281話 錬金術士の憂鬱(ゆううつ)
2巻は、12月2日になれば確実に全国の書店さんに置かれるそうです……!
お手数をおかけいたします……。
「これが錬金術師風の会話というわけだよ。銀嶺の少女よ」
ヒラガ団長とやらの首を持ちあげ…………俺の身長が足りなかったので、掴むだけの姿勢で止まっていたけど、ほんの少しだけ力を強める。
これだけでダメージは与えているだろうし、力を示すには十分なはず。
既にヒラガ団長のHPバーは赤色に点滅している。
「そうは言ってもヒラガ団長、『錬金術』スキルくっそ使えないですよね。さっきのアビリティも錬金術関係ないですし」
隣にいたゴッホさんは呆れた様子でせせら笑う。
「くっ。それを言ってはダメだぞ、ゴッホくん」
「今更、隠す必要はないかと。団長はことごとく『合成』を失敗するし、『錬金術以外は何でもできる男』とか秘密結社のメンバーには呼ばれてますし」
「しかし、しかしッ、まぁ私の話はどうでもいい。銀嶺の少女よ、ゴッホ君の誘いに乗ったという事は、我らが秘密結社に入ると考えてよいのかね?」
キリリと目だけで俺を見据えるヒラガ団長。
ちなみに未だに首は俺に掴まれたままだ。
な、なんか……すごくメンタルが強い人というか、変わった傭兵だ。
「えーっと、確認なのですが。俺が『秘密結社・化学式遺産帝国』に入れば、石生物の発生は止めてくれますか?」
「エレキテル! これは異なことを! 素晴らしい錬金術の結果を、実験をやめろと……ふむ、しかし、それが銀嶺の少女の入団条件であるならば承知した」
「なっ! ヒラガ団長、正気ですか!? 私達が、傭兵たちを見返すチャンスですよ!?」
ゴッホ君は俄然、彩菌停止に反対のようだ。
「ええと、他の団員さんに確認しなくてもいいのですか?」
「ふむ。まぁ反対するのはゴッホ君だけだろうし……? 問題あるまい」
へぇ。
ヒラガ団長の発言に俺は思考する。
この様子だと、無条件で彩菌をばらまくのを止めろというのは無理そうだ。
「ちょっと、団長! この彩菌を持ってきたの、私ですよ!?」
「団長たるもの、秘密結社全体の利益を重んじるのだ!」
勝手にもめる2人に割り込み、俺は大仰な所作でヒラガ団長の首を離す。
「その、秘密結社というからには、もちろん選ばれた人間のみ! が入れる少数精鋭ですよね?」
「おお、わかっているではないか。銀嶺の少女よ」
「それで、何人ぐらいいるのですか? 団員は」
「エレキテル! 我を含めて、6人だ」
ふむふむ。
嘘じゃなさそうだ。
俺はニコリと笑顔を張り付けながら、ヒラガ団長へとフレンド申請を送る。
受諾メッセージを確認した俺は、再び彼らに質問をする。
「あの……俺は入団しないけど、彩菌をばらまくのを止めてとお願いしたら、止めてくれます?」
「はっはっは。なんのメリットもないので、やめないな」
やっぱり、そうだよなぁ。
気が重いなぁ……。
この人たちと…………はぁ、でもいっかな?
全体的にはメリットも多いわけで。
錬金術の研究は1人より2人、2人より3人、多い方が進むだろうし?
「そうですか。でも俺、正直に言えば入団はお断りしたいのです……」
「「む!?」」
俺は呆ける2人に背を向けて、親友たちの方へと歩み出す。
これはもう仕方ないかな……自由を求めるならそれなりの代償を払わなければいけない、か。
それでも笑顔で迎え入れてくれる親友たちを見て、俺は覚悟を決める。
「……俺、決めたよ」
「おう、そうか」
晃夜が優しく頭をなでる。
子供扱いするな、と文句を言いそうになって口をつぐむ。
こいつなりに、慰めてくれているのだろう。
「で、やっぱり『みんな仲良く』作戦なわけ?」
俺の意を汲んで確認を取って来る夕輝。
見守ってくれた親友に深く頷く。
俺のわがままで……。
この2人には全面的に協力してもらっているから、少し申し訳ない気持ちになってしまう。
それでも、ここまできたら選択肢はこれしかない……。
「うん……だって、現実の惨状を止めるにはこれしかないもん……」
そう言って、ゴッホさんやヒラガ団長に『一時間後にまた集合してお話をしたい』と約束する。それまでの間、『彩菌』をばらまかないと条件を出すのにも成功。
「はぁ……」
この事は姉や俺の周囲のフレンドに伝えておかないと……あとで、面倒な争乱を生みそうだから。
そういった準備や伝達のための1時間をもらった。




