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138話 仲良しの必須アイテムはお酒?


「タロ、わりい!」


「ごめん、ダメそうだ!」


 ニカっと笑い、全力を出し切った親友たちが雲の濁流に呑まれていった。

 否、晃夜(こうや)夕輝(ゆうき)を包み、燃焼(ねんしょう)させたあれは確かに(ほのお)

 純白にして全てを無に帰す、百の(ほむら)


 縦横無尽、変幻自在に襲い来るいくつもの白尾(しらび)、ならぬ白火(しらび)を前に俺達は必死に応戦したが、地力(じりき)の差は歴然としていた。



 結論から言うと、白焔(びゃくえん)は相当強いモンスターだった。



 まず、最初に潰されたのは遠距離攻撃と即応性に優れたリリィさんだ。

 撹乱(かくらん)(かなめ)でもあるリリィさんがあっと言う間に、白き魔の手に掴まれ、爆散。


 それから俺達はなんとか白焔(びゃくえん)が繰り出してくる、炎のつぶてをいなし、かわし、迎撃するも、次第に対応が追い付かなくなっていく。

 圧倒的、という強さではない。むしろ何度か有効なダメージは与えたし、俺とミナの『狐耳』装備の恩恵もあって、ある程度は敵の攻撃を先読みできるぐらいには応戦できていた。


 どうやら、あの炎は魔法系のアビリティでもあり物理系のアビリティでもあるらしい。だからミナと俺の両者が敵の初動、流れ、繰り出してくるであろう大よその位置を把握することができた。


銀弧(ぎんこ)の耳』がなければ、もっと早くに全滅していたのは間違いない。まず、攻撃されそうだと察知する際、『キィン』とした高音が耳を突きぬけるように響く。そして、炎の通り道であろう箇所で『ボッボッボッ』と不吉な音がするのだ。最初は訳もわからなかったけど、次第に聞き慣れ、音が鳴った場所と自分との距離を把握していき、どうにかモノにできている。攻撃予知なだけあって、音が聞こえるのは一瞬の出来事であり、未だに感覚を完全に掴めているわけじゃない。けれど、どうにか活用することはできていると言ったレベル。



 俺達のPT編成は今回6人。平均レベルは8。


 それを考慮して、二尾の難度は……Lv13前後の傭兵(プレイヤー)が8人いれば何とかなりそうな強さであり、今の俺達には到底かないそうもないボスキャラだった。



「たっ、タロちゃん、どうする?」


 ちゃっかり、この戦闘中で周囲のビッグ・スライムやタフ・スライムと連携し、ムチをふるって白焔(びゃくえん)を牽制し続けてくれたトワさん。急な成長と、魔物使いじみた戦闘スタイルに内心で舌を巻いてはいたけど、やはり彼女も満身(まんしん)創痍(そうい)のようだ。

 戦闘開始直後は二十数匹以上いたスライムたちも、今や生き残っていのは二匹のみ。



「はぁっはっ……天士さま……もうMPがないです……」


 ミナもここまで本当によく頑張ってくれた。

 夕輝(ゆうき)晃夜(こうや)のフォローなしじゃ、生き残れなかったのは確かだけど……ここまで対抗できたのは、ミナの魔法攻撃という面制圧に適した反撃があってこそだ。



「……最後に、全員で総攻撃を仕掛けるしかない……」


 とは言っても、俺達に残された戦力は少ない。

 使えるアイテムは全て、本当にほぼ全て使い尽くした。



「フゥ、がんばるん♪」


 風乙女(シルフ)のフゥが健気にやる気を見せてくれてるけど、俺のMP残量はゼロ。

 つまり風は起こせない。

 頼みはトワさんのムチ、ビッグ・スライム二匹の体当たり、ミナのメイス、俺の小太刀。

 あまりにも貧弱だけど、それだけだ。

 


「いこう! 白焔(びゃくえん)、これでもくらえっ!」


 俺はなけなしの『溶ける水(ウォタラード)』ではなく、色はそこそこ似てる『苦みまろやかな金水』をビシャッと散らす。そう、夏祭りイベントで屋台にてオジさん相手に売り捌いた、ビールの類似品である、あの商品の残りだ。


 NPCに効果はあるかわからないけど、悪あがきのフェイク。

溶ける水(ウォタラード)』なんてとっくに使い切っている。



「むん?」


 しかし、その最後の悪あがきが、思いもよらない結果をもたらしたのだった。




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