてる!

 

「ふふ……」


 俺は新たに手に入れた錬金キットを凝視し、邪悪な笑みを漏らしてしまう。

 これは……もしや【合成獣(キメラ)】を作成できちゃうのでは……!?

 いやいや、待てよ……!?


 俺はアイテムストレージに古くから残る素材を見つめる。

 それはリッチー師匠が消滅と共に残した遺産。


『錬金術士リッチー・デイモンド』【写真】

 色は【狂おしき無血の闇(プルート・シュバルツ)】が宿っている。


 そして【金錆びた王冠】、【死霊王の爵杖】【不老の闇濡れた至高石】。

 全て、リッチー師匠がキルされた時にドロップした物だ。

 この素材群は俺が一端の錬金術士と名乗れる実力になるまでは、決して使わないと決めていた。

 だけど――――もしかしたら、今の俺なら――



「ほーう、ほう。そっちを選んだとは、残念だぞォ~。人間どもの中に【神象文字(デウス・ルート)】を読める奴が現れたなら、神どもを模倣し、近付き、反逆した輩どもが残した【禁呪と神罰(しんばつ)に染まりし地底領域(ガイアルム)】の封を解放して回る旅でもしようと思ってたんだがな。またの機会にするぞォ~!」


 今の俺にとって【千銃の放浪王オリンマルク・サーフェイス】が語る内容は、一切の戯言に聞こえた。

 何を言われようと霞んで聞こえ、その言葉の一つ一つは塵に等しく無価値。


 なぜなら、俺の手で究極の財宝が、何にも勝る存在を創れるかもしれないから。

 不遜にも、不徳にも、不可能ではないと、心がささやくのだ。


 高なる鼓動が、たぎる血潮が、錬金術士としての誇りが――


 早く、早く、この手で師匠を復活させたいと俺を躍動(やくどう)させるのだ。


 不敵な笑みが広がるのを止められない、いや。

 俺の歩みは誰にも止められはしないだろう。




 3巻表紙のタロが着ている服は、3巻内で出てくる錬金術士用の【新装備】です!

挿絵(By みてみん)


【スチームパンク×セーラー服】を意識したデザインとなっております。

 何度見ても、かわゆいです……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] それにしても師匠復活とは! タロとは良い関係になって欲しい(気が早い) 今回の錬金キットも含めて錬金システム周りなんか増えそうな予感 (それとも要所でアドバイスくれる感じだろうか) ス…
[気になる点] ししょおおおおおおおおおおおおおお!!!! [一言] 次回 師匠、蘇生する デュ(
[気になる点] そえば最近ミソラたn・・・あごめんなさいそんな目で見ないでくださいかんz(何かが雷に打たれる音) ・・・ 最近ミソラさんとコンタクトしていない気がするなぁって 本編外かな(´・ω・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ