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武装警察隊ダグフェロン 地球に侵略された星の『特殊な部隊』はハラスメントがまかり通る地獄だった  作者: 橋本 直
第十四章 二日目の職場

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第72話 ありがた迷惑な心遣いと……

「おはようございます!」


 部隊の本部までパーラに送ってもらった誠は、せめてこの『特殊な部隊』に飲み込まれないためには『元気』だけが必要だと悟りきって元気よくそうあいさつした。そんな誠の机の上になぜか大きめの箱が置いてあった。


「なんです?これ……」


 誠は不審そうにすでに出勤してきていたカウラに尋ねる。


「ああ、終業後、クバルカ中佐が昨日の夜に貴様の家に挨拶に行ったときに受け取ったそうだ」


 カウラは興味なさそうにそれだけ言うとそのまま端末のキーボードをたたき続ける。


「母さんからかな?」


 私立の全寮制の高校の武道教師をしている父のいない誠の実家には、道場を守る剣道師範の母が一人で住んでいた。誠はそのまま上のガムテープをはがして中をのぞき見た。中には古びた包みが入っていた。


「なんだろう?」


 誠が包みを開けるとそこには高校時代のジャージと野球部時代に使っていたスパイクが入っていた。


「なんでだ?」


 高校三年の夏から目にしていないものを目にして誠は母のよくわからない気遣いに困惑した。


「おう、来てたのか?」


 声がするので振り向いた誠の視線の下にちっちゃなランが立っていた。


「なんでこれを?母が用意してたんですか?何か部隊でジャージとスパイクが必要になることがあるんですか?」


 誠は懐かしいジャージを見て困惑しながら笑顔のランにそう尋ねた。


「母ちゃんにも聞いたが、オメーは体力だけが自慢だろ?野球部のエースだったんだ。当然だよな」


 褒めてくれと言うようにランはそう言って胸を張る。


「僕……体力だけって……確かにパイロットとしては三流以下ですし、文系知識が無いから事務仕事とかはできそうに無いですが」


 自嘲気味に笑いながら誠はそうつぶやいた。


「いーじゃねーか。事実なんだから。それにこいつがあれば今日一日走っていても大丈夫だろ?だからオメーの母ちゃんに頼んで動きやすい服装を用意してもらったんだ。うちは予算が無いからな。トレーニングのジャージとかシューズとかは用意できないんだわ」


「へ?一日中走る?」


 いい顔で誠を見上げてくるランの言葉に誠は戸惑った。


「まず、パイロットは体力勝負!当然、その基本は下半身にあり!とりあえず走れ!何があっても走れ!テメーは今日一日走り続けろ!なんならうちのグラウンドは照明があるから夜通し走ってもいいぞ!」


 ランは腕組みをしてそう言い放った。


「走る……そんな前近代的なトレーニングなんて……トレーニングルームとか無いん……でしょうね、ここにはそんな予算は無さそうですし」


 いきなりの命令に困惑する誠の顔をランは厳しい目つきでにらみつけた。


「アタシは『体育会系』の鬼教官だって言ったろうが!さっさと着替えてこい!アタシがぶっ叩いて鍛えてやる!根性見せろ!ガッツだ!ガッツ!社会人に必要なのはまず体力!それをアタシが叩き込んでやる」


 誠は思った。ここは『特殊な部隊』である。始終こんな調子ならあの5人でなくとも誰もが一週間で出ていくだろうと。


 しかし、昨日の月島屋での飲み会でランが『法術師』であり、とてつもない力の持ち主だと知ってしまった誠は怖くて言い出せずに、そのまま追われるようにして機動部隊詰め所を後にした。




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