149話 聖剣フラグ?
傭兵 タロ Lv7
HP90
MP80 (装備による補正+100)
力1
魔力14
防御2 (装備による補正+40)
魔法防御8 (装備による補正+55)
素早さ210
知力305
残りスキルポイント 50
スキル:『錬金術』Lv33
:『魔導錬金』Lv1
:『風妖精の友訊』Lv16
:『名声』Lv2
所持金:1万6786エソ (銀行預金12万エソ)
狐巫女一式を装備した状態のステータスを再度確認して、俺は疑問を抱く。
今回はたまたま『錬金術』スキルや、その派生スキルでもある『魔導錬金』が現実で使用できるようになった。しかし、仮に『風の友訊』や『名声』スキルが具現化してたとすれば、どのような効能を発揮する事になったのか非常に気になったのだ。
例えば、『風妖精の友訊』だったら、現実でいつの間にか消えていた『フゥ』を召喚できるようになったり、現実のどこかにあるという『宝石を生む森』に行けたりするのだろうか? 『名声』スキルに関しても、NPCとの関係性を分析するという内容が一体どのような変化をするのか、どこまでがNPCという範囲なのか、生物全般に適用されるようになるか、色々と疑問は溢れてくる。
というのも、錬金術スキルのアビリティ『塵化』を現実で使った際、姉のコップを塵にした現象がどうも引っかかるからだ。
ゲーム内で『塵化』を使用してみたところ、説明通り素材を細分化するだけだった。
『ケムリ玉』の素材でもある『モクモク草』で試したところ、
『モクモク草』 → 『綿毛』、『植物の茎』が抽出できた。
さらにもう一点。
選択項目に武器もあったので、『小太刀・諌めの宵』で『塵化』をしてみたところ、装備の耐久値が下がっただけだった。武器も錬金術の素材になりうるという発見は大きかった。また、武器劣化もできると知って喜んだのも束の間、MPが100も消費されていた。これは連発できないし、後で装備の耐久値を戻すためにもNPCが経営する鍛冶屋に持って行くと言う手間も増えた。
『塵化』に関しては概ね、こんな感じだ。素材をより細かく分解して、新たな素材を生みだすアビリティである。あとは武器の劣化。
間違っても、物体を塵に帰すなんて、そんな強力な効果はない。
しかし、現実ではそういった現象が起きたのだ。
つまり、ゲーム内のスキルと現実でのスキルが全くの同一効果ではない可能性が浮き出てきた。もしくは、未だにゲーム内での俺では何かが不足していて、『塵に帰す』という効果を発揮できないという可能性もある。何らかの条件を解放できていないだけとか。
この辺は検証を繰り返していく必要があると感じた。
「今はミナもインしてないようだし……茜ちゃ、トワさんも……インしてないか」
晃夜たちが帰った後、姉には現実にスキルが発動した点、俺が使えるようになった点、そして茜ちゃんも使用できる事を報告しておいた。次からはトワさんも仲間に引き入れて、会議に参加させるようだ。嬉しいやら、悲しいやら……ズボンがずり下がった手前、心境は複雑だ。
ちなみに『天守楼』を他の傭兵が攻略しないようにする、有効な手立ては今のところ見つかっていない。ただ、現時点であそこまで正規のルートで辿りつける強者はいないし、スキル『モンスター調停士』を持っている傭兵でないと、『天守楼』を発見できない。
その事から辿り着く可能性が極稀という判断もあり、最低限の警戒態勢として、ミケランジェロ南西戦線を取り仕切る、ユウジにマークさせるだけにした。
ビッグ・スライムの上に乗ってどこかに移動した奴がいたら、すぐに連絡をしてくれ、と。
万が一、そんな傭兵が出現した場合は、茜ちゃんに協力を求め、即座に攻略阻止隊を編成して討伐に向かわなければならないだろう。
「さて、今の俺がやるべき事は……素材採取だ」
『塵化』で様々な素材を分解したいのは山々だ。
しかし、素材も無限ではない。さらに言えば、『天守楼』で採取した諸々でも試したいところだが、アレらは貴重だし所持数も少ないので下手に試すのはもったいない。
そう結論付けた俺は単独で、行き慣れた『湖面に沈む草原』へと向かった。
町中では親友達からもらった旅人シリーズの恰好で移動し、フィールドでは戦力強化もふまえ、恥ずかしいけど狐耳の巫女服シリーズで出陣だ。
特にMP面での恩恵が大きいので背に腹は代えられない。
「なんだかんだ、余裕だ」
夕輝や晃夜、百騎夜行のシズクちゃんに初めて連れてこられた時はフォローされっぱなしだった俺も、今となってはソロで複数匹の『モフウサ』を相手にエンカウントしても余裕で立ち回れる。
警戒すべき相手といえば、水面下をスルスルと進む巨大な蛇、『ウォーターヘビィ』ぐらいだろう。
「よしよし、大量に素材がたまってきたな……」
採取や討伐は至って順調だった。
思わず鼻歌を歌いたくなるぐらいで、ホップステップで木々が乱立している箇所を抜けていく。
すると、気になるモノが目に入った。
「ん、なんかファンタジーっぽい」
湖面に沈んでない緑の小さな地。そこには一本の木があり、その根元からは水が沸き立っていた。まるで水源のように、湖面へと滴れ流れている。
その木の傍らに、突き刺さった剣があったのだ。
ずいぶん古い物なのか、緑の蔦がビッシリと絡んでいる。
近づいて見ればソレは剣ではなく、石を削って作られた剣みたいなモノだった。劣化しすぎて元の材質がわからないが、刀身部分はとっくに何かを切れるような鋭さは残っていない。
「まずは様子見で……写真を撮っておくか」
パシャリと『古びたカメラ』のシャッターを押す。
『知恵ある森の石剣』【写真】
【水の綺麗な森や草原などで、かなり稀に発生するモンスター。元は植物の精霊であり、かつて自身が住んでいた森を焼かれた記憶を持つ個体が、木に宿り石剣となる。自らを森の護剣と認識している自我があり、知力の低い傭兵が通りかかると襲いかかって来る。剣という形態に変化したのは、自らの住処を追いたてた、人間の凶器を模倣した故の形なのかもしれない】
:『古びたカメラ』で『知恵ある森の石剣』の魂を撮りました:
:撮った『知恵ある森の石剣』を討伐すれば、『堅き意志の灰色』が写真に宿ります:
まさかのモンスターだった。
しかし、うーん……。
近づいても襲われないって事は、俺の知力が高めだからか?
そうなると戦闘に発展しないわけで、色を採取する事もできない。
写真の表記からするにレアモンスターらしいし、ここはいっそ戦ってみたい。
「引き抜いてみるか」
特に何も考えず、俺は柄の部分を握り締め、『石剣』とやらを引き抜いてみた。
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