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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十八章 『特殊な部隊』の真実

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第97話 全てが終わって

 肩で息をしていた誠の耳に思いもかけない足音が響いて誠は銃を向けた。誠の拳銃はすでに全弾撃ち尽くしてスライドが開いていた。震える銃口の先にはアサルトライフルを構えているカウラの姿があった。


「神前、貴様は無事なようだな、西園寺!」 


 銃口を下げて中腰で進んでくるカウラが叫んだ。


 その後ろからは子供用かと思うような、ちっちゃい拳銃を手にしたランが階段を上ってきた。


「神前、生きてたな。会ったらすぐに西園寺が邪魔だから殺すんじゃねーかとおもったけどな」


 ランはそんな冗談を言いながら、ちっちゃい拳銃を腰のホルスターにしまった。彼女は誠の肩を叩いた。誠はしゃがみこんで改造拳銃を構えたまま固まっていた。 


「ヒデエな姐御。アタシは戦場の流儀って奴を懇切・丁寧に教えてやったんだよ!なあ!神前!」 


 かなめの言葉を聞きながらランとカウラが手を伸ばすが誠は足がすくんで立ち上がれない。


 誠には周りの言葉が他人事のように感じられていた。緊張の糸が切れてただ視界の中で動き回るフル武装の『特殊な部隊』の隊員達を呆然と見つめていた。


「まー、神前が無事だったのが一番だ。肩を貸すのが必要な程度には、消耗しているように見えっけどな」 


 隊員達に指示を出していたランが誠に手を伸ばす。その声で誠はようやく意識を自分の手に取り戻した。顔の周りの筋肉が硬直して口元が不自然に曲がっていることが気になった。


 誠の手にはまだ粗末な改造拳銃が握られている。


 その手をランの一回り小さな手がつかんで指の力を抜かせて拳銃を引き剥がした。


「大丈夫か?コイツ」 


 誠の背後でかなめの声が聞こえる。次第にはっきりとしていく意識の中、誠はようやくランの伸ばした手を握って立ち上がろうと震える足に力を込めた。


「それにしても、ずいぶんと早ええんじゃねえか?この役立たずの『素質』がばれるには、少しくらい時間がかかると思ったが」 


 かなめは箱から出したタバコに手をかけながらそう言って見せた。誠は何のことだか分からず、ただ呆然と渡されたジッポでかなめのタバコに火を点す。


「どうせ、あの『駄目人間』がリークしたんだろ、神前の『法術師』としての『素質』を。知りたがってる『関係各所』に」 


 あっさりとランは可愛らしい声でそう言った。


「叔父貴の奴……密入国した地球圏の『マフィア』がこいつ等を仕切ってること知ってたな。連中を狩りだす『餌』するつもりだろ、神前を。普通そんなことするか?自分の部下を『マフィアを釣り上げる餌』に」


 かなめは吐き捨てるようにそう言うとタバコの煙をわざと誠に向けて吐き出した。誠はその煙を吸い込んで咳き込む。 


「あのー、僕の『素質』って?」 


 誠はたまらず上層部の意向を一番知っていそうなランにそう尋ねた。


「ノーコメント。これまでそれっぽい『ヒント』は言ったぞアタシは。テメーの『脳味噌』で考えろ!」 


 ランは生存者が見当たらない散らかった雑居ビルの壁の割れ目などをのぞきながら、わざと誠から眼を逸らすようにしてそう答えた。


「アタシもノーコメント」


 そう言うとかなめはタバコを口にくわえて誠から目を反らした。階下から自動小銃を手にしたカウラが階段を昇ってくる。


「私も言う事は無い。今は言うべきではないからな」


 カウラは自動小銃を手に、乱雑に置かれたテーブルやごみの後ろの物影を探りながらそう言った。


「まあ、お前さんの知らないお前さんの『素質』はそのうち嫌でも分かるわな。『時』が来れば。それより、肝心の叔父貴はどうしてるんだ?姐御」


 かなめはそう言いながら苦笑いをした。その視線は担架に乗せて運ばれる、瀕死の組織構成員に注がれた。


 一方、ランはかわいらしい姿には似合わない冷静沈着な態度でかなめを見上げた。 


「あー、隊長ならアメリアと運行部の連中を連れて、こいつ等のクライアントのところにご挨拶に行ってわ。まあ『国綱(くにつな)』抱えて出かけてったからな。もしかしたら今ぐれーの時間には、そいつの首でも挙げてるんじゃねえのか?」 


 ランは無関心を装うようにかなめにそう言うと階段を昇ってきた東都警察の幹部警察官の挨拶を受けていた。


「『粟田口国綱』か……あんな『美術品』でなにする気だよ……叔父貴。まあ機能としては『人切り包丁』だから、斬るんだろうな、誰かを」 


 誠はその日本刀『粟田口国綱』の名を知っていた。


 誠の実家の道場主である母の前で、嵯峨はその『粟田口国綱』を誠の母、薫に見せていたのを思い出した。


「まあ、『マフィア連中』も多分、馬鹿じゃないだろうな。『国綱』を持っている隊長に、『無駄な喧嘩』を売るような酔狂な人間なら組織に抹殺されているはずだ。遼州(ここ)に来る前にな」


 自動小銃のマガジンを抜きながらカウラはそう言った。


 『粟田口国綱』の剣先の鋭さを見たとき、誠はまだ小学生にも行っていない子供だった。


 社会や歴史に興味はない誠だったが、名刀の誉れ高いその名を聞くその剣の重たい刀身を見て、それが『人を叩き斬る』ための刀であることはすぐに直感した。


 その時の刀を手にした嵯峨の殺気のこもった目を思い出して誠の体が自然とこわばる。


 誠はその恐怖から自分の手の中の改造拳銃を見た。そして周りの警察の鑑識職員に囲まれたチンピラの死体を見て思わず意識が薄くなっていく。そして思わず銃を取り落とした。


「神前少尉。そう簡単に銃は落とすな、安物の改造拳銃だからな。暴発の危険がある」 


 カウラが優しい調子で落ちた拳銃を拾い上げて誠に渡す。


「申し訳ありません」 


 ようやく体が動くようになった誠は立ち上がった。


「とりあえず下に降りるか」 


 カウラの言葉にかなめもシャムもランも納得したように狭い雑居ビルの階段を降り始めた。


 誠もその後に続いて階段を下りる。


 先ほどまで恐怖と混乱で動かなかった体が、思いもかけないほど自由に動くのを感じて誠はほっとした。


「なんだ、泣いたカラスがもう笑ってやがる」


 タバコを投げ捨ててもみ消したかなめがそう言って笑った。


「これがはじめての命のやり取りだ。正気でいられるのは私のように『そのために作られた人間』くらいだ」


 カウラはそう言うと踊り場に倒れている死体をよけながら一階に向かう階段を降りる。そんなカウラの態度が気に入らないと言うようにかなめは目を反らした。


「助かったんですね……」


 誠は大きなため息をつくと自分に言い聞かせるように改めてそう言った。


「そうだな。礼が欲しいな」


 かなめは再びタバコを取り出しながらそのタレ目で誠をにらんだ。


「何が……」


「オメエにゃ期待してねえよ。まあ、緊張から得意の『ゲロ』を吐かなかったのは褒めてやるがな。さすがアタシの後輩ってところかな」


 皮肉を込めたかなめの言葉に誠はただ黙り込むばかりだった。


 立ち込める『死』のもたらす臭いに誠は恐怖から『吐く』ことすらできなかった。



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