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150話 いいえ、刀です

【書籍版1~4巻】が発売中です。

ウェブ版と比べて神託成分(オラクル)多めです。ギャップをお楽しみください!

挿絵(By みてみん)

ご購入してくださると、喜びのあまり更新頻度アップです。


電子書籍版もあります。

どうかどうかAmazon等でポチポチィポ血血血血ッ……よろしくお願い致します!




 思ったより、いとも簡単に地面から抜けた『石剣』。

 元が精霊であった……聖剣ならぬ精霊剣、精剣の(たぐい)であるソレを、勇者を気取るように天へと掲げ眺める。


「ん、普通の剣だ……うわっ!?」


 突如として、『知恵ある森の石剣』が物凄い勢いで俺の手から離れた。


「な、なんだ!?」



 矢のように素早い動きで空中へと飛び立ち、反転してその切っ先を俺へと定め、猛進してきた。

 これは、まずい。

 戦闘になる事を望んではいたものの、知力が高いから大丈夫だと(おご)っていたツケがここに出てしまった。


 このスピード、そして不意を突かれた完璧なタイミング。

 避ける事は不可能だと瞬時に悟る。


 ならば――

 決定的な遅れを巻き返すべく、すぐ目の前まで飛来して来た『石剣』を一睨みして意識を戦闘モードに切り替える。


 装備である『銀狐の尾』による固有アビリティ『尻尾(しっぽ)悪戯(いたずら)』を発動。

 瞬間、石剣は大量に発生した銀色の毛と衝突していく。



「危なかった……」


『尻尾の悪戯(いたずら)』というアビリティは、尻尾が迫りくる攻撃と同等の大きさに肥大化し、物理攻撃ダメージ600以下のみ防ぐことができる。ミナがもっている『金狐の尻尾』の方は魔法攻撃ダメージ600以下を無効だ。

 けっこうなチートアビリティだと感じた半面、リキャストタイム、再度このアビリティを使えるようになるまで20分もある弱みを持つ。リリィさんの弓矢をことごとく防いでいた銀狐のように、連発はできない。さすがに妖狐族でもなければ、尻尾のレベル? もまだまだだろうし、今後あんな風になれたらいいなと期待を込めつつも、『石剣』の一突きをかろうじて防いだ。針のように硬質化したと見間違うほどの勢いで、バサッと尻尾の毛が伸び、剣撃を弾いてくれたのだ。


 しかし、『石剣』の次なる一撃は迅速だ。

 間髪いれずに連撃を叩き込んでくる。

 あわやという所で、身を地面に転がしてかわす。


 その瞬間、さっきまで俺がいた地面は陥没し、いくつもの土塊が宙を舞う。

 そんな破壊力を目の当たりにして、一撃でも受けたらヤバいと判断する。


 風乙女(シルフ)のフゥを召喚する間も与えられず、次々と攻撃を加えてくる『知恵ある森の石剣』に俺は防戦一方どころか、逃げ惑うことしかできない。

 予想以上に強敵だ。


 それでも俺は(あきら)めず、身をかわしながら『溶ける水(ウォタラード)』を隙あらばまき散らし、その度にジュッと溶けるたような音を発する『石剣』を見て、効いていると確信する。

 そんな攻防が5分以上続いた頃。

 そろそろ俺の集中力も切れかけていた。

 剣先を揺らし、時々フェイクを仕掛けてくる『石剣』の攻撃を避け続けるにも無理があった。


「ぐっ」


 ついに『石剣』が俺を(とら)え、その長い剣身が上半身へと叩き込まれる。

 直撃は危険、そう判断した俺は、咄嗟(とっさ)に右手から小太刀『(いさ)めの(よい)』を抜き放ち、その攻撃に合わせて横()ぎに刃を当てる。

 金属がぶつかり合うギャリッっと嫌な音が響き、それでも敵の攻撃の勢いは殺せず、無様に地面を転がりながら吹き飛ばされる。

 HPは90から一気に5へと激減してしまった。


 しかし、タダ攻撃を受けただけでは終わらない。『石剣』との距離が開いたという事は、それだけコチラが攻撃を重ねるチャンスが生じたという事だ。

『石剣』に距離を詰められる前に、俺は手持ちの『溶ける水(ウォタラード)』を惜しみなく使う。すると『石剣』は、ついに酸に負けたのか、白い煙を上げてその動きを止め、ストンと地面に突き刺さった。


:『知恵ある森の石剣』を討伐しました:

:写真に『堅き意志の灰色グリンダ・ソードグレイ』が宿りました:



「つ、強かった」

 

 素材採取はこの辺できりを付け、そろそろジョージの店で色の抽出がてら、アビリティ『塵化(じんか)』を色々試すとするか。

 精神的に消耗した俺はミケランジェロへ帰ろうとする。



 そんな俺に、無情なログが流れた。



:小太刀【諌めの宵】の耐久値が0になりました:




「ん? ちょっと待って……」


 嫌な予感がする。



:小太刀【諌めの宵】は武器破壊により、消滅します:


 

 ログの内容に、俺は焦って小太刀を両手で持つ。

 必要ステータスが力1の割に、そこそこ攻撃力のあった俺の相棒は、光の粒子となり消えようとしていた。


「マジか……」


 姉から譲り受けた武器が、ゲームを開始した初日からずっと使い続けた俺の唯一の近接武器が、崩壊するだって?

 いや、確かに武器の耐久値がゼロになると消滅するとは聞いていたけど、そこまで耐久値は下がっていなかったはずだし、『石剣』の一撃を受けたぐらいでコレはシビアすぎる判定じゃ……と、そこまで思考して気付く。

 試しに『塵化(じんか)』を小太刀に発動していたのを忘れていた。耐久値を下げたまま、採取に来てしまっていたのだ。

 修理しておくのをうっかり忘れていたのだ……。



「って、あれ?」


:愛用度が100を満たしています:

:使用者の知力が300以上という条件も満たしています:


:小太刀【諌めの宵】を輝剣(アーツ)化させることが出来ます:

:実行しますか?:



「なん、だって!?」


 輝剣(アーツ)。それはスキルを習得するためのアイテム。

 武器を輝剣(アーツ)化できるなんて初耳だ。


 愛用度……? そんな数値、武器のどこにも表示されていないけど、隠し要素って事か? この数値名から察するに、一定期間使い続けると上昇する項目なのかもしれない。そして流れたログから判断するに、武器が壊れた時に輝剣(アーツ)化が可能になると。ただし、愛用度100以上が条件なんだろう。



 俺は迷わずに『輝剣(アーツ)化』をタップ。


 すると、ジョージの店頭に陳列されている『輝剣(アーツ)』同様に、水晶に突き刺さった短剣が具現化した。

 そして、その輝剣(アーツ)のスキル名は――





 『刀術』だった。





一般に、刀スキルを保持している傭兵は未だに見つかっていません。


木刀などは『両手剣』スキル。

小太刀などは『短剣』スキル、と判断されている節があります。


エルフの武志が出現するまでは『刀スキル』はないものだと思われてました。

『刀』スキルがあるかもと期待はしても、木刀や小太刀は知力ステータスが必要という装備条件や、攻撃力の低さから装備する者は皆無に等しい状況です。


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