196話 初陣
NPCである民兵を引き連れての戦闘では、まずは戦術によって差が出る。
今、まさに俺達は敵の見事な戦術によって辛酸を舐めさせられている。
次に戦術以外での肝は、『小隊長』である傭兵個々の力に頼った突破力だ。当然、民兵よりも傭兵の方がステータス的に勝り、更にアビリティという超人じみた力を行使できるわけで、民兵のみが相手なら多少強引に仕掛けても、敵の被害を大きくする事ができる。だが、そこはもちろん相手も同じだし、さらにリスク面を指摘すれば『小隊長』がキルされるとNPCの民兵ステータスは大きく下がるわけで、部隊の崩壊を招くことになる。少しでも有利に立ち回るため、いつ仕掛けてくるか双方で出方を窺う必要があるのだ。
「私達が囮になろう」
こちらの最大戦力であり、一番生存率の高い『首狩る酔狂共』。姉は彼らと彼らの民兵隊を囮に使うと言いだした。彼らが奮戦している間に、俺とその一派は背後に続く森まで逃げ延びて欲しいとの事だ。
姉はこの戦、勝ち筋がないと判断したようだ。ならば自らの犠牲を以って、次のチャンスに繋げて欲しいらしい。
周囲の『旗手』たちも渋々とその案に同意するかのように頷いている。
「待って、姉。まだ、もう少しだけ耐えてみようよ」
だが、『指揮官』である俺は反対だった。
確かに相手の戦術は俺達よりも上で、兵種だって強い。だけども、俺はもっと単純な戦術を駆使して勝利をもぎ取れると確信していた。
詳しい案を姉に言えば、それは試す価値があるとみんなが賛同してくれる。
そうと決まれば話は早い。
貴重な遠距離攻撃アイテムである『狙い打ち花火(小)』をいくつか夜闇の空へと打ち咲かせ、とある友人に連絡を入れる。
そうして守りの一手に集中し、敵の矢を受けながら辛抱強く耐える事数分が経った。
「敵の後方、本陣が騒がしくなったわね」
「姉、がんばって!」
後はこちらの出番だ。
「誰に物を言ってるのかしら。全軍、槍部隊を前面に展開し、突撃!」
こうして俺達の軍は、丘を駆け降り、敵の本陣前で待機している騎馬隊めがけて突進を敢行していった。
丘上という地の利は消えても、武器、部隊の相性の利は消えない。
数という不利は質で、同等まで押し上げられるはず。
それにそこまで数的不利な要素はない。
なぜなら、
『ありがとう、ジョージ。助かったよ』
フレンドチャットで心強い友軍にお礼を述べる。
『あはぁん、天使ちゅわんのご要望とあればァン☆ おらぁ! 穴た起チィン、遅れた分を取り返すわよん!』
合流が遅れていたジョージ達、傭兵団『サディ☆スティック』の数は『小隊長』が25人、つまり民兵250人に上る。それに加え、こちらの兵力は弓矢攻撃によって損耗しても400強はある。こちらは総勢650以上、あちらは700弱。
『勝とう』
『もちのロンよ♪』
そろそろ合流できるとジョージから連絡が入ったのは、騎馬隊の接近を察知する前だ。それならと、俺達のいる大まかな位置を通達し、厄介な敵軍と対峙している事を伝えた。あとは夜間でもよく目立つ『狙い打ち花火(小)』を何発か夜空に打ち上げ、敵の騎馬隊の位置、本陣の位置を離れているジョージ軍にも大まかに把握できるように教え、敵の後方から攻撃を行えるように『サディ☆スティック』の面々を誘導したのだ。
俺の取った戦術なんてのは、誰にでも思いつく至極単純な戦法だ。
ジョージ達で後ろから、俺達で正面からの攻撃をかます。挟み討ちで相手を混乱におとし、あとは実力勝負で押すだけだ。
『じゃあ、俺達も行くから。ジョージも頑張ってね』
『あら待ってるわねぇん。こっちはイイ男がいないか、絶賛婚活中よぉん♪』
どうやらオカマは戦場を楽しんでいるようだ。
俺も急がないと。
今回ばかりは『指揮官』だからといって、俺が見ているだけの余裕がこちらにはない。
後ろに佇む『銀氷の雪姫人形』へと振り返る。
「ブルーホワイトたん、戦場へ行こうか」
「はい、主様。これが世界というモノなのデスネ。こんなにも醜い争いばかリ……」
俺はブルーホワイトたんと相性の良い『導き糸』、『雪逝きし糸』を両手の指に張り巡らしてゆく。
「美しい事もあるよ。特にブルーホワイトたんの氷は綺麗だし」
「主様のためならバ、世界を全て氷に変えてみせマス」
いや、それはちょっと……。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




