表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十六章 銃と女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/212

第84話 不幸な『出会い』

 アメリアは完全に笑顔で細い目をさらに細くしながら突然咳払いをした。


 誠の現実逃避へのぎりぎりの状態で奇妙な変化が起きた。


 誠の視界の中でアメリアの表情から笑顔が消え、急に真剣な人間に見えてきた。そして、彼女の糸目が少し開かれ、紺色の瞳が見えた。


『目の錯覚かな……』


 その鉛のような大きく見える瞳を見つめて誠がそう思った次の瞬間、アメリアは語り始めた。


「まあ、ふざけるのはこれくらいにして……もう誠ちゃんもうちの隊員なんだから」


 急にアメリアの纏っていた雰囲気が変わっていた。そこには少し悲しげにほほ笑む美女の姿があった。


「私が知っていることを話すわね。一応、私も『部長』だから、いろいろ知ってるわけなの。内容が今の誠ちゃんには、理解できるかどうか分からないけど」


 そう言うアメリアは先程までのお茶らけているときとは別の顔で話し始めた。


「すべては『悲しい出会い』から始まったの。地球人の調査隊の持っていた『銃』と、『リャオ』を自称していたここ植民第二十四番星系、第三惑星『遼州』の『遼州人』が出会ったこと。その大地の下に『良質の金鉱脈』が埋まっていたことがすべての始まり」


 誠は小学校の社会で習ったこの星の歴史の数少ない記憶を思い出した。そこで地球人による『リャオ』への一方的『人間狩り』が行われたこと。悲痛な感傷に包まれたあの教室の空気が思い出されてくる。


「遼州人はすべてを地球の文明人達の『欲望』によって奪われた。言語は失われ、文字を持たない遼州人は『未開人教化』と言う名のもとに地球圏に『管理』された。地球圏の人は……おそらくそんな私達から見た『真実』なんて知らないわよ。自分達は遼州人に良いことばかりしたと思ってる。『未開人』に『文明』を教えたと威張ってるんじゃない?」


 アメリアの言葉に誠は違和感を感じた。遼州に地球人が到達してから『遼帝国』独立までの二十年の戦争の歴史。社会の知識の不足している誠にもその事実は思い出すまでもないことだった。


「そんな遼州人と地球人の出会いの裏側の出来事はどうでもいいの。それ以上に問題なのは、この『東和列島』には、そんな悲劇を黙って見つめている『存在』があったことよ」


 アメリアは表情を殺してそう言った。そして、真っ直ぐに誠を見つめた。


「『存在』……?」


 突如、本性を現したアメリアの言葉に誠は息を飲んだ。


「地球人がこの星を見つけてから調査隊がこの『東和列島』に到着した時に、奇妙な事実に気が付き驚愕したそうよ。そこに住んでいる人々が『日本語』を話し、『日本語』で考え、『日本的』な名前を持ち、『日本人』にしか見えなかったってね。『銃』も持ってたらしいわね、その『公式』な調査隊が到着した時には」


 誠の知っている歴史とは違うその東和の過去についてアメリアが語る事実に困惑した。


「地球のその地球人としてはまともな調査隊の結果を『地球圏』に報告したんだけど……握りつぶされたそうよ。『あり得ない』ってね。でも、文字が無くて、見た目は地球のアジア人にしか見えない『リャオ』が地球の『無法者』と裏取引をすることくらい……考えなかったのかしら?地球の政府の人達。マジで『空気読んでよね』。東和の支援を受けて遼州大陸の技術を持たない人達も得意のゲリラ戦で地球から独立することができた。甲武が言ってる甲武派遣の地球の部隊が寝返ったことだってそんな裏事情が無ければあり得ないわよ」


 そう言うアメリアの口元に笑みが浮かぶ。


「『東和列島』の奇妙な現象を引き起こしたのは、間違いなくその『存在』が原因……だと隊長は言ってたわ」


 アメリアのその言葉に『駄目人間』である嵯峨の顔が誠の脳裏に浮かんだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ