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166話 雪国フロントライン


「レベル上げのチャンスか」


 クエスト攻略と活動範囲圏の拡大、そして採取で集めた素材を後で売り出すプチ金策。

『この三つを一気に同時にやろう』と、すごく効率的かつ建設的な誘いをジュンヤ君から受けた俺は、傭兵団(クラン)()打ち人』のガンテツ達との歓談を早めに切り上げ、準備に取り掛かった。


 なぜか。

 それは偶然にも『()打ち人』の工房内で見かけた、ジュンヤ君の態度から察するモノがあったからだ。


「ジュンヤ君も武器を見繕(みつくろ)ってもらってたのかな」



 彼の存在が少し気になったものの、30分後に集合とメッセージで言ってきたジュンヤ君自身は、すぐにログアウトしていったのだ。

 つまり、これから始まるクエストに備え、じっくりゲームを集中してプレイするためにも、現実(あっち)の用事を片づけに行ったに違いない。そうなると俺も準備万端の状態で、この誘いを受けるべきだ。ジュンヤ君のフレンドも一緒に遊ぶらしいのだから、彼の面子(めんつ)を考えて手抜きなんかできない。別にこれは、久しぶりに顔見知り以外と遊べそうだから気合いを入れてるわけではないのだ。


 各種アイテムのストック数を確認し、残量が心もとないのは素材となるモノを『競売と賞金首(ウォンテッド)』で買いそろえ、アイテムを作成しておく。


「『鉱山街グレルディ』は『先駆都市ミケランジェロ』の『競売と賞金首(ウォンテッド)』よりも、相場が少し高い……」


 おそらく供給量の問題なんだろうな。ミケランジェロと比べて、普段から錬金術で扱う素材がこの街周辺ではゲットしづらいのだろう。そう納得し、いつもより高い値段の素材群を、神兵(デウス)が見守る教会内で合成していく事25分。



「そろそろか」


 俺はリッチー師匠から譲り受けた装備シリーズを着込み、身支度を整える。

 つまり、全身は黒染めの『探求者見習いのローブ』セット。顔には『見識者の髑髏(どくろ)覆面(バイザー)』という出で立ちだ。

 これには大きな理由がある。今回のPT構成において、俺とジュンヤ君は採取組の枠で期待されていると、聞いていたからだ。現時点で、俺が採取関係で最高のパフォーマンスを発揮するには、この装備達が持つ固有アビリティが必須だ。



「さて、行こうか……」


 フードを被り、『素材の発見率上昇』の恩恵を自分に宿す。多少の視界制限はあるものの、今回は一人ではないからさして心配もない。身を守ってくれる、ジュンヤ君のフレンド達が集まるであろう教会前へ、意気揚々と外への一歩を踏み出した。

 





「俺は今回、PTリーダーを務めさせてもらうんだけども。マモルって言うんだ」


 四角い大長盾(タワーシールド)に短槍をメイン装備とした、ヒョロ長い少年傭兵(プレイヤー)は、メンバーが集うと一番に挨拶してきてくれた。

 傭兵(プレイヤー)の狼藉を取り締まる神兵(デウス)がいる教会前でありながら、周囲にいる傭兵(プレイヤー)にさりげなく注意を払っているあたり、けっこうなPvP経験者なのかもしれない。マモル君は頼もしそうだ。



「ま、見ての通り盾役なんだけんども、よろしく」


 そんなマモル君の言葉を皮切りに、教会前に集まったジュンヤ君とそのフレンド達の自己紹介が始まった。



「俺っちはケイ。PTの前後をフォローしながら、エンチャントもこなせちゃう、優秀な遊撃役って感じ?」


 小盾を左手に片手剣を腰に釣るし、マモル君と比べたら非常に軽装で、紹介通り身軽そうな少年傭兵(プレイヤー)が気さくに名乗ってくれる。

 態度こそ軽薄そうだけど、糸のように細いケイ君の目がジッと俺を観察してきているあたり、こちらの戦力分析をしているのかもしれない。ケイ君も混成PTによるクエスト進行には、場数を踏んでいるように見えた。



「うっす! 俺はダイスケって名前だ! 得物はこのぶっとい両手剣! 役は敵を斬って叩いて潰しまくるってやつだ!」


 角刈り頭を撫でながら、元気良く自分をアピールしたダイスケ君。外套を羽織り、その下にはしっかりと革製の鎧に身を包んだ彼は、背負った長大な剣をスラリと抜き放つ。そして自分の武器を、自慢気に披露してくれた。非常に脳筋臭が漂うダイスケ君だけれども、その自信は結果を積み重ねた故にあるものなのだろうと解釈しておく。



「えっと、お、お、おいらはマホマホです。す、魔法詠唱者(スペル・キャスター)で、えん、遠距離攻撃が主な役割で、です。回復も、す、す、少しだけでき、ます」


 坊主頭に少しぽっちゃり系の体格。魔法アビリティにプラス補正がありそうな長杖を手に持ち、茶色のローブを着た少年傭兵(プレイヤー)はおどおどと自己紹介を終える。ちょっとだけ、しっかり魔法の詠唱ができるのか不安になった。



「俺はタロって言います。今回はジュンヤ君に誘ってもらって、みんなと一緒にクエストに参加できるのが嬉しい。メインスキルは錬金術です。どうか、よろしくお願いします」


「じゃあ、よろしくねタロ君」


 俺が自分の自己紹介を終えると、サッとジュンヤ君が握手を求めてきてくれたのでそれに応じる。


「さっきぶりだね、ジュンヤ君」

「ん、さっき? あぁ、そうだねタロ君。メッセージでのイエスの返事、ありがとうね」


「こっちこそ、誘ってくれて感謝してるよ。新しいフィールドとか、なかなか行けないし」

「うんうん! ボクもだから、新素材が手に入るって思うとわくわくする」


「あ、それ。俺もわかる」

「わかるよね!」



 俺がジュンヤ君と挨拶を交わしている間、ちょっとだけメンバーがざわついていた。



「錬金術か! しょぼいな、ワハハハ!」

「うーん、ちょっと俺っちガッカリって感じ?」


「だけんども、ジュンヤの()しメンだ。採取に関しては、優秀なのかもしれない。もともと、戦闘組み4人の採取組み2人でのPT構成で行く予定だったけん、問題ないんだけんども」


「お、おいら達が、たた、戦いは頑張ればいいです」



「それにタロ君は不気味だしな! 迫力はあるな!」

「雰囲気だけは、タダ者じゃないって感じ?」


「そこも、問題ないんだけども」

「おいらは、べ、別に、怖くなんてなななないです」



 錬金術に対する不安や不満じみた言葉も、リーダーのマモル君が上手くいなしてくれたおかげで、俺は安心した。

 マモル君がニカッと笑い、短槍をひょいっと上に掲げる。『こっちは大丈夫だ』と言ってくれてるようで、ジュンヤ君もいい人なら、その友達もいい人達なんだなぁと感慨深くなってしまう。



「何も問題ないって事で。じゃあタロ君、クエストを共有したいんだけども、受けてくれ」



:マモルよりクエスト共有依頼が届きました:


:【クエスト名】雪国への旅路、貴人の護送:

:【難易度】 推奨 Lv10が3名以上:


:【クエスト達成条件】レディ・イグニトールを『呪いの雪国ポーンセント』領主館の敷地へと連れて行く:


:【クエスト失敗条件】PTメンバーの全滅。またはレディ・イグニトールのキル:

:【クエスト報酬】2000エソ:



 こうして、俺達の雪国へと続く旅路は幕を開けた。




挿絵(By みてみん)




ブクマ、評価よろしくお願いします。



イラストはお友達の佐藤賀月さまに、

持ってる服等の写真を送り付けて、描いてもらいました。


142話『お泊まり会』より。

更新の関係上、見れてない読者様もいるかと思いまして。


ちなみにサン○オとしま○らのコラボ品です。

し○むらは、ゆるい普段着に最高なのです。

値段も安いです。


素敵なイラスト、ありがとうございます。

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