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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十五章 初めての休日

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第76話 かなめの歌

「聞いとけ。アタシの歌」


 そう言うとかなめはゆっくりとした曲を弾き始めた。初日にカウラのスカイラインGTRの中で聞いた二十世紀の女性シンガーの曲を思わせるどこか切ない旋律が誠の部屋に響いた。


『……アイツのことを……思いながら……アイツが誰かのものになる夢を見て……』


 彼女のかすれたような歌声にマッチした悲しげな旋律だった。


『……アタシもいつの間にか違う男に抱かれて……それで良かったと安心してる……』


 悲しいすれ違いの恋の歌。どこかかなめに似合っているようで誠は彼女の歌に聞き入っていた。


 かなめが歌うのは道ならぬ恋に悩みつつ前を向いて生きていく強い女性の歌だった。


『西園寺さん……歌が上手いんだ……』


 誠はサビに行くにしたがって盛り上がっていくかなめのギターと歌声を聞きながらそんなことを考えていた。


 かなめの絶唱が終わると、ギターの音が止み静寂が訪れた。


「西園寺さん……」


 誠は笑顔で気持ちよく余韻に浸っているかなめの顔を見つめた。


「アタシは歌いたいから歌った。アタシは趣味で休日には駅前の路上でこんなことをしている……ははーん。その顔はアタシがそんなことをするのは意外だって思ってる面だな」


ギターを仕舞いながらかなめは誠をいつものガラの悪そうな視線でにらみつけた。


「そんなこと無いですよ!強く生きていく女性を歌うのは西園寺さんに似合ってると思いますよ!」


取り繕うように首を振りながらそう言う誠をかなめは白けた瞳で見つめていた。


「今日ここに来たのはアタシの気まぐれだが……話は変わるが、オメエには残って欲しいんだ。うちにな」


 そう言いながらかなめはギターケースを膝に乗せて誠のベッドに腰かけた。


「残って良いんですか?」


 誠はかなめの本心かららしい言葉に少し心を動かされながらそう言った。


「そうだ。オメエをうちに根付かせるのが隊の方針だけど、それだけじゃねえ。アタシ個人の勘がオメエはうちに必要な人間になるって言ってるんだ」


「必要な人間……ツッコミですか?」


 誠は気まぐれそのもののかなめの言葉に半信半疑でそう返した。


「それだけじゃねえよ。オメエの人柄がうちみたいなはみだしもんの寄せ集め部隊には必要なんだ」


 そう言うとかなめは立ち上がって帰り支度を始めた。


「もう帰るんですか?」


 慌ててそう言った誠にかなめは呆れたようなため息をついた。


「アタシの勝手だろ。アタシは好きに生きてるの。オメエがどうこうできることはねえよ」


 そう言って笑いながらかなめは誠に背を向けて歩き始めた。


「あの、寮の入り口まで送ります」


「いいよ。オメエも昨日は一日走って疲れてんだろ?しばらくは姐御の基礎体力トレーニングが続くから……そいじゃ!」


 軽く笑ったかなめはそのまま誠の部屋を出て行った。


「西園寺さん……あれがあの人なりの気の使い方なんだな」


 誠はなんだか優しい気分に包まれながらかなめの座っていたベッドの縁に腰を掛けてぼんやりと部屋を眺めていた。



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