200話 戦火に引き離される二人
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「私が出てみるから、ちょっと待ってなさい」
姉はそう言ってインターフォン越しから、ミナと黒服の男性に向かって声をかけ始めた。
『どちらさまでしょうか?』
『ええと……はい……』
姉に問い掛けられたミナはビクリと身体を震わした後、もぞもぞと何とも言えない仕草をし出す。何かを必死に考えている様子だったが、一体なにを思っているのだろうか。
『――ね様、――んお車に――がよろしいかと――』
ミナの隣に立つ黒服が何やら囁き、それにミナが同意するように頷いた。
『あの、すみません。訪問先を間違えてしまったようです』
ぺこりとミナは頭を下げ、そそくさと移動してしまう。黒服の男性もサッとお辞儀をしてミナの後に続いて行ったようだ。
あっさりとし過ぎていて、こちらとしてもキョトンとしてしまう成り行きに俺と姉は互いに首をかしげてしまう。
「何だったのだろうね」
「うん、何だったんだろう?」
◇
再びクラン・クランにログインすると防衛砦内はざわついていた。
斥候部隊として活動していた味方の傭兵が持ってきた情報がその原因となっているようで、戦の準備が急ピッチで進められていた。
どうやらヴォルフ率いるグランゼ侯爵一派の民兵を指揮する傭兵部隊が近くで集結しているとの事で、目標はもちろんこの砦だと推測できた。
まだ敵が攻め込んでくるには時間的猶予が少しだけあると姉から聞いたので、俺は門上の城壁に立つミナの隣にひょっこりと座る。
「天士さま? このような場所にいては危ないですよ?」
うーん。
いつも通りというか、うーん。
「ちょっと話をしたくて?」
「先程のことなら大丈夫です。天士さまのお付きにふさわしくない者は、天士さまのお傍にいてはならないのです……」
先程の事……。
ミナの口ぶりから、それはゲーム内の話なんだろうなと判断する。
俺が聞きたいのは、なぜミナが俺の家を知っているかだ。
だが、どう聞いたものか……いざ声をかけてみると言い方に困ってしまう。
「そそそ、その、あのミナ?」
「何でしょうか、天士さま」
あまりにも平常運転すぎるミナの反応を目の当たりにし、俺の家に来た事をつっこんでいいものか迷う。
もしかして俺と姉が白昼夢でも見ていたのではないかと思わせられる程に、ミナは平然としていた。
「あ、あの、現実の方の……俺の住所とか知ってる?」
直接的すぎたかもしれない。
もっとこう、遠回しに尋ねる言い回しとかあったはずなのに……。出してしまった言葉をひっこめることは既に叶わないので、俺は唾をゴクリと飲み込んでミナの返答を待つ。
「えっ? 知らないですよ? 教えてくれましたっけ」
予想外にもキョトンとしだすミナに、俺は更なる動揺を隠しきれなくなる。
じゃあなんでさっき、こっちに来たの!?
「じゃあ、なん……きょ、今日は何してるの?」
危うく思った事をそのまま口にするところだった。
「クラン・クランですよ?」
「あ、いや。クラン・クラン以外で、その、現実で……」
「ええと、お友達の家にご訪問させていただきました」
友達……もしかして本当に偶然が重なり、間違えて俺の家に?
というか友達の家に遊びに来たのに、クラン・クランなんてやってていいのか?
「でも今、クラン・クランやってるよね?」
「はい」
「えーっと、いいの?」
「今は……車の中ですので。どうかしましたか?」
「あ、いえ……」
訳がわからない。
だけどミナの顔も『一体どうしたのでしょうか、天士さまは』と疑問符を浮かべていた。
あのミナが嘘をつき、しらばっくれてるはずがない。
となると、ミナの訪問は偶然だった説が濃厚だ。
「天士さまが現実の事をお聞きしてくるなんて珍しいですね」
「あぁ、うん。まぁなんていうのかな、さっきミナっぽい人が俺の家に来てね、あははは」
「えっ!?」
ミナにしては珍しく大口を開けて驚いていた。
いきなりネ友にこんな事を言われてしまったら、それは誰だってビックリしてしまうだろうから、さらっとフォローをいれておく。
「うん、何かの間違いかもしれないし、気にしないでくれ」
「私が……訪問したのは……訊太郎くんの家なのですけど……天士さまのお家であるはずがありません」
ミナの口から俺の本名が出てきた事に、驚愕せざるを得ない。
「えっ!?」
あんた誰!?
っていうか姉が出た時に、訪問先を間違えたって言ってたよね!?
間違えてないし、あれは一体なんのための嘘!?
「ちょ、あのミナさん、それって」
どういう事か聞き出そうとしたら、『敵がきたぞおおお!』と慌ただしい叫び声が砦中を駆けめぐった。
「タロ! 何してるんだ、こんな所で! 君がキルされたらこっちは壊滅なんだよ?」
「探したぜ、さっさと持ち場に戻るぞ」
さらにタイミング悪く、夕輝と晃夜が俺を見つけ出し有無を言わさぬ勢いで引っ張ってゆく。
「あ、ちょっと二人とも、待って。ミナが」
「ミナヅキさんの持ち場はあそこで合ってるよ」
「急げ! もうヴォルフの奴らはすぐそこまで来てるぞ!」
「そ、そうじゃなくてっ」
この緊急事態に二人になんて説明をしたらいいのか……。
ミナも俺も互いをポカンと見つめながら……迫りくる戦争の足音によって、引き離されていくのだった。




